私は海外在住です。日本で事業を行いたいのですが、日本に親族も知人もいません。この場合、経営管理ビザを取得することは可能でしょうか?もし可能なら、どのような手順で進めたらよいでしょうか?
はじめに結論から述べると、日本に親族や知人がいない場合であっても、経営管理ビザを取得することはできます。この場合、4か月の経営管理ビザの取得を申請することをおすすめします。
本記事では、海外在住で日本に親族や知人がいない方が経営管理ビザを取得するにあたって知っておきたい情報を分かりやすく解説します。
目次
経営管理ビザとは
経営管理ビザとは、日本で事業を経営したり、その事業の管理を行ったりするための在留資格です。このビザは、就労ビザの一つです。
2015年4月1日に施行された入管法の改正により、このビザの名称が「投資・経営ビザ」から「経営・管理ビザ」に変更されました。
以前は外国からの投資が必要でしたが、この改正により、その条件がなくなりました。これにより、日本国内の企業で経営や管理に携わる外国人も「経営・管理ビザ」を取得できるようになりました。
4カ月の経営管理ビザとは
一般的な経営管理ビザの在留期間は1年、3年、5年のいずれかですが、2015年4月11日からは特定の場合に限り、在留期間が4ヶ月の経営管理ビザを取得できるようになりました。
この4ヶ月のビザは、会社を設立する前に入国することが可能であり、海外に住む外国人が経営管理ビザを取得する際のハードルを低くしています。
経営管理ビザの要件
経営管理ビザを取得するための主な条件は以下の通りです。
- 日本国内に独立した事業所を確保していること
- 500万円以上の出資、または日本に住む常勤職員を2名以上雇用すること
- 事業が適正であり、安定し、継続性があることを示すこと
このビザを取得するためには、学歴や職歴は必要ありません。そのため、誰でも申請できますが、実際に日本で会社を経営できるかどうかについては、事業規模と事業計画が厳しく審査されます。日本で外国人が会社を設立し経営するためには、上記の3つの条件を満たす必要があります。
以下では、それぞれの条件について詳しく解説します。
事業所の確保
経営管理ビザを取得して日本で会社を設立するには、独立した事務所を確保する必要があります。
バーチャルオフィスや仕切りのないレンタルオフィスは、事務所として認められません。また、自宅として使用しているアパートやマンションを事務所にすることも原則としてできません。
500万円以上の出資、日本に居住する常勤職員の雇用
経営管理ビザを取得するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 本人が500万円以上を出資すること
- 日本に居住する常勤職員(日本人、特別永住者、日本人の配偶者、永住者など)を雇用すること
また、500万円の資本金については、その出所を証明する必要があります。
事業の適正性・安定性・継続性
設立する会社には、事業の適正性、継続性、安定性が求められます。
事業内容、収支見込み、事業計画書などを提出し、これらの要件を示す必要があります。出入国在留管理局は、事業が実際に存在し、利益を出して継続できるかを審査します。長期間にわたり赤字を出し続けることが予想される会社は認められません。
インターネット関連や貿易などのビジネスでは、500万円以上の出資があれば経営者1人で運営することも可能です。
しかし、飲食店、マッサージ店、小売店などの店舗ビジネスでは、経営管理ビザを取得した経営者は主に経営業務を担当し、調理や接客などの現場業務は行わないことが求められます。そのため、これらのビジネスでは現場スタッフの採用が必要です。
日本に知人がいない場合における経営管理ビザ取得のポイント
通常、海外に住んでいる方が日本で起業するために経営管理ビザを申請する際には、日本に協力者が必要です。
経営管理ビザの審査では、「すぐに事業を開始できるか」が重要なポイントです。つまり、事務所の賃貸契約や内装、会社の設立登記、開業届や許認可の取得などを完了した上で申請する必要があります。
通常は、これらの手続きを日本の協力者が代行しますが、協力者がいない場合は4ヶ月の経営管理ビザを利用することになります。
この4ヶ月のビザを使うと、会社の設立登記や開業届、許認可の取得は後でも構いません。まずは4ヶ月の経営管理ビザで来日し、この期間中に自分で各種手続きを行うことができます。
もちろん、4カ月の期間が終わる前に在留資格の更新許可申請を行う必要があります。4カ月という期限はありますが、自分で手続きを進められるのが大きなメリットです。
この制度の魅力から、海外に住んでいて日本に協力者がいない方が、まず4カ月の経営管理ビザを取得するケースが増えています。
4カ月の経営管理ビザの申請手順
4カ月の経営管理ビザの申請手順は、大まかに以下のとおり進められます。
- 定款案の作成
- 事業計画の作成
- 認定証明書交付申請
- 認定証明書の交付
- 申請人本国へ認定証明書の郵送
- 本国でビザ発給手続き
- 来日
- 来日後、4カ月以内にすべての手続を完了
- 4カ月以内に更新手続き
- 事業開始
ここからは、上記のうち特に大切なステップについて、順番に詳しく解説します。
定款案の作成
まずは定款案の作成を行います。定款案で決めるべき事項は以下のとおりです。
商号 | 会社の名称です。 |
---|---|
事業目的 | どのような事業を行うのかを記載します。必要な許可も確認して記載する必要があります。 |
