現在、私は会社の人事を担当しています。新年度から新卒の外国人留学生を雇用する予定ですが、いつから何を準備していくとスムーズに雇えるのか、アドバイスをいただけると嬉しいです。
最近、人手不足などを理由に新年度の開始に併せて外国人労働者の方を雇用したいという企業が増えています。
新年度スタートのタイミングに併せて外国人をスムーズに採用したい場合、事前の準備が必要不可欠です。特に都市部(東京、名古屋、大阪など)での採用の場合は、審査時間が長めにかかりやすいので、できる限り早めに取り掛かる必要があります。
そこで今回は、外国人留学生を新卒採用する方法や手続きの流れ、タイミング、準備書類などを中心に解説します。
目次
外国人留学生を新卒採用する方法
多くの企業から、留学生の雇用に興味を持ちつつも、どのように優秀な外国人留学生を採用すれば良いのか分からないというご相談をお受けしております。ここでは、外国人留学生を新卒として採用する際の具体的な方法について説明していきます。
在留資格の変更手続き:留学ビザから就労ビザへ
留学生を新卒採用する際に最初に必要なのは、在留資格の変更手続きです。留学生は通常、「留学ビザ」で日本に滞在していますが、就職するためにはこのビザを就労目的のビザに切り替える必要があります。
以下では、留学生が日本で働くためによく取得する2つの就労ビザについて説明しています。
なお、留学ビザから就労ビザへの変更を希望する場合、外国人は自身の住所地を管轄する地方入国管理局に申請を行う必要があります。
例えば、3月に卒業予定で4月からの就職を希望する場合は、卒業3ヶ月前に大学から卒業見込証明書を取得し、その後入国管理局での審査を受ける必要があります。
留学ビザから技術・人文知識・国際業務への変更手続き
就労ビザの中で、「技術・人文知識・国際業務」ビザは最も一般的です。このビザは略して「技人国(ぎじんこく)」とも呼ばれており、技術者やオフィスワーカーなどが日本で働くために必要なビザです。
出入国管理庁によると、このビザを持っていると、以下のような技術や人文知識を活かした職種や国際業務に従事することが可能です。
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動
出入国在留管理庁:在留資格「技術・人文知識・国際業務」 より
「技術・人文知識・国際業務」ビザは、機械工学の技術者、システムエンジニア、通訳、企画・営業・経理などの事務職、デザイナー、民間企業の語学教師といったさまざまな職種を対象としています。
留学ビザからこのビザへの変更には、留学生が学んできた知識や経験が就労先で具体的にどのように活かされるかが重要な要件となります。そのため、単純労働はこのビザの対象外とされています。
企業は外国人留学生を雇用する際に、「労働条件通知書」や「雇用契約書」を用意する必要があります。一方、留学生は「卒業証明書」などの書類を準備する必要があります。企業の規模によって必要な書類が異なるため、留学生の採用を検討している企業は、早めに必要な書類の準備を始めることをおすすめします。
留学ビザから特定技能へ変更
留学生が日本で就労するためのもう一つの一般的なビザが「特定技能」です。このビザは2019年4月に新設されたもので、労働力不足が問題となっている特定の産業分野での労働を支援する目的で導入されました。
「特定技能」ビザが認められている産業分野は以下の12分野です。
- 介護
- ビルクリーニング業
- 素形材産業・産業機械・電気電子情報関連製造業(2022年に統合)
- 建設業
- 造船・舶用工業
- 自動車整備業
- 航空業
- 宿泊業
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
また、「特定技能」には、1号と2号の2種類があります。
特定技能1号は、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。
特定技能2号は、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。
特定技能2号については2022年以前は「建設」と「造船・舶用工業」の2分野しかありませんでしたが、2023年より「介護」分野を除く11分野に対象が拡大しました。介護分野については在留資格「介護」などの別の移行先があることから2号の創設は見送られています。
「特定技能」ビザは、「技術・人文知識・国際業務」ビザと異なり、学歴と業務内容の関連性を求められません。
しかし、このビザを取得するためには、特定の試験に合格して、就労に必要な技術や知識を持っていることを証明する必要があります。さらに、日本語能力も試験で一定の成績を得る必要があります。
特定技能ビザに関連する手続きや必要書類は複雑ですので、特定技能も技術・人文知識・国際業務と同様に、留学生と企業の両方にとって、事前の準備を早めに始めることが重要です。
外国人留学生を新卒採用する手続きの流れ
