簡易帰化(かんいきか)とは、外国人の方が日本の国籍を取りやすくする特別な制度です。日本での生活が長い人や、日本人と家族である人などが対象になります。
普通の帰化申請には、長い期間日本に住んでいることなど、沢山の条件があります。しかし、簡易帰化では、いくつかの条件が緩くなっています。例えば、日本人の配偶者や子どもなどは、短い期間で申請できることがあります。
簡易帰化は日本で生活している外国人にとって、国籍を取るチャンスを広げる制度です。このページで説明する内容を読んで、自分が簡易帰化の制度の対象となるかどうかをチェックしてみましょう。
目次
簡易帰化とは何か?
簡易帰化とは、日本に長く住んでいたり、日本人の家族がいたりする外国人が、日本の国籍をとりやすくなる特別な制度のことです。
簡易帰化と通常帰化の違い
帰化申請には「通常帰化」と「簡易帰化」の2つの方法があります。通常帰化では、日本に5年以上住んでいることや、安定した収入があることなど、たくさんの決まりがあります。
しかし、簡易帰化は日本とのつながりが深い人のための制度なので、いくつかの条件がゆるくなっていて、手続きも少し簡単になります。例えば、日本人と結婚している人や、日本人の子どもなどがこの制度を使いやすくなっています。
なぜ「簡易」と呼ばれるのか?制度の目的と背景
日本では、外国人が日本国籍を取得するには帰化申請が必要です。しかし、すべての人に同じ条件を課すと、不公平になることがあります。
例えば、日本人と結婚して日本で暮らしている人や、日本で生まれ育った人にとって、長い在住年数の条件などは少し重すぎると考えられています。そこで、特別に条件をゆるくした「簡易帰化」が作られました。
「簡易」という言葉は、「手続きが簡単になる」という意味ではなく、「条件が一部やさしくなる」という意味です。例えば、通常は「5年」日本に住んでいることが必要ですが、簡易帰化では「3年」や「1年」でよい場合があります。
簡易帰化が認められる主なケース一覧
簡易帰化が認められるのは、日本と深いつながりがある人です。例えば、日本人の配偶者や子ども、日本で長く育った人などが対象です。
以下の表に、簡易帰化が認められる代表的なケースをまとめました。
|
ケース内容 |
簡易帰化になる主な理由 |
|---|---|
|
日本人と結婚している外国人 |
家族として日本に生活しているため |
|
日本で生まれてから引き続き日本に住んでいる人 |
長期間日本で生活し、日本社会に深くなじんでいるため |
|
日本人の子ども |
親が日本人であるため、血縁関係によるつながりがある |
|
日本人の養子になっている人 |
日本人家庭の一員として育てられているため |
|
日本での在住期間が長い人 |
長く日本に住んでいて安定した生活を送っているため |
簡易帰化が使えるかどうかは、「日本とのつながり」がポイントです。自分の状況がこの条件に当てはまるかを、早めに法務局や専門家に相談すると安心です。
次章では、簡易帰化の対象者が緩和される条件について、具体的に説明します。
簡易帰化の条件
本章では、簡易帰化の条件について、緩和される内容別に紹介します。
居住条件の緩和
通常の帰化では、原則として「5年以上日本に住んでいること」が必要です。しかし、以下のような人は、居住条件が「現在、日本に住所を有すること」に緩和されます。
- 昔、日本人だった人の子ども(養子ではない)で、3年以上ずっと日本に住んでいる人
- 日本で生まれて3年以上ずっと日本に住んでいる人、または自分が日本で生まれていて、父か母のどちらかも日本で生まれている人
ただし、居住年数以外の条件は簡単になるわけではないので、書類の準備や日ごろの生活も大切です。
居住条件、能力条件の緩和・免除
本来、帰化するには5年以上日本に住み、18歳以上であることが必要です。しかし、日本人と結婚している人は、日本の生活になじんでいると判断され、5年の居住年数や18歳に達していない場合でも認められるケースがあります。
以下のような人は、居住年数と能力要件の両方が緩和・免除されることがあります。
- 日本人の夫や妻と結婚していて、3年以上ずっと日本に住んでいて、今も日本に住んでいる人
- 日本人と結婚してから3年以上たっていて、日本に1年以上続けて住んでいる外国人の人(例えば、外国で結婚した場合など)
居住条件、能力条件、生計条件の緩和・免除
とりわけ日本に深いつながりがある人は、日本の社会にすでになじんでいると考えられています。
次のような人は、日本にどれくらい住んでいるか、日本語がどれくらいできるかだけでなく、「お金の面(生活ができるかどうか)」の条件もやさしくなることがあります。
