2023年8月31日、外食業界でも特定技能2号の適用が開始されました。この制度により、特定技能1号で働いていた外国人が、さらに長期間日本で働けるようになる可能性が広がります。
飲食店を経営する方にとっては、従業員が特定技能2号試験に合格し、新たな在留資格を取得することで、長期雇用が可能になるほか、事務手続きの簡略化や経費削減といった多くのメリットがあります。
しかし、2024年12月現在、この制度が導入されてからまだ間もないこともあり、内容を十分に理解している方は多くありません。
この記事では、外食業界における特定技能2号の概要や申請要件について解説します。在留資格(就労ビザ)の申請をサポートする行政書士がわかりやすく説明しますので、ぜひ参考にして制度を活用する際のヒントにしてください。
目次
特定技能2号の基本情報
特定技能2号は、1号に比べて、より高度な技能と豊富な実務経験を持つ人材に与えられる在留資格です。位置づけとしては、1号の上位にあたります。
では、特定技能2号になると、1号と具体的にどのような点が異なるのでしょうか。ここでは、技能水準や在留期間、日本語能力などの観点から、それぞれの違いを比較して解説します。
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特定技能 |
2号 |
1号 |
|---|---|---|
|
対象 |
特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向け |
特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向け |
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在留期間 |
3年、1年もしくは6カ月ごとの更新、上限なし |
1年、6カ月もしくは4カ月ごとの更新。通算で上限5年まで |
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技能水準 |
試験等でチェック |
試験等でチェック(技能実習2号を良好に修了した外国人は試験等免除) |
|
日本語能力水準 |
試験等での確認は不要 |
生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を良好に修了した外国人は試験等免除) |
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家族の帯同 |
要件を満たせば認められる(配偶者、子) |
基本的に不可能 |
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受入機関または登録支援機関の支援 |
対象外 |
対象 |
特定技能に外食業が加わった背景
特定技能制度が導入されている分野は、深刻な人手不足が問題視されています。外食業も例外ではなく、長年にわたり慢性的な人手不足に悩まされています。
確かに、ITを活用することで業務の効率化を図り、人手不足の一部を解消することは可能です。しかし、外食業ではその限界が明らかです。例えば、農林水産省は外食業の人材確保の必要性について以下の理由を挙げています。
- インバウンド対応の増加に伴い、手作り感やおもてなしといった外食業特有の価値が求められる
- 状況に応じて柔軟に作業内容を変える判断が必要である
- こうした特性上、機械化による省力化には限界がある
これらの理由から、外食業では外国人労働者を含む必要な人材の確保が急務となっています。こうした背景を踏まえ、特定技能制度を活用することで人手不足の解消を目指しているのです。
外食業分野の特定技能2号を取得する要件
外食業で特定技能2号の在留資格を申請するには、規定された実務経験を積んだうえで、2種類の試験に合格する必要があります。
「外食業特定技能2号技能測定試験」への合格
外食業特定技能2号技能測定試験は、一般社団法人外国人食品産業技能評価試験(OTAFF)が主催しています。試験の詳細については、後ほど詳しく解説します。
「日本語能力試験(JLPT)」N3以上への合格
技能試験に加えて日本語能力試験(JLPT)のN3以上に合格していることが求められます。この要件は在留資格を申請する前に満たしておく必要があります。2号において日本語能力試験の合格が必須とされているのは外食業の特徴で、多くの他分野ではこの要件は含まれていません。
