特定活動は、就労系在留資格のなかでもやや特殊なカテゴリで、活動内容が一律ではなく個別に指定されるため、同じ「特定活動」でも内容や条件が大きく異なります。
例えば、「特定活動(46号)」と「特定活動(9号)」では、認められる就労範囲や在留期限が異なります。
その判断材料となるのが、指定書(在留資格認定証明書や在留カードに付随する文書)です。指定書をきちんと理解しないまま雇用を進めると、違法就労や在留資格違反につながる可能性もあるため、注意が必要です。
本記事では、「特定活動の指定書」とは何か、どのような種類や読み方があるのかを、採用実務に役立つ視点からわかりやすく解説します。採用ミスマッチや法令違反を防ぎ、外国人材と安心して働ける体制づくりを目指す企業担当者の方にとって、必読の内容です。
目次
特定活動と指定書の基礎知識
まずは、特定活動の外国人の採用を検討している企業担当者の方が知っておくべき基礎知識をお伝えします。
特定活動とは
特定活動ビザは、既存の在留資格のいずれにも該当しない外国人が、特定の活動を行うために法務大臣の裁量で個別に認められる在留資格です。
現在、法務大臣の告示により定められている特定活動の種類は全46種類あり、内容は日本や国際情勢の変化に応じて柔軟に見直されています。そのため、過去に存在した活動でも現在は認められていないものもあります。
厚生労働省の統計によれば、特定活動ビザを持つ外国人労働者は年々増加傾向にあります。2018年には35,615人だったのに対し、2024年には85,686人まで増加しています。このように、特定活動は外国人の就労の受け皿として、重要な役割を担いつつあります。
他の在留資格では条件を満たさない場合でも、特定活動に該当するケースがあるため、採用を検討している企業担当者は一度内容を確認してみることをおすすめします。多様な活動内容が設定されているため、自社のニーズに合致するものが見つかる可能性があります。
参考:厚生労働省「別添2「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和6年10月末時点)」
特定活動における指定書とは
特定活動ビザにおける指定書とは、その外国人が日本国内でどのような活動を行うことが許可されているかを明確に記した文書です。
在留資格「特定活動」は一律の活動内容が定められているわけではなく、個々のケースに応じて活動範囲が決定されるため、この指定書は極めて重要な役割を持ちます。
特定活動ビザを持つ外国人が従事できる仕事の内容は、すべてこの指定書に記載されています。企業が記載内容と異なる業務を任せてしまうと、在留資格違反にあたる恐れがあるため、厳重な注意が必要です。
したがって、特定活動ビザを持つ外国人を採用する際には、必ず指定書の記載内容を事前に確認し、自社の業務内容と合致しているかどうかを慎重にチェックすることが求められます。企業側には、指定された活動内容に従って適正に管理・運用する責任があります。
特定活動における指定書の種類
特定活動の在留資格には、活動の目的や条件に応じてさまざまな種類が存在します。例えば、ワーキングホリデー制度の利用者や帰国が困難な事情を抱えた方、または難民認定を申請中の外国人など、それぞれに異なる条件と内容が定められています。
これらの活動内容はすべて指定書に記載されており、雇用する際にはその内容を正確に理解しておくことが重要です。以下では、代表的な特定活動の在留資格に関する指定書の種類と、それぞれの特徴について詳しく説明します。
特定活動(ワーキングホリデー)
ワーキングホリデーは、休暇や観光を目的として日本に滞在する外国人が、滞在資金を補うために一定の範囲で働くことを認められる在留資格です。滞在期間は6カ月または1年間とされており、延長は基本的にできませんが、その期間内であれば就労が可能です。
就労可能な範囲は指定書に明記されており、たとえば以下のような文言が記載されています。
一定期間の休暇・旅行に必要な資金を補うため、必要な報酬を得る範囲での就労が認められる。ただし、風俗営業等の従事は除く
特定活動(帰国困難者)
特定活動(帰国困難者)とは、留学生や技能実習生などがやむを得ずすぐに帰国できない状況で、一時的に認められる在留資格です。帰国までの準備期間中に限り、日本に滞在することが可能となります。
この在留資格には「就労可能な場合」と「就労が認められない場合」の2種類があり、どちらに該当するかは発行される指定書によって確認できます。指定書には、もともと保有していた在留資格や、出国までに許可される労働条件が具体的に記載されます。
例えば、次のような記述が見られることがあります。
【留学】または【技能実習】などの在留資格を有していた者が、帰国準備のために日本に滞在し、1週間あたり28時間以内の範囲で報酬を得る活動に従事することは可能。ただし、風俗営業等への従事は不可。
特定活動(難民認定申請中)
特定活動(難民認定申請中)は、母国で迫害の危険がある、または戦争や深刻な人権侵害から逃れて日本に保護を求めた外国人に対して発行される在留資格です。この在留資格は、難民認定の審査が完了するまでの間、日本に滞在することを認めるものです。
この在留資格には、「就労が可能な場合」と「就労が認められていない場合」の2パターンがあり、どちらに該当するかは在留カードや指定書によって確認する必要があります。
指定書には、例えば次のような記載があります。
現在、難民認定申請または審査請求中のため、日本国内において報酬を得る活動が可能。ただし、風俗営業などの業種には従事できない。
告示外特定活動(就職活動中)
告示外特定活動(就職活動中)の在留資格を持つ外国人は、基本的に就労することはできません。
指定書には、以下のように記載されています。
就職活動およびその活動に関連する日常的な行動(収入を得る事業の運営や報酬を受け取る活動は除く)
ただし、「資格外活動許可」を取得している場合は、週28時間以内の就労が可能です。この場合、風俗営業などの特定の業種を除き、就労することができます。就労の可否については、在留カード裏面の資格外活動欄の確認をしておくことが重要です。
