私たちは日本で生活している外国人夫婦です。このたび子どもが生まれたのですが、この場合は子どものビザ手続きとして、どのようなことが求められるのでしょうか?
はじめに結論から申しますと、日本に在留している外国人夫婦から生まれたお子さんについては、まず区市町村役場で出生届を行い、その後にビザ(在留資格)申請の手続きと、本国に対する登録手続きが求められます。
この記事では、日本に在留している外国人夫婦から生まれたお子さんについて、必要となる手続きとして、「出生届の提出」「在留資格取得の申請」「本国への登録手続き」の3つを解説します。
特に「出生届の提出」「在留資格取得の申請」については、手続きに期限が設けられているので、手続き内容を理解しておきスムーズに済ませられるようにしましょう。
目次
出生届の提出
日本に在留している外国人夫婦の間に子どもが生まれたら、まずは最寄りの区市町村役場に対して出生届を提出して「出生届受理証明書」を取得しましょう。出生届は、生まれた日を1日目と数えて、14日以内に提出しなければなりません。役所が休日などで閉まっている場合、翌開庁日までが期限となります。
仮に14日の期限を過ぎてしまっても受理自体はしてもらえますが、追加で「期間経過通知」と呼ばれる書類の提出と簡易裁判所における審査が求められます。
さらに、提出の遅延が怠慢だと判断されれば、「過料」として5万円以下の罰金となるおそれもあるため、期限にはくれぐれもご注意ください。
なお、出生届は子供の出生地でも提出できるため、出産した病院のある地域で提出することも可能です。また、災害などによって期限内に提出が難しい場合や、事故や病気などによって出生届の提出ができない場合などには、病院や警察署で「届出遅延理由書」を発行してもらいましょう。その後、「届出遅延理由書」を区市町村役場に提出することで、事情を考慮してもらえます。
出生届を提出する際の必要書類
出生届を提出する際は、「医師等が作成した出生証明書付きの出生届書」「届書に押印したものと同じ印鑑」「母子健康手帳」「来庁する人の本人確認書類」が求められます。
上記のうち、母子健康手帳を当日持参することが難しい場合には、後日改めて持参することも可能です。
出生届の書き方
出生届における「子どもの名」については、外国人の場合には「カタカナ」で記載してください。このとき、本国法上の文字(アルファベット)を付記しておきます。中国・韓国の国籍の方であれば、漢字で届出することも可能です(使用できるのは日本の漢字のみ)。
在留資格取得の申請
外国人夫婦の間で子どもが生まれた場合、その子どもは在留資格を持たないため、決められた期間までに在留資格取得のための申請を行う必要があります。
外国人夫婦が日本国内で出生した場合、「在留資格取得申請」を行いましょう。申請後は即日在留カードが交付されます。
子どもに付与される在留資格
親の在留資格で、子どもについて取得を申請する在留資格が決まります。まずは、下表を参考に、子どもの在留資格はどのようなものになるか確認しましょう。
父母いずれかの在留資格 | 子どもの在留資格 | 申請時に留意すべきポイント |
---|---|---|
外交 |
外交 公用 |
大使館・領事館に申請 |
教授、芸術 |
家族滞在 | - |
特定技能1号 |
原則、当てはまるものはありません。 | 行政書士などの専門家にご相談ください。 |
永住者 |
永住者の配偶者等(永住者の子ども) | 永住者の申請できる場合もあります。 |
永住者の配偶者等(永住者の子ども) |
定住者 | - |
特別永住者 |
特別永住者 | 市役所・区役所に申請します。 |
※上表に該当しない場合は、行政書士などの専門家にご相談ください。
例えば、親が「留学」の資格を有している場合、子どもは「家族滞在」の資格を取得することになります。
なお、両親のどちらかが永住者である場合、在留資格許可申請とあわせて永住許可申請をすることもできます。30日を過ぎて申請してしまうと、原則として永住者の取得が許可されないため、永住許可申請をおこなう際は必ず出生から30日以内に申請するようご注意ください。
また、永住許可申請を行う場合、在留カードは即日交付されず、審査の結果、不許可になることもあります。不許可になる要因として考えられるものには、親の収入や年金の滞納などが挙げられます。
なお、永住許可申請が不許可になった場合は、在留資格取得申請の場合と同じで「永住者の配偶者等」の在留資格が付与されます。
必要書類
生まれた子どもの在留資格取得の申請を行う場合、主に以下のような書類が求められます。
- 在留資格取得許可申請書
- 質問書
- 出生届受理証明書(原本)
- 子どもを含めた「世帯全員の住民票」(原本)
- 子どものパスポートもしくは旅券未取得理由書
- 子どもを扶養する人の住民税の課税証明書、住民税の納税証明書
- 子どもを扶養する人の職業を証明する書類
- 身元保証書
上記は一般的な書類ですので、詳しくは申請先の出入国在留管理局へお問い合わせください。
本国への登録手続き
日本で子どもが生まれた場合、その出生は日本の区市町村役場で届け出る必要がありますが、これだけでは外国人配偶者の母国には出生が記録されません。
したがって、子どもの出生を配偶者の母国にも届け出るためには、その国の大使館に出生届を提出する必要があります。
大使館での届け出方法は国によって異なるため、具体的な手続きの詳細は該当する大使館に直接確認することが重要です。この手続きを怠ると、子どもの存在が配偶者の母国に認識されず、将来的に本国での手続きや日本での生活に影響が出る可能性があります。そのため、出生届を提出した後は迅速に大使館での手続きを行うことが望ましいです。
例えば、修学旅行や家族旅行で海外へ行く際や、結婚・就職の手続きをするときに、通常日本では本国が発行した旅券(パスポート)、出生証明書、国籍証明書などが必要とされます。
しかし、国際結婚の場合、日本での出生届だけでは子どもの出生が本国に登録されないため、これらの公文書を取得することができません。
このため、子どもが国際的な旅行をする際や、将来的に結婚や就職などの重要な手続きを行う際に、必要な公式文書を取得するためには、日本での出生届と同時に本国への登録手続きを行う必要があります。
この登録手続きを怠ると、子どもが必要な公文書を取得できず、海外旅行や結婚、就職などにおいて手続き上の問題が生じる可能性があります。
子どもが生まれた外国人夫婦の方からよくある質問
子どもが生まれた外国人夫婦の方からよくある質問と回答をまとめました。
もし里帰り出産して母国で生まれた場合は?
