現在、就職活動をしている外国人留学生です。この度、ある会社から内定をもらいました。私が担当する業務は就労ビザに該当すると思うのですが、その会社の事業が風俗営業許可が必要な事業を行っています。この場合、就労ビザは下りるのでしょうか?
はじめに結論から述べると、就労ビザの取得にあたっては、その会社で担当する業務や業務量は審査されますが、会社そのものの事業は審査に大きく影響しません。
そのため、風俗営業許可が求められる事業を行っている会社に就職する場合でも、就労ビザを取得できる可能性はあります。
なお、外国人留学生のアルバイト等では、業務内容に関わらず、風俗営業許可が必要な事業を行っている会社では働けませんのでご注意ください。
本記事では、就労ビザで風俗営業許可が必要な事業を行っている会社での勤務を考えている人が知っておくべき情報を中心に分かりやすく解説します。
目次
就労ビザの種類
そもそも就労ビザとは、就労活動に対しての在留資格のことです。日本では日本国籍のない外国人が日本で暮らすために在留資格制度を設けています。外国人は何らかの在留資格が許可されて日本で暮らしているのです。
在留資格は活動内容に応じて分類されており、その中で日本で働くことを目的とした在留資格のうちの数種類が言葉の通称として「就労ビザ」と呼ばれているのです。
働くことを目的とした在留資格の中でも、従事する職務の内容や会社での地位などにより異なる種類があります。
在留資格 | 補足 |
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技術・人文知識・国際業務 | エンジニアやプログラマーなどの技術系、企画や営業などの人文知識系、通訳・翻訳、貿易事務などの国際業務系に分かれます。学歴要件が重要ですが、実務経験での取得も可能です。 |
技能 | 料理、建築・土木、製品の製造・修理、宝石・貴金属・毛皮の加工、動物の調教、石油探査・海底地質調査、航空機の操縦、スポーツの指導、ワインの鑑定・評価等の9種類が認められています。10年以上の実務経験を証明しなくてはなりません。 |
企業内転勤 | 日本国に在籍する会社と資本関係のある海外の会社からの転勤者に与えられる在留資格です。海外の会社での在籍期間が緯年以上必要で、学歴は問われません。 |
経営・管理 | 外国人が日本国で投資をして事業を経営するためのものと、外国会社の日本支社の責任者として経営を管理する者とに分かれます。 |
そのほか、 「法律・会計業務」、「報道」、「教授」なども日本での所属先から報酬を得るなど働くための在留資格ですが、一般的に「就労ビザ」に含まれてはいません。在留資格審査において基準が独自にあるからです。
本記事では、「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザで就職するケースを想定して解説を行います。
風俗営業許可に直接関わる業務を行う際に必要な在留資格
風俗営業許可に直接関わる業務を行う場合、就労ビザではなく以下のような在留資格が求められます。
- 永住者
- 特別永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
例えば、社交飲食店をはじめとする風俗営業のお店でスタッフとして働く場合、上記のいずれかの在留資格を持つ外国人でなければ雇用することはできません。(これら5つの在留資格を持っていれば、雇用されることはもちろん、経営者にも管理者にもなることができます。)
就労ビザで在留している人はもちろん、単なる旅行者や留学中の学生さん、短期滞在の方などが持つ在留資格では、風俗営業に該当するお店で働くことはできません。もちろん性風俗店もご法度です。
上記5資格以外の在留資格を持つ方の中には「資格外活動」の許可を取得しているケースもありますが、たとえ資格外活動として就労の許可を有していたとしても、風俗営業に該当するお店で働くことは認められていません。
技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得するためのポイント
ここからは、風俗営業許可が必要な事業を行っている会社への就職に向けて、技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得するために知っておくべきポイントを解説します。
申請要件
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を申請するためには、学歴などの条件が必要で、満たしていない場合は不許可となります。
学歴と業務内容の関連性がある
外国人本人の専門知識やスキル、感受性を活かせる業務内容でない場合、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は取得できません。
学歴は海外か日本の大学卒業、もしくは日本の専門学校卒業以上
海外の大学を卒業した場合、「日本の大学卒に相当する」ことを証明する必要があります。海外の専門学校卒では学歴の条件を満たせません。
必要な学歴を満たせない場合、「技術」や「人文知識」の在留資格では10年以上の実務経験(職歴)が必要です。「国際業務」の場合は3年以上の実務経験があれば条件を満たせます。
企業の経営状態が良好