特定活動46号(留学生)
特定活動46号(留学生)は、日本語能力が高い留学生に付与される在留資格で、「技術・人文知識・国際業務」と比べて、より幅広い業務に従事できるのが特徴です。
ただし、就労可能な企業名や勤務地は、指定書に明記されており、その範囲外での就労は認められていません。あらかじめ許可された職場でのみ働くことが前提となります。
さらに、転職を希望する場合は、その都度「在留資格変更許可申請」を行う必要があるため、自由に職場を変えられるわけではない点にも注意が必要です。
参考:出入国在留管理庁「留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学等卒業者)についてのガイドライン」
特定活動9号(インターンシップ)
特定活動9号(インターンシップ)は、海外の大学に在籍する学生が日本企業で職業体験を行う際に付与される在留資格です。
指定書には在留可能な期間が明記されており、例えば以下のような内容が記載されます。
外国の大学の学生が、日本の企業との契約に基づいて報酬を受ける活動を行うことができる。ただし、その期間は1年を超えず、かつ大学の在学期間の2分の1を超えないものとする。
この在留資格を持つ外国人をインターンシップとして受け入れる場合は、指定書に記載された条件を正しく理解し、受け入れ期間が適切かどうかを必ず確認することが大切です。
参考:出入国在留管理庁「在留資格「特定活動」(インターンシップ・サマージョブ・国際文化交流)」
特定活動の外国人を雇用する際のチェックポイント
特定活動の在留資格を持つ外国人を雇用する際、企業側がまず行うべきは在留カードと指定書の確認です。これは、「対象者が本当に就労可能かどうか」「働ける時間や職種に制限があるか」を見極めるために非常に重要な手続きです。
具体的に、企業担当者が確認すべき項目を以下で整理してご紹介します。
在留カードの確認方法
在留資格「特定活動」を持つ外国人を採用する際には、まず在留カードの次の2つの項目を必ず確認することが重要です。
- 【在留資格】欄に「特定活動」と記載されているかどうか
- 【就労制限の有無】欄に「指定書により指定された就労活動のみ可」と明記されているかどうか
この2点を確認することで、その外国人が「特定活動」の在留資格を保有しており、就労できる内容が明確に制限されていることがわかります。
指定書の確認方法
在留資格「特定活動」を持つ外国人を雇用する際には、指定書の内容確認が非常に重要です。以下のポイントをしっかり押さえて確認を行いましょう。
指定書と在留カードの記載内容を照らし合わせる
まず、外国人のパスポートに指定書が添付されているかを確認してください。指定書に記載されている「氏名」や「国籍・地域」の情報が、在留カードに記載された内容と一致していることが必要です。
そのうえで、指定書の中段にある「許可された活動内容」の欄を確認しましょう。ここには、当該外国人が日本で従事できる業務内容が明記されています。雇用を検討している業務内容が、この指定書に記載された範囲内に含まれているかを必ず確認してください。
指定書の押印日と在留カードの発行日の整合性を確認する
指定書の下部には、入国管理局のスタンプ(押印)と日付が記されています。この日付が、最新の在留カードの発行日と一致しているか、もしくはそれに近いものであることを確認しましょう。情報に相違がある場合、古い指定書の可能性もあるため、注意が必要です。
これらの項目を丁寧に確認することで、特定活動の在留資格を持つ外国人が、法的に問題なく雇用できるかどうかを判断できます。雇用前に必ずチェックを行い、トラブルを未然に防ぐことが大切です。
よくある質問
最後に、特定活動における指定書の確認に関してよくある質問と回答をまとめました。
指定書に有効期限はある?
指定書そのものには有効期限は設定されていません。たとえ在留資格を更新した場合でも、勤務地や仕事内容に変更がなければ、新たな指定書は発行されず、パスポートに添付された既存の指定書が引き続き有効となります。
指定書が確認できない場合どうする?
在留資格の変更をオンラインで行った場合、指定書が別送されるケースもあり、パスポートに貼付されていないことがあります。
そのような場合には、外国人本人に「就労資格証明書」を提出してもらうことで、許可されている活動内容を確認できます。雇用前にきちんと確認することが重要です。
指定書は再発行してもらえる?
指定書を紛失したり、破れて使えなくなってしまったりした場合でも、再発行の申請が可能です。
2025年3月時点で、指定書の再発行専用の申請書式は用意されていません。そのため、以下の必要書類を持参のうえ、お住まいの地域を管轄する出入国在留管理局に直接申し出てください。
- パスポート
- 在留カード
- 紛失届(提出できれば望ましい)
- 委任状(申請を行政書士など第三者に依頼する場合)
なお、状況によっては、これら以外の書類の提出を求められることもありますので、事前に管轄の入管へ問い合わせておくと安心です。
終わりに
特定活動は在留資格の中でもバリエーションが多く、個別指定の内容が多岐にわたるため、在留カードや資格名称だけでは就労の可否や制限を判断できません。企業が誤って指定内容と異なる業務に従事させてしまうと、外国人本人だけでなく、企業側も法的リスクを負います。
特定活動の指定書は、外国人材を雇用する企業にとって採用判断の「取扱説明書」のようなものです。内容を丁寧に読み解き、制度と実務を正しくつなぐことで、トラブルを未然に防ぎ、外国人材と企業の双方にとって安心・納得のいく雇用関係を築けます。
外国人の採用前にしっかりと確認し、内容に合った就労機会を提供しましょう。
しらき行政書士事務所では、外国人に必要な在留資格の申請手続きに関して、初回相談無料で対応しております。
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