帰化とは、日本国籍を取得することで、在留資格の一つである永住許可申請とは根本的に異なります。帰化許可申請は日本国籍取得に関わることなので、審査は厳しく、必要種類も膨大になりがちです。
この記事では、帰化許可申請の概要について紹介していきます。
目次
帰化とは?
長年、日本に居住し、日本で仕事をしたり会社を経営している外国人や、父母が外国人でも自分自身は日本で生まれ育った方、日本人の配偶者になった外国人が、さらに安定した在留資格を求める場合に選択肢に挙がるのが帰化許可申請です。
国籍法4条1項に、「日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によって、日本の国籍を取得することができる。」と定められているとおり、帰化とは現在の外国国籍から離脱し、日本国籍を取得し、完全に日本人になることを意味します。
帰化と永住の違い
帰化と共に安定した在留資格を得るために選択肢の一つとして挙がるのが永住です。
永住は、出入国管理及び難民認定法22条に規定されている外国人の在留資格の一つです。日本での生活になじんでいる外国人が、外国国籍を保ったまま、安定した在留資格を得たい場合に永住の在留資格を申請します。
帰化と永住の大きな違いは、帰化が日本国籍取得を目指す手続きなのに対して、永住は外国国籍のまま安定した在留資格取得を目指すという点です。
永住の在留資格を取得した場合、在留活動の制限はなくなりますが、出入国管理及び難民認定法24条に規定されている退去強制事由に該当してしまった場合は、日本からの退去を強制されてしまいます。
もちろん、出入国に際しては、外国人登録、再入国許可手続きなどが必要になる点に変わりはありません。
また、参政権は認められておらず、選挙することも立候補することもできません。
帰化と永住のどちらを申請すべきか
帰化と永住のどちらを申請すべきか迷う方もいらっしゃると思いますが、現在の国籍を失ってもよいのかという点から判断しましょう。
国籍を取得したり離脱する手続きは簡単なものではありません。国によっては、いったん離脱した国籍を再取得することが事実上不可能となる場合もあります。
現在の本国に戻る予定がなく、本国で適用される様々な制度を利用するつもりもなく、終生日本で日本人として暮らし続ける覚悟があるならば、帰化申請を選択するとよいでしょう。
一方、本国に戻る予定がある方や日本と本国を行き来することが多い方は、永住の在留資格の申請を選択する事をお勧めします。
帰化許可申請をするための条件
日本で帰化をするには、法務大臣の許可を得なければなりません。そのためには、国籍法5条に規定されている帰化の条件を満たす必要があります。
具体的には次のとおりです。
- 引き続き5年以上日本に住所を有すること。
- 18歳以上で本国法によって行為能力を有すること。
- 素行が善良であること。
- 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること。
- 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきこと。
- 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。
この帰化の条件には緩和規定もありますが、原則としてすべて満たすことが求められます。
緩和規定の例としては、日本国民の配偶者たる外国人で3年以上日本に住所を有していれば、帰化が認められるといったものがあります。日本で生まれた人、日本人の子、かつて日本人であった人も同じような緩和措置を受けることができます。
また、国籍法には規定されていませんが、日常生活に支障のない程度の日本語能力(会話及び読み書き)を有していることが求められています。法務局に出向いた際に、担当の職員と通訳なしで日本語での会話や書類の記入ができるレベル(小学3年生程度の日本語能力)は必要になると考えてください。
上記の条件は単純に満たしていればよいというものではありません。
例えば、住所条件は、単に日本に5年以上住んでいればよいというものではなく、留学生として来日後、日本で就職した場合なら、5年以上の期間のうち、3年以上は会社での勤務経験などの社会経験があることが望ましいとされています。
また、日本と海外の行き来が多い人の場合、1年間で100日以上海外に滞在していると、帰化は難しくなります。
また、素行が善良であることについては、日本で普通に生活していて、犯罪歴等がなければ問題ありませんが、犯罪を犯していなくても、日本人と同棲していて不倫関係にあるような場合は注意が必要です。
不倫は、公序良俗に反するため、素行が不良として帰化申請が不許可となってしまう可能性があるのです。帰化許可申請の過程で、自宅への訪問調査等が行われるため、同棲者がいる場合は、その人との関係が説明できるものでなければなりません。
このように、帰化許可申請は、単純に国籍法の条件を満たしていれば、許可が下りるというものではなく、様々な観点から審査が行われるため、帰化許可申請に先立って、法務局で相談することが非常に重要となります。
帰化許可申請の必要書類と申請先
帰化許可申請は、法務大臣に対して行いますが、具体的な申請方法は、帰化しようとする者の住所地を管轄する法務局または地方法務局に本人が出頭して書面で手続きする形になります。
帰化許可申請に必要な書類は申請者によって異なりますが、主に次のような書類が必要になります。
- 帰化許可申請書
- 親族の概要を記載した書類
- 自筆で記載した帰化の動機書
- 履歴書
- 宣誓書
- 生計の概要を記載した書類(事業を営んでいる場合は事業の概要)
- 収入を証明する書類(在勤、給与証明書等。事業を営んでいる場合は確定申告書、決算報告書、許認可証明書等も必要)
