技能実習生との恋愛が進展し、結婚を考えた場合、どのように対応すればよいのでしょうか。令和6年時点で日本には約40万人の技能実習生が在留しており、彼らと出会う機会も増えています。ただし、技能実習生は原則として実習期間終了後に帰国することが義務付けられているため、一緒に日本で生活を続けるにはいくつかの手続きを行う必要があります。
この記事では、在留資格の申請サポートに詳しい行政書士である著者が、技能実習生と日本で暮らし続けるために必要な在留資格の変更手続きや結婚を通じた在留資格の取得方法について解説します。変更手続きの際に気をつけるべきポイントも詳しく説明しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
技能実習制度の目的
技能実習制度は、「日本で培われた技能や技術、知識を開発途上地域に移転させ、経済発展を担う人材育成を通じて国際協力を推進すること」を目的としています。したがって、原則として技能実習を終えた実習生は母国に戻り、そこで学んだ知識や技術を生かして自国の発展に貢献することが求められています。
しかし、技能実習期間中にかけがえのないパートナーに出会い、離れたくないと考える方もいることでしょう。日本で一緒に暮らし続けるには、どのような手続きが必要かについて、具体的な方法を解説していきます。
技能実習生および国際結婚の増加
2024年8月末に公表された出入国在留管理庁の資料によると、日本には現在40万人以上の技能実習生が在留しています。国別で見てみると、ベトナム出身者が全体の半数以上を占めており、次いでインドネシア、フィリピン、中国の順となっています。
職場や取引先で外国人技能実習生を見かけたり、直接接したりする機会がある方も多いのではないでしょうか。新型コロナウイルスの影響下でも、技能実習ビザの在留者数は依然として多く、これが日本人と外国人技能実習生との出会いや結婚につながるケースも増加していると考えられます。
しかし、技能実習生の中には「日本での生活を続けたい」という思いから、配偶者ビザを取得するために結婚を選択する者もいます。これは、いわゆる便宜上の結婚(偽装結婚)であり、本来の国際結婚とは異なる目的で行われるものです。
当然のことながら、入管当局もこうした偽装結婚に対しては厳しい目を向けており、在留資格の審査は非常に慎重に行われています。どのようなビザであっても、不正な在留を許さないという姿勢で臨んでいます。
参考:法務省 出入国在留管理庁「外国人技能実習制度について」令和6年8月5日改訂版
技能実習生との結婚後も日本に在留するためには配偶者ビザが必要
日本に住む外国人は、何らかの在留資格を所持していることで在留が認められています。在留資格は活動内容に応じて細かく分類されており、技能実習生の場合は「技能実習」という在留資格に該当します。
在留資格には期間の制限があり、通常は更新手続きを行うことで延長が可能ですが、「技能実習」については最長で3年、または5年での帰国が原則とされています。
つまり、技能実習プログラムを終えた後に引き続き日本での生活を望む場合は、新たな在留資格の取得が必須です。
その中で最も現実的な選択肢が「日本人の配偶者等」という在留資格(通称、配偶者ビザ)です。そのほかに「留学」や「就労」に該当する在留資格も存在しますが、これらは取得の要件が非常に厳しく、技能実習生が直接取得するのはかなりハードルが高いのが現状です。
「日本人の配偶者等」とは
「日本人の配偶者等」という在留資格には、以下のような対象者が含まれます。
- 日本人と法的に結婚している配偶者
- 特別養子縁組で養子となった者
- 日本で出生した日本人の子供
このうち「日本人の配偶者」とされるのは、現在も法的に有効な婚姻関係にある者を指します。つまり、配偶者がすでに死亡している場合や、離婚している場合は「日本人の配偶者等」の対象外となります。
法的に有効な結婚と認められるには、日本で婚姻届が受理されていることに加え、技能実習生の本国政府にも結婚の事実が正式に報告されていることが求められます。両国での結婚が法的に有効であることを証明できる状態でなければなりません。
技能実習生との結婚で配偶者ビザへの変更が認められる条件
技能実習生は、日本での実習を終えた後、基本的には本国へ帰国することが制度上の前提とされています。そのため、原則として技能実習ビザから他のビザへの切り替えは想定されていません。
しかし、技能実習ビザからの変更がすべて一律で不許可となるわけではありません。
例えば、技能実習生本人やその配偶者が妊娠している、あるいはすでに子どもがいるといった状況では、家族としての実態を総合的に考慮し、法務大臣の裁量により在留資格の変更が認められる可能性もあります。
具体的にどのようなケースで技能実習生から他の在留資格へ切り替えが許可される可能性があるのか、ケースごとに見ていきましょう。
技能実習中のケース
技能実習中に在留資格を配偶者ビザに変更する際、監理団体や実習先の企業(実習実施機関)から同意書の提出を求められることが一般的です。これは、技能実習生が本国に技術を持ち帰るという本来の目的が果たせなくなることを背景にしており、在留資格の変更をする理由をしっかり説明する必要があるためです。さらに、状況によっては海外の送出機関からの同意書も必要になる場合があります。
審査の際に重要視されるのは、なぜ技能実習計画が中断されたのかという点です。監理団体や実習先企業あるいは送出機関から同意を得られない場合、在留資格の変更は非常に困難になります。また、変更に際して合理的な理由がないと判断されると、配偶者ビザの取得は厳しくなるでしょう。
したがって、同意書を取得できるかどうか、また配偶者ビザへの変更に正当性が認められるかが許可を得るための大きなポイントです。
さらに、審査では夫婦が同居していることも重要視されるため、技能実習生が現在実習先の寮などで生活している場合、いつから夫婦として同居が可能になるのかについても明確にしておくことが大切です。