つまり、帰化申請者自身や家族の力で生活ができない場合であっても、帰化申請が認められる可能性があります。
- 日本人の実の子どもで、日本に住んでいる人(養子はのぞきます)
- 日本人の養子になって1年以上日本に住んでいて、養子になったときに自分の国の法律で「子ども(未成年)」だった人
- もともと日本人だったが、後で日本国籍を失った人(日本に帰化してから国籍を失った人はのぞきます)で、今日本に住んでいる人
- 日本で生まれて、生まれたときからどこの国の国籍もなかった人で、生まれてからずっと3年以上日本に住んでいる人
重国籍防止条件の免除
外国人が帰化申請を行う際、出身国の法律によって帰化後も自国の国籍が自動的に失われない場合や、帰化前に国籍離脱が認められていない場合があります。
しかし、日本人の配偶者や子どもなど、日本とのつながりが特に深い場合や、難民としての立場など人道的な観点から特別な配慮が必要とされるケースでは、法務大臣の判断により「重国籍を防ぐ条件」が免除されることがあります。
簡易帰化と他の選択肢:永住権や通常帰化との比較
日本に長く住む外国人には、「簡易帰化」「通常帰化」「永住権」の3つの主な選択肢があります。 それぞれにメリットや条件の違いがあるため、自分の状況にあった方法を選ぶことが大切です。
本章では、簡易帰化と他の選択肢について比較していきます。
永住権との違いと選び方のポイント
簡易帰化と永住権は、どちらも日本で安定して暮らすための制度ですが、大きな違いは「国籍が変わるかどうか」です。 自分の希望や生活スタイルに合わせて、どちらが適しているかを考えましょう。
永住権を取れば、日本にずっと住むことができますが、国籍は元のままです。一方、簡易帰化をすると日本国籍になります。そのため、日本での暮らしの安定や、選挙に参加するなどの権利を持ちたい場合には帰化が有利です。しかし、母国の国籍を失いたくない人にとっては永住権の方が安心かもしれません。
以下に、簡易帰化と永住権の主な違いをまとめました。
|
比較項目 |
簡易帰化 |
永住権 |
|---|---|---|
|
国籍 |
日本国籍になる |
外国籍のまま |
|
国籍喪失の可能性 |
元の国籍を失う必要がある |
外国籍を維持できる |
|
滞在期間の制限 |
永久滞在が可能 |
永久滞在が可能 |
|
出入国の自由 |
自由に出入りできる |
自由に出入りできる |
|
ビザ更新の必要 |
不要 |
不要 |
|
選挙権・被選挙権 |
あり |
なし |
|
条件 |
緩やか(簡易) |
原則10年以上の在留が必要(短縮あり) |
もしあなたが「日本でずっと暮らしたい」「選挙にも参加したい」と考えているなら、簡易帰化は有力な選択肢です。
一方で、「国籍は変えたくない」「母国と日本を行き来したい」という人には永住権の方が向いています。
どちらも将来の生活に関わる大切な制度なので、自分の希望や条件をよく考えて選びましょう。不安があれば、専門家に相談するのも安心です。
自分に合った制度を見極めるために
自分の生活や将来の希望に合った制度を選ぶことが、失敗しないための第一歩です。「簡易帰化」「通常帰化」「永住権」の3つの制度は、それぞれにメリットと条件があります。
制度ごとに求められる条件や取得後の権利が異なります。例えば「簡易帰化」は、日本とのつながりが深い人が利用しやすく、「通常帰化」は一般的な外国人が対象、「永住権」は国籍を変えずに日本に住み続けたい人に向いています。
どの制度を選ぶかは、「どこまで深く日本での生活に関わりたいか」「国籍をどうしたいか」によって変わります。
- 日本人として生活したい:帰化(簡易 or 通常)
- 母国籍のまま日本に住みたい:永住権
自分に合った制度をしっかり理解し、必要であれば行政書などの専門家からアドバイスを受けることもおすすめです。迷ったときこそ、正確な情報をもとに冷静な判断をしましょう。
簡易帰化についてよくある質問(Q&A)
最後に、簡易帰化について、当事務所によく寄せられる質問を回答と併せてまとめました。
簡易帰化は誰でも申請できますか?
簡易帰化は、日本とのつながりが深い人を対象とした制度です。日本人の配偶者や子ども、日本で生まれ育った人など、特定の条件に当てはまる人が対象です。
誰でも申請できるわけではなく、自分が条件に当てはまるかをまず確認することが大切です。不安な場合は、法務局や行政書士に相談してみましょう。
配偶者ビザを持っている人は自動的に簡易帰化できる?