N3レベルの日本語能力は、「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる」とされており、日常会話や職場でのやり取りに十分な力が求められます。
なお、1号ではJFT-basicも日本語試験の対象でしたが、特定技能2号ではJLPTに限定されています。この点に注意し、事前に対応しておくことが重要です。
2年間の実務経験(指導・管理など)
日本国内の飲食店での経験が求められます。具体的には、2年間にわたり、複数の従業員を指導・監督した経験や店舗運営の補助業務を行った実績が必要です。この経験を証明するために、サブリーダーや副店長などの肩書きを示す辞令書や職務命令書、シフト表などの書類を提出します。
注意点として、技能実習、家族滞在、留学などの在留資格での業務経験は、この要件には該当しません。また、母国での業務経験も対象外です。
ただし、外食業では経過措置が設けられています。これは、2023年6月10日に外食業が特定技能2号の対象分野となったことを受けた特例措置です。この日までに1号としての在留期間が「2年6カ月未満」だった場合、上限期間から6カ月を差し引いた分の管理・指導等の経験があれば、2年間の実務経験を満たしていると見なされる可能性があります。
この経過措置に該当する場合、2年に満たない経験でも申請要件をクリアできる可能性があるため、確認しておきましょう。
外食業分野の特定技能2号を取得する手続き・流れ
取得手順は、以下の4つのステップで進めるのが基本です。
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ステップ |
補足 |
|---|---|
|
①実務経験の積み重ね |
1号の外国人に、サブリーダーや副店長といった役職を任せ、複数のアルバイトや他の特定技能外国人を指導・監督する役割を担ってもらいます。その中で、店舗管理の補助業務を含む実務経験を原則として2年間積むことが求められます。 |
|
②日本語能力試験(JLPT)の合格 |
JLPT(日本語能力試験)N3以上の合格を目指す必要があります。この試験は、外食業特定技能2号技能測定試験の前後どちらで受けても問題ありません。ただし、在留資格を申請する時点で合格していることが求められるため、早めに受験を計画しましょう。 |
|
③技能試験の受験と合格 |
実務経験が2年に達したら、外食業特定技能2号技能測定試験を受験します。その際、経験や役職を証明するために、辞令書や職務命令書といった関連書類を準備する必要があります。これらの書類が試験申請の重要な証拠となるため、忘れずに用意しましょう。 |
|
④在留資格変更の申請 |
特定技能2号を取得するための必要書類(例:在留資格変更許可申請書など)を準備し、最寄りの地方出入国在留管理局または支局(空港支局を除く)へ提出します。提出の際には、書類が揃っているか事前に確認しておくとスムーズです。 |
外食業分野の特定技能2号の取得に必要な書類
申請する際に必要な書類は、大まかに以下の通りです。
- 在留資格変更許可申請書
- 外食業特定技能2号技能測定試験の合格証明書(写し)
- JLPT(N3以上)の合格証明書(写し)
- 保健所長が発行した営業許可証または届出書(写し)
- 外食業分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書
- 協議会の構成員であることを証明する書類
詳しくは、出入国在留管理庁の公式HPでご確認ください。
特定技能2号試験「外食業」の概要
ここからは、試験概要について見ていきます。
受験資格
以下の条件を満たす必要があります。
|
条件 |
補足 |
|---|---|
|
在留資格の保有 |
試験当日に有効な在留資格を持っていること。 |
|
年齢条件 |
試験日に満17歳以上であること。 |
|
パスポートの所持 |
法務大臣が指定する外国機関発行の有効なパスポートを所持していること。 |
|
指導実務経験の条件 |
外食業で2年以上の指導実務経験があること、または試験日から6ヶ月以内に2年以上の指導実務経験を満たす見込みがあること。 |
※指導実務経験とは、複数のアルバイトや特定技能外国人を指導・監督しながら、接客を含む作業に従事し、店舗管理を補助する業務を指します。
参考:農林水産省「食品産業分野(飲食料品製造業分野及び外食業分野)の特定技能2号に関するQ&A 」