技能実習が修了しているケース
技能実習を無事に修了している場合、配偶者ビザ申請時の入管審査において「修了証」の提出が求められます。もし修了証が発行されていない場合は、代替となる書類を用意して提出する必要があります。技能実習を適切に終えていないと判断されると、配偶者ビザへの在留資格変更は非常に難しくなる可能性が高いです。
また、技能実習が修了している場合であっても、監理団体や実習実施機関、送出機関から在留資格変更に関する承諾書を取得できるのであれば、ビザ申請書類にその承諾書を添付することが望ましいです。
このように、技能実習生が国際結婚を通じて配偶者ビザを申請する際には、通常の申請とは異なる追加書類の提出が求められることがありますので、必要な書類をあらかじめ確認し、万全の準備をすることが重要です。
技能実習期間中や修了後において、配偶者ビザへの在留資格変更を行う際には、監理団体や実習実施機関、送出機関の同意が必要とされることがあります。ただし、技能実習生が国際結婚をすること自体には特別な制約はなく、必要な書類さえ揃っていれば、通常通り婚姻手続きを進めることが可能です。
とはいえ、結婚後の手続きにおいて後々のトラブルを避けるためにも、国際結婚を決意した時点で、監理団体や実習実施機関、送出機関へ事前に報告しておくことが望ましいと言えます。
技能実習ビザから配偶者ビザへの変更手続きの流れ
技能実習ビザから配偶者ビザへの変更手続きの一般的な流れは以下の通りです。
- 実習を修了後、一度母国に帰国する
- 一定期間(目安として3年ほど)母国に滞在する
- 配偶者ビザの「在留資格認定証明書」を申請する
- 「在留資格認定証明書」の交付を受ける
- 再度日本へ入国し、配偶者ビザを取得する
基本的には、一度帰国し一定期間を母国で過ごした後に配偶者ビザを申請するのが、最もスムーズな手続きとされています。
ただし、帰国が難しい事情がある場合や、技能実習中に配偶者ビザへの変更を希望する場合は、事前に監理団体や実習実施機関に相談し、主に以下の書類を用意して入管に提出する必要があります。
- 日本人配偶者の親族や知人からの嘆願書
- 技能実習先の同僚による嘆願書
- 近隣住民からの嘆願書
- 実習先の上司からの承諾書
- 監理団体からの承諾書
技能実習期間中に配偶者ビザへ変更するには、各関係者からの同意書を集めるなど、審査の難易度も申請準備も非常に高くなることを念頭に置いてください。
技能実習生との結婚と配偶者ビザについてよくある質問
最後に、技能実習生との結婚および配偶者ビザについて、当事務所に多くお寄せいただく質問と回答をまとめました。
そもそも技能実習中に結婚してもいいの?
技能実習生は、本国の送出機関と送出契約を、日本国内の雇用会社と雇用契約をそれぞれ結んでいます。その契約内容に「技能実習中の結婚を禁止する」という規定が含まれていることもあります。企業側としては、実習期間中に技能実習生が安定して働けることを望んでいるため、このような制約を設ける場合があるのです。
しかし、労働法の観点では、婚姻や妊娠・出産などを理由とした解雇や不利益な扱いは禁じられています。そのため、契約書に制限が記載されていても、結婚自体を禁止することはできず、技能実習生は結婚することが法的に認められています。
技能実習生との国際結婚前に同棲してもいいの?
通常、技能実習生は監理団体や雇用先が手配した寮に住んでいます。そのため、監理団体や雇用先の承諾が得られれば、配偶者と同居することは可能です。入管法上も、同棲自体は在留資格審査に悪影響を与える要素にはならないため、特に問題にはなりません。
交際相手の技能実習生が妊娠してしまったらどうすればいい?
監理団体の規定によっては、妊娠した際に帰国を求められることが一般的です。しかし、日本で出産を希望する特別な事情がある場合には、在留資格の変更が認められることもあります。対応はケースバイケースで異なるため、詳しい対策についてはぜひ一度ご相談ください。
技能実習生の性別で対応は異なる?
技能実習生が過去に離婚歴を持つ場合、国によっては再婚までに一定の待婚期間が設けられていることがあります。また、女性の技能実習生の場合、前夫の姓(苗字)を変更できないケースもあるため、この点については結婚手続きを進める前にしっかり確認しておくことが重要です。
技能実習生との出会いの場はどこが多い?
技能実習生と日本人の出会いの場として最も多いのは職場です。日本人が働く職場に技能実習生が加わり、毎日顔を合わせるうちに自然と親しくなっていくケースがよく見られます。
また、同じ地域に住んでいる場合、行きつけの飲食店などで頻繁に顔を合わせることがきっかけとなり、交際に発展することもあります。
さらに最近では、オンラインを通じて知り合うケースも増えてきています。ただし、日本人が主に利用する婚活サイトではなく、Yahoo!パートナーや語学交流を目的としたサイトなどを介して出会うことが多いようです。
終わりに
技能実習生の方と交際している場合、「結婚できるのか?」「一緒に日本で生活できるのか?」と不安に感じるかもしれません。しかしご安心ください。技能実習生の方と結婚し、日本で一緒に暮らすことは可能です。
結婚手続きをしっかりと行い、その後、配偶者ビザの申請を適切に行えば、問題なく日本での共同生活を続けられます。
しらき行政書士事務所では、配偶者ビザをはじめとする在留資格の申請手続きに関して、初回相談無料で対応しております。
対面での面談がご心配な方や、遠方で直接お会いすることが難しい方、受付時間内にお時間が取れない方にも、お気軽にご相談頂けるように各種オンラインツール(ZOOM、LINE、WeChat、Skypeなど)を利用しての面談にも対応しております。
これまでの経験と実績を生かし、技能実習ビザから配偶者ビザへの切り替え成功をサポートいたしますので、お気軽にお問い合わせください。