配偶者ビザを持っているだけでは、自動的に簡易帰化はできません。
配偶者ビザは「日本人と結婚している」という事実を証明するビザです。しかし、簡易帰化には、結婚していることに加えて、実際に日本での生活状況や期間など、いくつかの条件を満たす必要があります。
例えば、次のような条件をクリアしていれば、簡易帰化の対象になる可能性があります。
- 結婚期間:日本人と結婚して3年以上
- 日本での居住:日本に引き続き1年以上住んでいる
- 生活の安定:定職があり、安定した収入がある
- 素行の善良さ:法律違反がないなど
迷ったときは、法務局や行政書士に相談するのが安心です。自分がどの制度を使えるか、しっかり確認しましょう。
日本語が苦手でも申請は可能?
帰化後は日本人として暮らすことになるため、日常生活に支障が出ない程度の日本語力が求められます。
法務局での面接や書類のやり取りもすべて日本語で行われます。そのため、ある程度の「読む・書く・話す・聞く」能力が必要なのです。
目安としては、小学校3年生レベルの日本語力があると良いとされています。
不安がある場合は、行政書士などの専門家に相談したり、日本語の勉強を少しずつ進めたりすると安心です。大事なのは、あきらめずに準備することです。
転職歴や納税に不安があるが許可される?
転職を何回かしていても、納税に問題がなければ簡易帰化が許可される可能性はあります。しかし、税金を滞納している場合は不許可になることがあります。
法務局では、「安定した生活をしているか」「日本の法律を守っているか」が重要なポイントになります。
転職があっても、きちんと働いていて、税金も毎年きちんと払っていれば問題ありません。逆に、税金を払っていなかったり、収入の記録がはっきりしなかったりすると、マイナスに見られます。
以下のようなケースでは、判断が分かれることがあります。
- 転職回数が多いが現在は安定している:基本的に問題なし
- 納税を1年だけ忘れていた(すでに支払済):原因と対応次第で許可の可能性あり
- 今も住民税を滞納している:帰化が不許可になる可能性が高い
- 無職の期間が長く、収入が不安定:帰化が難しくなることがある
書類をそろえるのが不安。どうすればいい?
書類をそろえるのが心配なときは、法務局に相談すれば大丈夫です。さらに、行政書士などの専門家にサポートをお願いすることもできます。
帰化申請では、たくさんの書類が必要になります。例えば、「住民票」「納税証明書」「家族の戸籍の書類」などです。
これらの書類は役所や市役所で取る必要がありますが、どの書類が必要かは人によってちがうため、最初に法務局での相談が大切です。また、行政書士に頼めば、必要な書類の一覧を教えてくれて、取り方も教えてくれます。
簡易帰化の書類集めは、最初はむずかしく感じるかもしれませんが、一人で悩まずに相談することが大切です。正しい手順で進めれば、書類集めもスムーズに終わります。
申請後、どのくらいで結果がわかる?
簡易帰化を申請してから結果が出るまでには、通常1年〜1年半ほどかかります。
帰化申請は、日本の国籍をもらう大切な手続きです。そのため、法務局ではひとり一人の生活や仕事、収入、日本語力などをしっかりと調べます。
さらに、申請書の内容にまちがいがないか、追加で書類が必要かどうかなどの確認にも時間がかかります。簡易帰化でも人によって事情が違うため、審査には時間がかかることがあるのです。
終わりに
簡易帰化は、日本にゆかりのある外国人にとって、国籍取得の手続きを少しやさしくする制度です
通常の帰化よりも住んでいる年数や仕事・生活の条件がやわらぐことが多く、日本人の配偶者や子どもなどにとって利用しやすい制度となっています。
しかし、条件がやさしくなるとはいえ、すべての人が自動的に認められるわけではありません。生活の安定や、日本語の理解、きちんとした書類準備など、守るべきポイントはあります。
まずは、「簡易帰化」の制度に自分があてはまるかどうかを知ることが大切です。「もしかして自分も当てはまるかも?」と思ったら、法務局で相談したり、専門家に話を聞いてみたりすることをおすすめします。
しかし、期間の目安を知り、事前にしっかり準備をしておけば、余計な遅れを防ぐことができます。また、わからないことがあれば、法務局や行政書士に相談することも大切です。
しらき行政書士事務所では、帰化申請手続きに関して、初回相談無料で対応しております。
対面での面談がご心配な方や、遠方で直接お会いすることが難しい方、受付時間内にお時間が取れない方にも、お気軽にご相談頂けるように各種オンラインツール(ZOOM、LINE、WeChat、Skypeなど)を利用しての面談にも対応しております。
これまでの経験と実績を生かし、帰化申請の手続きをサポートいたしますので、お気軽にお問い合わせください。