一般社団法人 外国人食品産業技能評価機構「外食業特定技能2号技能測定試験」
試験科目
学科試験と実技試験の2科目で構成されています。どちらの試験もペーパーテスト形式で、マークシート方式を採用しています。試験内容は以下の通りです。
- 学科試験:知識を問う問題が出題されます。
- 実技試験:場面を想定したケーススタディ形式の問題が出題され、判断力や計画立案力など、具体的な対応が問われます。
- 試験時間:70分
- 合格基準:250点満点中65%以上
学科と実技で異なる能力が求められるため、それぞれの特徴に合わせた準備が重要です。
試験内容
科目ごとの試験内容をまとめました。
学科試験
学科試験は、下記4項目の知識を測定します。
|
項目 |
主な内容 |
問題数 |
配点 |
|---|---|---|---|
|
衛生管理 |
|
10問 |
40点 |
|
飲食物調理 |
|
5問 |
10点 |
|
接客全般 |
|
10問 |
30点 |
|
店舗運営 |
|
10問 |
40点 |
実技試験
実技試験の項目と内容は、筆記試験と同じです。判断試験・計画立案試験により、業務上必要となる技能水準を測定します。
|
項目 |
問題数 |
配点 |
|---|---|---|
|
衛生管理 |
判断試験:3問 計画立案:2問 |
40点 |
|
飲食物調理 |
判断試験:3問 計画立案:2問 |
20点 |
|
接客全般 |
判断試験:3問 計画立案:2問 |
30点 |
|
店舗運営 |
判断試験:3問 計画立案:2問 |
40点 |
合格率・難易度
第2回試験の合格率は、60.3%でした。
|
会場 |
受験者数(人) |
合格者数(人) |
合格率(%) |
|---|---|---|---|
|
北海道 |
8 |
3 |
37.5% |
|
宮城 |
12 |
8 |
66.7% |
|
茨城 |
6 |
4 |
66.7% |
|
埼玉 |
27 |
18 |
66.7% |
|
東京 |
310 |
197 |
63.5% |
|
富山 |
14 |
10 |
71.4% |
|
愛知 |
90 |
39 |
43.3% |
|
大阪 |
91 |
64 |
70.3% |
|
広島 |
3 |
2 |
66.7% |
|
香川 |
3 |
1 |
33.3% |
|
福岡 |
41 |
21 |
51.2% |
|
鹿児島 |
1 |
1 |
100.0% |
|
沖 縄 |
6 |
1 |
16.7% |
|
合 計 |
612 |
369 |
60.3% |
- ベトナム 268 人
- ミャンマー24 人
- 中国 24 人
- ネパール 14 人など
採点基準や試験問題の詳細、正解や配点に関する問い合わせは受け付けられていません。そのため、合格基準点や特定の分野に重点を置いた配点(傾斜配点)があるかどうかは不明です。このような事情から、効率的な対策を立てるのは難しく、試験範囲全体をバランスよく学習することが求められます。
参考:一般社団法人外国人食品産業技能評価機構「2024 年度 外食業特定技能 1・2 号技能測定試験 第 2 回国内試験 合格者発表」
受験料
受験料は税込14,000円です。ただし、試験運営者の都合で試験が中止された場合や、自然災害などで試験の実施が不可能と判断された場合を除き、受験料の返金は行われません。
試験会場
試験会場は、特定技能外国人が都市部に集中しすぎないよう配慮され、地方でも試験が実施されます。初回(第1回)の試験では全国で5会場のみの開催でしたが、第2回試験では12会場へと拡大され、より多くの受験者に対応できる体制が整えられています。
特定技能2号試験「外食業」の注意点
主な注意点を3つ紹介します。
試験申し込みは企業からのみ可能
試験は、企業が申し込む「企業申込」の形式で受け付けられます。通常、試験会場の定員を超える申し込みがあった場合は抽選となりますが、以下の条件を満たす場合は無抽選で受験枠が確保されます。
- 試験合格を前提に雇用が内定している場合
- 特定技能への在留資格変更を前提に、継続雇用が予定されている場合
企業申込を行えるのは、「外食業を営み、特定技能資格を持つ外国人材を直接雇用する企業」と定められています。
企業が試験を申し込む際には、試験運営団体であるOTAFFの企業用マイページ登録が必要です。ただし、OTAFFの賛助会員でない場合や、OTAFF会員からの推薦状がない場合、登録審査に時間がかかることがあるため、事前の準備を十分に行う必要があります。
