私は日本人で、夫はベトナム人です。現在夫婦でベトナムに住んでいますが、近いうちに日本に戻ることになりました。夫の配偶者ビザを申請する予定ですが、2人とも海外にいながら手続きを進める場合に気を付けることはありますか?
はじめに結論から述べると、一番の注意点は申請代理人を立てることです。日本に住所を持つ親族に申請代理人となってもらい、夫婦がベトナムにいながらも夫の配偶者ビザの取得申請手続きを進めることができます。
ただし、この申請代理人が配偶者ビザの取得申請から補正等の対応をする必要があるため、手間がかかる点には注意が必要です。
そこで本記事では、夫婦が海外にいる場合に配偶者ビザ申請を進めるにあたって知っておくべき情報を分かりやすく解説します。
目次
配偶者ビザの申請には在留資格認定証明書が必要
外国人配偶者の方の長期滞在のための在留資格である「日本人の配偶者等」(いわゆる配偶者ビザ)の許可をもらう必要があります。そのためには、日本の出入国在留管理庁で在留資格認定証明書交付申請を行う必要があります。
大まかな手続きの流れは以下のとおりです。
- 国際結婚手続きが完了していることが前提(両国で結婚手続きを済ませる)
- 日本の出入国在留管理庁で在留資格認定証明書の許可をもらう
- 在外日本大使館・領事館で在留資格認定証明書に基づくビザを発給してもらう
- 日本に入国する
- 入国審査を経て在留カードを取得する
- 14日以内に市区町村役場に住所地の届出をし、在留カードの裏面に住所地の記載をしてもらう
在留資格認定証明書交付申請ができる方は、日本に住所がある(住民票がある)方が該当します。なので、日本に住んでいる日本人配偶者の親族(両親、兄弟姉妹など)に協力してもらうこと(日本在住の親族に申請代理人になってもらうこと)により、日本人配偶者が先に自分ひとりで日本に帰国することなく手続きを進めることが可能です。
日本人配偶者が先に日本に帰国し、その後に外国人配偶者を呼び寄せる場合、日本人配偶者は市区町村で転入届を提出し、住民票を取得します。その上で、日本人配偶者が申請代理人として出入国在留管理庁に対して在留資格認定証明書の交付申請を行います。
在留資格認定証明書を取得するための手続き
「在留資格認定証明書」(Certificate of Eligibility:略してCOE)とは、法務大臣が発行する証明書のことです。外国人配偶者が「日本人の配偶者等」の在留資格該当性の要件に適合しているかどうかについての事前審査で許可になった場合に交付される証明書を指します。
外国人配偶者が「在留資格認定証明書」を在外日本国大使館・総領事館に提示してビザの申請をした場合には、法務大臣の事前審査を終えているものとして扱われるため、ビザの発給は迅速に行われます。
また、外国人配偶者が日本入国の際、「在留資格認定証明書」を入国審査官に提示することより入国審査も簡易で迅速に行われます。
「在留資格認定証明書」は、日本人配偶者や行政書士のほか、申請代理人である日本人配偶者の親族が管轄の出入国在留管理庁に対する申請が可能です(出入国在留管理庁に申請取次者として届出済の行政書士は申請書類の作成、提出、結果の受領を一括で受任できます)。
「在留資格認定証明書」が発行されたら、その原本を外国人配偶者に送付し、「在留資格認定証明書」原本を持って在外日本国大使館・総領事館に査証の発給申請を行います。査証が発給されたら日本へ入国し、空港や港で入国審査を経て在留カードが発行され、日本での長期滞在が可能になります。
なお、外国人が行おうとする活動に在留資格該当性・上陸基準適合性が認められる場合でも、その外国人が上陸拒否事由に該当するなど他の上陸条件に適合しないことが判明したときは、在留資格認定証明書は交付されません。
申請代理人の範囲
海外在住者が配偶者ビザを申請してもらうことができる日本にいる親族の範囲は、6親等内の血族、3親等内の姻族、配偶者です。
姻族とは、申請人である外国人配偶者にとって、結婚相手である日本人側の親族を指します。
また、三親等内とは日本人配偶者の両親、兄弟姉妹、そして兄弟姉妹の子供(姪や甥)などを含みます。日本に在住する三親等内の親族であれば、申請の代理人になることができますが、実務的には日本人配偶者の両親に依頼することが一般的です。
海外在住の夫婦が準備する書類
海外在住者が海外に居住したままで配偶者ビザを申請するためには、海外在住の夫婦は以下の書類を準備する必要があります。
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 質問書
- 外国人配偶者の証明写真(4cm×3cm)
- 本国で発行された結婚証明書と日本語訳
- スナップ写真などの夫婦間の交流が確認できる資料
- 外国人配偶者のパスポートのコピー
日本にいる親族が準備する書類
海外在住の夫婦が配偶者ビザを申請するためには、日本にいる親族は以下の書類を準備する必要があります。
- 身元保証書
- 日本人配偶者の戸籍謄本(婚姻の記載のあるもの)
- 日本人配偶者の世帯全員の記載のある住民票の写し
- 直近1年分の住民税の課税証明書
- 直近1年分の住民税の納税証明書
- 勤務先から発行された在職証明書
- 返信用封筒(定形封筒に宛先を明記の上、404円分の切手(簡易書留用)を貼付したもの)
申請取次行政書士に依頼するメリット
申請取次行政書士とは、出入国管理に関する一定の研修を受けた行政書士のことであり、本人(又は申請代理人)に代わって出入国在留管理庁に対して申請書類を提出できる行政書士のことです。
申請取次行政書士は申請書類一式の作成・申請書類の提出・在留資格認定証明書の原本の受領まで一括で承ることが可能です。
当事務所代表行政書士は、所属の香川県行政書士会を通して高松出入国在留管理局に申請取次行政書士の届出を行っております。
在留資格認定証明書交付申請の代理人には、日本人配偶者の親族(夫婦が海外在住のまま申請する場合)か、日本人配偶者本人(日本人配偶者が先に帰国して申請する場合)が該当します。
しらき行政書士事務所では、外国人配偶者の方が日本での長期滞在のための在留資格認定証明書交付申請に係る書類一式の作成および出入国在留管理庁への申請・在留資格認定証明書原本の受領をワンストップで承ります。
申請人・申請代理人の方が出入国在留管理庁に足を運ぶ手間・負担が発生しません。ご不明なことがありましたら、しらき行政書士事務所まで遠慮なくご連絡ください。
夫婦が海外にいる場合の配偶者ビザ申請についてよくある質問
最後に、夫婦が海外にいる場合の配偶者ビザ申請手続きにあたってよくある質問と回答をまとめました。
日本での所得がなくても配偶者ビザを申請できる?