- 居宅、勤務先付近の略図
- 住民票の写し
- 国籍を証明する書類(本国の戸籍謄本などの身分関係を証する書類)
- 親族関係を証明する書類(家族の各種届出記載事項証明書)
- 納税を証明する書類(源泉徴収票、住民税、固定資産税などの納税が分かるもの)
- 本人や家族の写真
- 学歴や資格を証明する書類(卒業証明書、在学証明書、資格を証明する書類)
以上に挙げた書類が主なものになりますが、帰化許可申請に必要な書類は、申請者個人により大きく異なるため、事前に法務局に相談しながら用意するのが無難です。
また、いったん書類一式を提出した後でも、追加の書類の提出を求められることもあります。
帰化許可申請手続きの流れ
帰化許可申請の準備から申請書類の作成と提出、帰化許可までの流れを見ていきましょう。
1. 法務局又は地方法務局に相談する
帰化許可申請は、住所地を管轄する法務局又は地方法務局が窓口となっているので、相談することから始めましょう。相談する際は、予約が必要になるのが一般的です。混雑していることが多いため早めの予約が必要です。
窓口での相談では、帰化許可条件を満たしているかどうかの簡単な確認が行われます。満たしていると判断された場合は、必要種類の案内がありますから、よく話を聞きましょう。
帰化許可条件を満たしていないと判断された場合は、門前払いとなってしまうこともあります。
そのような場合は、帰化許可申請専門の行政書士に条件を満たすにはどうしたらよいのか相談するのも一つの方法です。
2. 帰化許可申請に必要な書類の収集と作成
法務局で案内された必要書類をそろえます。必要種類は多岐に渡るため、どのようにして揃えたらよいのか分からないとか、どのようなことを書いたらよいのか分からず、挫折してしまう方もいらっしゃいます。
そこで、まず書類を集める順番としては、一番手間と時間がかかる本国の書類から集める事をお勧めします。日本国内で取得できる書類はいつでも準備できますが、本国の書類はご本人が帰国した際など、取得できるタイミングが難しいからです。
3. 帰化申請書類を法務局に提出する
帰化申請書類がそろったら、法務局に提出します。書類提出時にもあらかじめ予約を取らなければならないこともあります。書類提出時は、法務局の担当者が確認しますが、書類が足りない場合は、追加の書類を用意するように求められます。
書類が受理されれば次の段階に進むことができます。
4. 法務局での面接を受ける
帰化申請書類が受理されてから、2〜3ヵ月後に面接の連絡が入ります。面接場所は法務局で、平日の時間帯に行われます。そのため、平日仕事をしている方は、職場に相談するなどして、時間を確保する必要があります。
面接で聞かれることは、書類を審査した担当者が疑問に感じたことが中心になります。
日本語でのコミュニケーションを行うことができ、話す内容が提出した書類と整合性が取れていれば、比較的短い時間で面接が終わります。
一方、職を転々としていて収入に不安がある方、借金が多く返済に不安がある方、税金の支払いに不安がある方、交通違反が多い方、過去に犯罪歴がある方等の場合は、面接で聞かれることも多く、時間も長くかかる傾向があります。
5. 法務局の調査
面接が終了した後は、法務局の担当者が、家庭訪問や職場訪問を行うことがあります。電話だけの調査で済むこともありますが、実際に訪問してくることもあります。
家庭訪問は、帰化申請者が実際に住所地で暮らしているのかどうかの確認のため、職場訪問も実際にその場所で働いているのかどうかの確認のために行われます。
6. 法務局から法務省への書類送付
法務局での書類審査、面接、訪問調査を終えて、担当者が要件を満たしていると判断した場合は、書類が法務省へ送られます。法務省でも、一定の審査が行われ、最終的な許可・不許可は法務大臣の判断によって行われることになっています。
7. 許可または不許可の決定
帰化申請が許可された場合は、法務局から連絡が入るので、指定された日時に法務局に赴いて、帰化に係る書類を受け取ります。また、官報に名前が掲載されるので、帰化が許可されたことを確認することができます。
帰化申請が不許可となった場合は、不許可の通知が届きます。
帰化申請の不許可処分に対しては不服申し立てを行う方法はなく、裁判所に不許可処分の取消訴訟を提起するしかありませんが、裁判を提起したとしても、不許可処分が覆されることはほとんどありません。
8. 帰化申請が不許可となった場合の対応
帰化申請が不許可となった場合は、裁判所に訴えを提起するよりも、帰化申請が不許可となった理由を探り、その状況を解消し、再度、帰化申請することが最も生産的な方法です。
帰化申請が不許可となった理由については、法務局の担当者も詳しく教えてくれるわけではありません。そもそも、許可または不許可の判断を行っているのは法務局の担当者ではないからです。
帰化許可申請の準備から帰化許可が下りるまでの期間
行政手続きには、標準処理期間といい、申請から実際に許可が下りるまでにかかる期間の目安が示されていることが多いですが、帰化許可申請については、標準処理期間が設定されていません。
そのため、帰化許可申請の書類が受理されても、許可が下りるまでどれくらいの時間がかかるのかは、はっきりとはわかりませんが、多くの場合は、1年近い時間がかかっています。
まとめ
日本国籍を取得するための帰化許可申請手続きの概要を紹介しました。
帰化許可申請では、書類の作成や必要書類をそろえるのが大変だったり、そもそも、帰化許可条件を満たしているのか分からず、困ってしまうこともあると思います。
そのような場合は、帰化許可申請専門の行政書士に相談することで、スムーズに帰化許可取得を目指すことができますので、お困りのことがあれば、ぜひ、ご相談ください。