多くの企業が留学生を採用する際に、優秀な人材をどのように集めるかについて悩みを抱えています。以下に、新卒の外国人留学生を効果的に採用するための具体的な手順を紹介します。
採用計画を立てる
外国人留学生を採用する際には、まず採用計画をしっかりと立てることが重要です。採用の目的やニーズを明確に定義し、どの国のどのようなスキルや背景を持つ留学生を求めているのかを決定します。
次に、留学生を募集する期間や求める応募資格を設定し、採用プロセス全体のタイムラインを計画します。これにより、効率的かつ効果的な採用活動が可能になります。
選考をおこなう
選考プロセスでは、応募書類の詳細な審査と面接を通じて、適切な留学生を選定します。
まず、応募書類を通じて候補者の英語スキル、学習目標、学業成績などを総合的に評価します。その後の面接では、候補者の適性や学習への姿勢をさらに深く探り、最も適した学生を選び出していきます。
在留資格の変更申請をする
外国人留学生が日本で正式に働くためには、適切な在留資格を取得する必要があります。
新卒の留学生が法的に日本に滞在できるようにするため、手続きの正確さが重要です。不備があると在留資格の取得ができないため、事前にしっかりと準備し、スムーズに許可が下りるように努めましょう。
在留資格の変更申請の大まかな流れは以下の通りです。
- 在留資格変更手続きの理解:会社だけに依存せず、自分自身でも在留資格の変更手続きについて理解することが重要です。
- 必要書類の準備:必要な書類は多いので、会社に早めに準備を依頼しましょう。
- 申請内容の確認:一度不許可になると、再申請が困難になることもあるため、申請内容を丁寧にチェックすることが大切です。
- 受付時期と早期申請:通常、卒業年の1月から(東京入国管理局の場合は12月から)申請の受け付けが始まります。4月からの就業を目指す場合は、この時期に申請を行うとよいでしょう。
これらの手順をしっかりと理解し、計画的に申請を進めることで、スムーズに在留資格の変更が行えます。
外国人雇用の届け出をする
外国人留学生を雇用する際は、雇用契約をしっかりと定め、その内容を契約書に記載して届出を行う必要があります。契約書には、雇用期間、給与、労働条件、勤務地などの詳細を含める必要があります。この手続きを通じて、雇用に関する法的な義務を遵守し、両者の権利を保護します。
社内教育を行う
留学生が正式に入社すると、彼らが新しい環境に適応するためには社内教育が必要です。この教育プログラムには、社内のルールや規則の説明、生活支援、オリエンテーションが含まれます。これらはすべて、新卒留学生がスムーズに日本での生活に馴染むために重要です。
外国人の雇用手続きに必要な準備資料
以下に、外国人の雇用手続きに必要となる代表的な準備資料をまとめました。
- 在留資格変更許可申請書
- パスポートおよび在留カード(在留カードとみなされる外国人登録証明書を含む)
- 履歴書
- 申請理由書(任意提出)
- 雇用契約書のコピー
- 会社の商業法人登記簿謄本および決算報告書(損益計算書)のコピー
- 会社案内(会社パンフでOK)
- 雇用理由書(会社が作成するもので、任意提出)
- 業証明書もしくは卒業見込証明書
場合によっては上記以外の書類の提出が求められるケースもあります。
外国人の雇用手続きを進める際のポイント
新卒の外国人留学生を採用する場合、ビザ変更申請は例年12月ごろから申請可能です。特に都市部(東京、名古屋、大阪など)の場合は、審査時間が長めなので、できる限り早めに提出しておきましょう。
また、申請時点では卒業見込証明書を提出し、許可見込みとなったタイミングで卒業式以降に新しい在留カードが受け取り可能となります。その際に、卒業証明書もしくは卒業証書を持参する必要がある点も留意しておきましょう。
そのほか、審査が長引いたり、途中で追加書類の提出を要求されたりすることもあり、予定通りに許可とならなければ4月入社に間に合わなくなります。そのため、早めの準備、事前にしっかり書類を揃えることが重要です。
終わりに
新型コロナウイルスの収束に伴い、経済活動のグローバル化と国際交流が再び活発になることが期待されます。この動向に対応するため、多くの企業が新卒の外国人留学生を正社員として採用する傾向が強まるでしょう。
雇用には様々な複雑な規則や手続きが関わってくるため、これらをしっかりと理解し、準備を整えておくことが、迅速に対応できるようになるために重要です。
とはいえ、実際には採用担当者ご自身では判断がつきにくいことも多いので、行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。
「技術・人文知識・国際業務」をはじめ、新卒の外国人留学生が日本企業として働くための在留資格の取得を考えている外国人の方で「自社のケースでは、どの在留資格を選び、どのような手続き、書類が求められるのか分からない」といったお悩みを抱えている場合には、お気軽に「しらき行政書士事務所」までお問い合わせください。