海外に生活拠点がある場合、日本で所得がない方も決して珍しくはありません。
日本に所得がない場合には、配偶者ビザの許可は取得できないのでしょうか。
過去の裁判例では、経済的な基盤があまりにも欠如している場合には、そもそも配偶者ビザで日本において生活をすること自体に、疑義が生じる可能性があると判示しています。
そのため、入管の審査では経済的な基盤について、慎重に審査がされます。
他方で、日本での所得がない場合であっても、以下のようなケースは多くの許可事例があります。
- 海外での継続的な収入が見込めるケース
- 同居の親族から支援が見込まれるケース
- 日本での勤務先確保などによって定期収入が見込まれるケース
- 日本で生活するだけの十分な預貯金があるケース
ここでポイントになるのが、これからの日本での生計をどのように証明するかです。
すでに日本での仕事が決まっている場合は、それを証明する資料を提出することができますが、日本へ帰国してから仕事を探す場合は、「どうやって仕事を見つけるのか?」「仕事が見つかるまでの生活費はどうするのか?」などをしっかり説明する必要があります。
日本での生活基盤の判断は、お客様の状況によって異なりますので、ご不安な場合は当事務所までお問い合わせください。
行政書士は申請代理人になれる?
行政書士は申請代理人にはなれません。行政書士は申請の取次者として出入国在留管理庁に出向き、書類の提出などの申請行為を行えますが、申請人の代理を務める立場にはありません。外国人配偶者に代わって在留資格認定証明書交付申請の代理ができるのは親族のみです。
もし外国人配偶者の兄弟姉妹などの親族が日本に住んでいれば、その方が代理人として申請を行うことができます。しかし、通常そのような親族がいないため、日本人配偶者の親族が法定代理人となるケースが多いです。
どこの出入国在留管理庁で申請手続きを行けばいい?
申請は、申請代理人の住所地を管轄する地方出入国在留管理庁に対して行います。夫婦が日本入国後に生活の基盤とする地域の地方出入国在留管理庁ではない点に注意しましょう。このことをイメージしやすいよう、以下に事例を掲載しました。
東京都出身のYさんは、勤務先である大手精密機械メーカーの業務で5年間ベトナムに駐在していました。Yさんには、結婚3年目のベトナム人配偶者がいます。
この度、大阪本社勤務との辞令があり、配偶者とともに日本への帰国を決めました。多忙を極めるYさんは、日本に一時帰国して配偶者ビザの申請手続きを行う時間が取れずにいました。
そこで、東京都内に暮らすYさんの母親に代理人になってもらい、配偶者ビザの在留資格認定証明書交付申請をしてもらうことになりました。Yさんの配偶者は必要書類を作成・準備し、Yさんの母親に国際郵便で送りました。
受け取った母親は必要な署名をして、自宅に近い大阪出入国在留管理庁(東京出入国在留管理庁ではないことに注意)に対して申請しました。ほどなく審査が完了し、在留資格認定証明書が手元に届き、ベトナムのYさん夫婦に送りました。
Yさんの配偶者は配偶者ビザの発給を受けて、夫婦一緒に日本に入国しました。一旦東京都内の母親宅に住民登録した後、大阪府内の勤務先近くに世帯用マンションを賃貸し転居しています。
在留資格認定証明書が発行された後、本国のビザ申請で不許可になることはある?
配偶者ビザを申請する際には、「質問書」を提出します。この書類には、出会った経緯や紹介者、結婚式の情報などを詳細に記載する必要があります。そして、無事に「認定証明書」が交付されると、本国で配偶者がビザの申請を行います。
しかし、稀に不許可となるケースがあります。その原因は通常、詳しく教えてもらえないため推測するしかありませんが、以下のような理由が多いようです。
- 本国での犯罪歴が発覚した
- 日本での申請内容とビザ申請時の内容が異なっていた
後者については事前の準備で防げる要因なので、注意しておきましょう。
終わりに
夫婦が海外にいる場合、日本に住所を持つ親族に申請代理人となってもらい、夫婦がベトナムにいながらも夫の配偶者ビザの取得申請手続きを進めることができます。
ただし、この申請代理人が配偶者ビザの取得申請から補正等の対応をする必要があるため、手間がかかる点には注意が必要です。
「配偶者ビザ」をはじめ、在留資格の取得を考えている外国人の方で「自分のケースでは、どの在留資格を選び、どのような手続き、書類が求められるのか分からない」といったお悩みを抱えている場合には、お気軽にしらき行政書士事務所までお問い合わせください。