試験合格だけでは特定技能2号への移行はできない
試験合格だけでなく、別途条件を満たす必要があります。外食業分野では、特に日本語能力試験(JLPT)N3の合格が必須となります。この要件を設けているのは、外食業では以下のような日本語スキルが求められるためです。
- 食物アレルギーや原料原産地表示、お酒に関する情報を正確に伝える能力
- 消費者の多様な要望を正確に聞き取り、対応する能力
2号試験の難しさ:漢字にルビがない
1号試験では、問題文の漢字にルビ(ふりがな)が付されていますが、2号試験ではルビがありません。そのため、実務上では音で理解できる内容であっても、漢字を正確に読めない場合は試験で得点につながらないことがあります。
この点を踏まえ、漢字の読解力を含めた十分な準備が必要です。
企業が特定技能2号外国人を雇用するメリット
最後に、企業が特定技能2号外国人を雇用する主なメリットをご紹介します。
店舗管理や従業員指導が可能な人材の確保
まず、店舗管理や従業員の指導ができる人材を確保できる点が大きなメリットです。
在留資格の更新に制限がないため、長期的に店舗運営を支える役割を担うことができます。これにより、企業にとって重要な戦力として活躍する可能性が高まります。
特定技能2号を目指す外国人材を採用しやすくなる
長期的に就労可能な在留資格であるため、外国人にとって非常に魅力的です。
1号の採用活動において「当社では特定技能2号の取得をサポートできる」と伝えることは、外国人に対して大きなアピールポイントとなります。さらに、すでに特定技能2号の外国人を雇用している場合も、長期的に働ける環境が整っている企業であることを示せるため、信頼感を高める要因となるでしょう。
特に優秀な外国人材ほど競争率が高いため、このような魅力を効果的に伝えることが、採用活動を成功に導くポイントとなります。
外食業における特定技能外国人の受け入れケース
多くの企業が特定技能「外食業」を活用して外国人材を受け入れています。ここでは、具体的な事例を紹介します。
仕出し弁当業者
元留学生アルバイトとして働いていた従業員が、日本での就労を希望したため、特定技能制度を利用して雇用を継続しました。この従業員は、弁当製造ラインのリーダー的役割を担い、ライン作業の進行管理を行っています。また、他の留学生アルバイトとのコミュニケーションを円滑にするための通訳業務も担当しています。
日本料理店
外国人アルバイトとして勤務していた従業員が特定技能制度を利用して就労を希望したため、会社がこれを支援しました。その結果、社内基準に基づき、嘱託社員として雇用され、日本人の嘱託社員と同等の待遇が与えられています。
以前は、日本料理店で外国人調理人が働くことに対する抵抗感が一部のお客様にありましたが、現在はそのような問題は見られません。特にインバウンド客が多いこの店舗では、特定技能外国人が持つ韓国語や英語の能力を活かし、外国人観光客への対応力向上が期待されています。
これらの事例からわかるように、多くの企業が特定技能外国人を雇用することで、人手不足の解消だけでなく、インバウンド需要に対応したサービス強化を図っています。
終わりに
外食業分野で特定技能2号を取得するには、2つの試験に合格し、店舗管理の補助や従業員指導といったサブリーダーとしての実務経験を積む必要があります。
多くの外国人が特定技能2号を目指しているため、在留期限が迫ってから慌てることのないよう、1号で採用した時点から「指導・管理などの実務経験」を計画的に積ませることが重要です。
さらに、外国人から選ばれる企業になるには、特定技能2号の取得を支援する体制が必要です。1号だけの雇用にとどまる企業よりも、2号取得を積極的に支援する企業の方が、外国人から選ばれやすいのは明らかです。
優秀な人材を確保するためにも、特定技能2号の外国人雇用を視野に入れた取り組みが、今後ますます求められるでしょう。
しらき行政書士事務所では、外国人に必要な在留資格の申請手続きに関して、初回相談無料で対応しております。
対面での面談がご心配な方や、遠方で直接お会いすることが難しい方、受付時間内にお時間が取れない方にも、お気軽にご相談頂けるように各種オンラインツール(ZOOM、LINE、WeChat、Skypeなど)を利用しての面談にも対応しております。
これまでの経験と実績を生かし、在留資格の申請手続きの成功をサポートいたしますので、お気軽にお問い合わせください。




