日本で就職を目指す留学生は多いですが、残念ながら卒業までに就職が決まらず、帰国しなければならない留学生も少なくありません。
文部科学省の資料によると、外国人留学生の就職者数は全体の約55%を占めており、近年増加しているものの、各年度に大学・大学院を卒業・修了した外国人留学生のうち、日本国内で就職した外国人留学生の占める割合は3~4割ほどに留まっている状況がうかがえます。
ただし、卒業後にすぐに就職が決まらなかった留学生でも、特定活動ビザ(通称:就活ビザ)を取得すれば、卒業後1年間、アルバイトをしながら引き続き就職活動を行うことができます。
そこで本記事では、卒業後も日本で就職活動を続けたい留学生のために、特定活動(就活ビザ)の取得要件や準備しなければならない書類、申請にあたって注意すべき点など解説します。特定活動(就活ビザ)を取得して、日本での就職を目指しましょう。
目次
特定活動(就活ビザ)とは
特定活動(就活ビザ)は、日本の大学などを卒業した後でまだ就職が決まっていない人を対象に、最大で1年間の就職活動を許可する在留資格です。このビザは最初に半年間与えられ、条件を満たせばもう半年間更新することができます。
「特定活動」とは、法務大臣が特定の外国人の活動を個別に認めるもので、外交官の家事使用人、ワーキングホリデー参加者、経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師や介護福祉士候補者などが含まれます。
一般的に新しい在留資格を設ける場合は国会での討論が必要ですが、「特定活動」の場合は法務大臣の判断で設定されます。
この在留資格の期間は5年、3年、1年、6ヶ月、3ヶ月または法務大臣が指定する期間(5年を超えない範囲)ですが、就活ビザの場合は特に最大1年間(半年ごとの更新可能)と限定されています。
特定活動(就活ビザ)の取得要件
留学ビザから就職活動ビザへの変更には、以下の5つの条件をクリアする必要があります。
- 推薦状の取得:卒業した教育機関から推薦状をもらうことができる
- 生活費の確保:就職活動期間中の生活費がしっかりと確保されている
- 卒業資格:大学院、大学、短期大学、専門学校のいずれかの卒業生である
- 就職活動の継続:卒業前から就職活動を始めており、卒業後も活動を続ける意志がある
- 専攻との関連性:学んだ専攻に関連する業種への就職活動である
- これらの要件を一つずつ詳しく見ていきましょう。
推薦状
学校は、成績や出席率、就職活動への取り組みといった行動基準に基づいて推薦状を発行します。
推薦状を得るための審査があり、その基準は学校によって異なるため要注意です。
必要な書類や基準の詳細は、出身校の担当窓口で確認しなければなりません。
特定活動ビザへの変更には、この推薦状が不可欠で、ビザ更新時にも新しい推薦状が求められます。
成績が不十分だったり、出席率が低かったりする場合、推薦状をもらえないことがあります。
また、一度就職した後に再び就職活動を行う場合、推薦状を発行しない学校もあります。このため、学生課や就職課に事前に確認しておくことが重要です。
特に重大な理由がなければ、推薦状がないと、他の条件を満たしていても特定活動ビザを取得することはできません。
生活費の確保
特定活動ビザで日本で就職活動をする間、生活費が確保されていることも必要です。
これを証明するためには、預金通帳などを使って自身が生活費用やその他の経費を支払う能力があることを示さなければなりません。
もし留学生以外の人、例えば両親が経費を負担する場合は、その人たちの支払い能力を証明する文書(例:預金通帳)と共に、彼らがなぜ生活費を支払うのかについての説明文も提出する必要があります。
学歴
学歴としては、日本の大学院・大学・短大・専門学校の卒業が求められます。これには、日本語学校および聴講生は該当しません。
就職活動の実態
就職活動をしていたことの証明として、就活セミナーの資料、オンラインでの応募状況、企業説明会で受け取ったパンフレット、企業とのメール交換記録などが必要です。
これらの資料を通じて、積極的に就職活動を行っていたことを示すことが求められます。
適正な職種への就職活動
技術・人文知識・国際業務ビザで働ける職種に就職活動をする際は、職種が自分の学んだ専門分野に関連している必要があります。
例えば、理系の学部を卒業した人が、その専門とは異なる分野であるデザイナーを目指して広告会社に応募することは認められていません。
特定活動(就活ビザ)の申請に必要な書類
ここでは一例として、日本の大学を卒業した後に必要となる主な書類を提示します。
- 在留資格変更許可申請書: 1部
- 写真: 縦4cm×横3cm、1枚
- パスポートおよび在留カード: 提示が必要
- 経済的支援能力を示す文書: 送金証明書や通帳のコピーなど、必要に応じて
- 卒業証明書: 卒業した大学から発行されたもの、1部
- 推薦状: 卒業した大学からの就職活動継続のための推薦状、1部
- 就職活動の証明資料: エントリーシートや応募企業とのやり取りを示すメールなど、必要に応じて