資本金 | 経営管理ビザの要件として、従業員を雇わない場合は500万円以上に設定します。 |
本店所在地 | 定款に記載する住所は最小行政区(市区町村)までで構いません。将来の移転の可能性を考慮して決定します。 |
事業年度 | 設立月から最長1年以内に最初の決算を行います。何月に決算を行うか決めます。 |
出資者 | 資本金を出資する人です。多くの場合、申請者本人が出資者となります。 |
役員 | 経営管理の活動を行う人です。経営管理ビザの場合、代表権を持つ役員であることが必要です。 |
定款認証まで行う場合
定款認証を行うためには、出資者の印鑑証明書が必要です。しかし、日本に住所がない海外在住の外国人は、日本の印鑑証明書を用意できません。
その場合、印鑑証明制度がある国では「その国の印鑑証明書とその日本語訳」を用意します。印鑑証明制度がない国では、「サイン証明書」を準備します。
サイン証明書を取得する際には、申請者の住所も証明する必要があるため、「在留証明書」も合わせて準備する必要があります。
事業所の確保を事前に行う場合
海外在住の外国人が経営管理ビザを申請する際、事業所の確保は非常に難しいです。
日本に住所がなく、会社が設立途中の場合、本人確認に必要な証明書類がほとんど揃いません。そのため、パスポートや本国の証明書だけで事業所の賃貸契約をしてくれる物件オーナーを探す必要があります。
事業計画の作成
経営管理ビザを取得するには、事業計画書が非常に重要です。4カ月の経営管理ビザであっても、どのようなビジネスを行う予定なのかを事業計画書で明確にする必要があります。
事業計画書に記載する主な内容は以下のとおりです。
- 事業概要
- ビジネスの特徴
- 提供するサービス内容
- 価格設定
- 集客方法
- 取引先
- 人員計画
- 損益計算書
認定証明書交付申請
日本の入国管理局で在留資格認定証明書を申請する際の主な書類は以下のとおりです。
- 申請書
- 定款案(定款認証済みでも可)
- 事業所の書類(事業所を確保している場合、権利関係が分かる書類)
- 申請人の所得証明書(投資できる資力があるか確認するため)
- 事業計画書
認定証明書の交付、郵送
認定証明書が交付されたら、それを本国にいる申請人に郵送します。申請人は、受け取った認定証明書とその他の必要書類を本国にある日本領事館に持参し、4カ月の経営管理ビザを取得します。その後、日本に来日することになります。
来日後、4カ月以内にすべての手続を完了
申請者は来日後、主に以下の手続きを行う必要があります。
- 日本で住所を定めて住民票を登録する。
- 住民票の登録と同時に印鑑登録を行う。
- 事業所が未確保の場合、事業所を確保する。
- 日本の銀行で本人名義の銀行口座を開設する。
- 資本金を振り込む。
- 会社設立登記を行う。
- 会社名義の銀行口座を開設する。
- 会社の銀行口座に資本金を移す。
- 議事録を作成し、役員報酬を決定する。
- 税務署に法人設立届とその他の届出書類を提出する。
- 許可が必要な業種の場合、営業許可を取得する。
これらの手続きを4カ月以内に完了し、在留資格の更新許可申請を行う必要があります。
4カ月以内に更新手続き
4カ月ビザから経営管理ビザへの更新申請を行った場合、ほとんどの場合、1年の有効期間でビザが発行されます。
事業開始に必要な準備はすでに整っているため、更新許可が下りると同時に事業を開始できます。これからは経営者として、本来の事業活動に専念することになります。
4カ月の経営管理ビザ取得の申請に必要な書類
必要な書類は、認証前の定款と事業計画書の2つです。さらに、次の2点を証明する資料があれば、4カ月の経営管理ビザを取得できる可能性が高まります。
- 申請者が会社を設立する意思があること
- 会社設立がほぼ確実であること
事務所については、実際に契約する必要はなく、検討している物件の概要(場所、面積、家賃)を記載した資料を提出すれば問題ありません。
その他、4カ月の経営管理ビザ申請に必要な書類は以下のとおりです。
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 写真(申請書貼付用、4cm×3cm)
- 返信用封筒
- 経歴書(本事業に関連する知識について)
- 事業計画書
- 定款
- 事務所の説明書
- 残高証明書(資金の証明)
終わりに
経営管理ビザは、申請者の職歴や学歴に対する要件は緩やかですが、事業に対する審査は比較的厳しいです。
業種によってビザの要件が異なるため、「これをしておけば確実に経営管理ビザが許可される」という公式のようなものは存在しません。この複雑なビザの取得を、自身の事業を始める準備と並行して進めるのは非常に難しいことです。入念に準備した事業が、ビザの不許可によって全ての計画が狂ってしまうこともあります。
そうならないために、事業を始める前に経営管理ビザの許可率をできるだけ高くしておきたいと思うのは当然です。
それでは具体的に、経営管理ビザの許可率を上げるにはどうすればよいのでしょうか?その答えは、「経験豊富な専門家に依頼する」ことです。
当事務所はビザ申請を専門にしており、経営管理ビザの申請にも多数の実績があります。これまでに、自動車関連、飲食関連、旅行関連、貿易関連など、様々な業種のお客様の経営管理ビザをサポートしてきました。
また、前職と異なる業種での開業や実務経験が少ない方の経営管理ビザもサポートし、許可を取得した実績もあります。
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