在留資格取得申請は、あくまでも子どもが日本国内で生まれた場合に必要となる手続きです。
もし里帰り出産して母国で生まれた場合には、お子様の「在留資格認定証明書交付申請」を行い、新規入国手続きと同じ申請をする必要があるため、日本への入国に時間がかかることになります。
両親のどちらかが日本国籍の場合はどうすればいい?
この場合、子どもは日本国籍を取得できます。
国際結婚により生まれた子どもが、日本国籍のみを取得する場合は、通常通り出生届の手続きを行います。しかし、子どもに日本国籍と外国籍の両方を持たせたい場合は、日本での出生届提出に加えて、外国籍を持つ親の母国への登録手続きも必要です。
日本国籍法では、国際結婚で生まれた子どもは通常、出生時に自動的に日本国籍と外国籍の両方を取得します。しかし、子どもが日本国籍を保持し続けるためには、特別な手続きが必要です。具体的には、子どもが日本国籍を「留保」する意思があることを示す「国籍留保届」を、出生後3ヶ月以内に提出する必要があります。
この届出を行わない場合、子どもは生まれた時点から日本国籍を持っていなかったことになり、外国籍のみを持つことになります。そのため、両国籍を保持させたい場合は、出生後迅速に必要な手続きを行うことが重要です。
この手続きは、出生届の用紙に「日本国籍を留保する」旨の記載をすることで行えるので、日本の区市町村役場に出生届を提出する際にまとめて手続きをしましょう。
もしも国籍留保の手続きを忘れてしまっていた場合には、18歳未満(2022年4月以降、20歳から18歳に短縮)までであれば、日本国籍の再取得の手続きを行うことも可能です。なお、国籍留保届を提出した場合、原則22歳までに国籍を選択しなければなりません。
在留資格取得の申請をしないとどうなりますか?
申請しないで60日を超えて日本にいた場合、オーバーステイ(不法滞在)となります。
不法在留の外国人に対する罰則は以下のとおりです。
- 退去強制
- 3年以下の懲役・禁錮もしくは300万円以下の罰金
60日以上日本に滞在するのであれば、生まれてから30日以内に入管に申請してください。
外国人の親が未婚やオーバーステイの場合は?
内縁の両親の間に生まれた子どもであっても、外国人母との母子関係が立証できれば、子どもに在留資格は付与されます。
また、父親がオーバーステイで有効なパスポートや在留カードを所持していない場合であっても、合法的に滞在している外国人母との母子関係が認められれば、子どもの在留資格取得に影響は及びません。
外国で暮らす配偶者の連れ子を日本に呼び寄せるためには?
日本に住む外国人配偶者の連れ子を日本へ呼び寄せたい場合、「定住者」という在留資格の取得が必要です。
この資格を取得するためには、連れ子が未成年で独身であること、そしてその子が外国人配偶者に扶養されることが条件です。ただし、未成年者であっても成人に近い年齢である場合、この在留資格の許可が下りないこともあるため注意が必要です。
事前に在留資格に関する正確な情報を専門家から得て、適切な手続きを行いましょう。
終わりに
日本に在留している外国人夫婦から生まれたお子さんについては、まず区市町村役場で出生届を行い、その後に在留資格申請の手続きと、本国に対する登録手続きが求められます。
このうち「出生届の提出」「在留資格取得の申請」については、手続きに期限が設けられているので、手続き内容を理解しておきスムーズに済ませられるようにしましょう。
そのほか、日本人の子どもと同じように、健康保険の手続きや、乳幼児医療証の手続きや児童手当の手続きも必要です。子どもの出生後何日以内に手続きをするようにと期限が決まっているものもあるので、出産前に必要な手続きを確認しておきましょう。