ただし、これらは申請を受け付けるために必要な最低限の書類であり、これだけで許可が下りるとは限りません。
許可を得る可能性を高めるために、個々の状況に応じて追加で必要な書類や提出すべきでない書類を判断し、最適な申請をサポートしています。
書類の提出場所と提出期限
申請書類の提出先は、留学生が住んでいる地域を担当する地方出入国在留管理局やその出張所です。提出する期限は、留学ビザの在留期間の満了日です。
留学ビザの期限が切れた後の就職活動ビザの申請は不可能です。ビザの有効期限が1日でも過ぎると、不法残留と見なされ、退去強制手続きの対象になることがあります。
退去強制された場合、原則として5年間、最長で10年間日本への入国が禁止されます。そのため、ビザの有効期限内に在留資格変更の申請を行うことが非常に重要です。
特定活動(就活ビザ)を申請する際の注意点
特定活動(就活ビザ)の申請が必ずしも許可されるわけではありません。特に、以下のような状況の場合、ビザの変更が認められない可能性が高いので注意が必要です。
- 卒業後に初めて就職活動を開始した場合
- 学業の成績や出席率が不十分な場合
- 入国管理局が定める許可時間以上にアルバイトをしていた場合
また、日本の大学や専門学校を卒業して在留期限に余裕がある場合でも、「留学」という在留資格のままでの就職活動継続は許可されていません。そのため、卒業時に就職が決まっていない場合は、特定活動ビザへの変更申請を行う必要があります。
就職先が決まった場合の特定活動(就活ビザ)の取り扱い方
卒業後に特定活動で就職活動を継続し、その結果として就職先が決まった場合は、以下のような方法で在留資格の変更を行います。
就労できる在留資格に変更する
就職が決定し、仕事を始める場合、現在持っている「特定活動」ビザから「就労ビザ」への在留資格変更が必要になります。
就労ビザの取得が完了するまでは、原則として新しい就職先での勤務は認められていません。
別の特定活動に在留資格を変更する
もし就職先からの内定を受けて、例えば翌年の4月1日に入社予定であれば、特定活動ビザへの在留資格変更が必要です。
現在の特定活動ビザは就職活動専用であるため、内定が決まり入社までの期間は、新しい特定活動ビザに変更する必要があります。
例えば、9月に大学を卒業し、その後翌年4月1日に入社する予定の留学生は、卒業後も日本に滞在するためには、留学ビザから特定活動ビザへの変更が必要です。
この変更は、内定を受けてから1年以内、かつ卒業後1年6ヶ月以内に入社する場合に限ります。
就労ビザの取得に必要な書類も出入国在留管理局に提出することになり、就労ビザの取得可能性についても審査されます。
内定先からは、内定者と定期的に連絡を取り合うこと、内定を取り消す場合は出入国在留管理局に通知することを約束する誓約書の提出が求められます。
特定活動(就活ビザ)に関してよくある質問
最後に、特定活動(就活ビザ)に関してよくある質問と回答をまとめました。
就活ビザで資格外活動(アルバイト)はできる?
就活ビザを持つ外国人は、生計を支えるために資格外活動の許可を得ることで週に最大28時間までアルバイトが可能です。
ただし、留学生が利用できる長期休暇中の週40時間までのアルバイトは認められていませんので、この点は注意が必要です。
さらに、就職活動の一環であるインターンシップに参加する場合も、週28時間を超える活動については資格外活動の許可を申請することができます。
日本の日本語学校の留学生でも特定活動(就活ビザ)を取得できる?
日本の日本語学校に留学中の外国人は、通常、卒業後に直接就職活動用の「特定活動」ビザに変更することは認められていません。
しかし、2021年9月27日からの新しい規定により、海外の大学を卒業後、日本の日本語教育機関に通っている留学生が一定の条件を満たす場合、卒業後に「特定活動」ビザ(最初は6ヶ月)への変更が可能になりました。
このビザは、条件を満たしていれば1回に限り更新が認められることもありますが、更新によって必ず追加の6ヶ月を保証されるわけではありません。
卒業した学校の推薦状の発行基準はなに?
推薦状を発行する基準は学校によって異なります。たとえば、成績が不十分だったり、出席率が低かったり、アルバイトの時間制限を守っていなかったりすると、学校から推薦状を受け取ることが難しくなるかもしれません。
問題を避けるためには、勉強に励み、学校のルールを守ることが大切です。不安がある場合は、自分が通う学校のキャリアセンターや就職支援部門に相談してみましょう。
終わりに
多くの留学生は日本で就職を望んでいますが、卒業までに就職が決まるのは少数派です。それでも、卒業後に日本で就職活動を続けることができれば、成功のチャンスはずっと増えるでしょう。
「特定活動(就活ビザ)」は、他のビザに比べて比較的柔軟な活動が可能な在留資格ですが、その自由度の高さから複雑な側面もあります。
基本的なビザ申請の理解を深め、適切なタイミングで申請する事を心掛けましょう。