受け入れ企業の経営状態が安定しているかどうか、審査されます。
給与の水準が日本人と同等かそれ以上
同一労働同一賃金が適用されます。外国人写真の給与が、同様業務を行う日本人社員と同等かそれ以上の給与条件でなければなりません。これは在留資格や国籍に関係なく、日本に在留する外国人にも適用される法律です。
不許可になりやすい要件なので、正しく理解しておくと良いでしょう。
審査における主なチェックポイント
ここでは、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の取得許可申請における審査でチェックされる主なポイントを紹介します。
すでに同一ポジションの外国人がいる
この場合、業務内容はすでに出入国在留管理庁から許可を得ているため問題ありません。そのため、企業がその業務内容を担当する人員を増やす必要があることを説明できれば問題はありません。
例えば、業務量の増加(売上の上昇)や異動や退職による欠員補充といった理由を示すことが求められます。業務内容が審査の結果認められているという点は非常に強力なポイントです。
日本語能力を有しているか
業務内容によって異なりますが、翻訳や通訳の要素が含まれる場合、日本語能力があることを証明する必要があります。
一つの基準として、日本語能力検定があります。翻訳や通訳以外でも、日本人とのコミュニケーションが必要な業務(例えば営業など)では、日本語が十分に話せないと、申告した業務内容を実際に遂行できるのか疑われる可能性があります。
また、実際に日本語能力があっても、日本語能力検定などの証明がない場合は、業務を遂行するための日本語能力を持っていることを説明する必要があります。
もちろん、日本語を必要としない職場環境や業務内容であれば、日本語能力が原因で不許可になることはありません。
素行不良が見られないか
これは留学生が在留資格を切り替える場合に特に注意すべき点です。留学生は「教育機関で勉強する」ために来日しているため、本来の目的である学業がおろそかになっている場合、新しい在留資格の取得が難しくなります。
出席率が低い場合、病気などの理由があれば認められることもありますが、過度なアルバイト(オーバーワーク)の場合は、どんな事情や反省があっても認められません。
申請方法
「技術・人文知識・国際業務」は、以下の流れで申請します(日本にいる外国人留学生を採用する場合)。
- 企業が外国人と雇用契約を締結する
- 外国人が「在留資格変更許可申請」を行う
- 就労開始
申請から許可までの期間
外国人留学生の在留資格を変更して採用する場合は、「在留資格変更許可申請」という手続きが必要です。
在留資格変更許可申請には、40日から50日程度かかります。また、申請の前段階(書類作成や添付書類の収集)には、60〜120日程度の時間がかかるため、早めに準備を進める必要があります。
難しい申請の場合の対応策
ここでいう「難しい申請」とは、審査のチェックポイントにおいて「過去に一度不許可になったことがある」や「勉強内容と業務の関連性が確認できない」などの理由で、不許可のリスクが高い申請を指します。
このような場合、不許可を減らすために対策が必要です。要件を満たしていることを積極的にアピールするために、多くの疎明資料を準備するなどの対策が求められます。その代表的な書類が「理由書」です。
「理由書」では、疎明資料だけでは伝わりにくいポイントを説明します。審査官に伝わりにくいポイントを補足するイメージです。
文章の構成としては以下の点を意識すると自然な流れになります。文章量はA4で1枚から長くても3枚程度に収めるのが理想ですが、最も大事なのは伝えたいことが視覚的にわかりやすく、すべてに目を通してもらえるようにすることです。
文章力は不要で、以下の内容を盛り込むだけでも審査官が知りたい情報を提供できます。また、説明に疎明資料を添付する場合は、その資料について説明を書くことで、さらに説得力が増します。
記載内容 | 補足 |
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申請人について |
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業務内容について |
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「難しい申請」の場合は、無理せず専門家である行政書士に手続きのサポート・代行を相談されることをおすすめします。
終わりに
就労ビザの取得にあたっては、その会社で担当する業務や業務量は審査されますが、会社そのものの事業は審査に大きく影響しません。そのため、風俗営業許可が求められる事業を行っている会社に就職する場合でも、就労ビザを取得できる可能性はあります。
なお、外国人留学生のアルバイト等では、業務内容に関わらず、風俗営業許可が必要な事業を行っている会社では働けませんのでご注意ください。
「技術・人文知識・国際業務」をはじめ、風俗営業許可が必要な事業を行っている会社で働くための在留資格の取得を考えている外国人の方で「自分のケースでは、どの在留資格を選び、どのような手続き、書類が求められるのか分からない」といったお悩みを抱えている場合には、お気軽にしらき行政書士事務所までお問い合わせください。