出入国在留管理庁の令和5年10月13日の統計によると、日本に住む中国人は788,495人に上り、在留外国人の中で最も多い国籍となっています。この傾向から、今後も中国人との国際結婚が増加すると予想されます。
実際に、多くの方が中国人との国際結婚を検討しており、手続きの準備を進めている状況です。国際結婚に必要な書類や手続きの方法について疑問を持つ方も多く、これに関する相談件数が増えています。
そこで今回は、日本人と中国人の国際結婚手続きについて、「中国側で最初に届出を行うケース」と「日本側で最初に届出を行うケース」に分けてご説明します。中国・日本のどちらで先に国際結婚手続きを行うべきなのかについても紹介していますので、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
中国人との国際結婚に求められる手続き|中国側で最初に届出を行うケース
まずは、中国側で最初に届出を行うケースにおける中国人との国際結婚に求められる手続きについて、以下のステップに沿って説明します。
- 日本で必要な書類の準備
- 中国ビザ取得・中国への渡航
- 日本人の「婚姻要件具備証明書」取得
- 日本の外務省で「婚姻要件具備証明書」の認証
- 日本の中国大使館・領事館で「婚姻要件具備証明書」の認証
- 中国の婚姻登記処で「婚姻の登記申請」を行い「結婚証」を取得
- 日本の市区町村役場または中国の日本国大使館・領事館に「婚姻届」を提出
① 日本で必要な書類の準備
日本に居住している場合、国際結婚の手続きに必要な書類は国内で準備します。中国に居住している場合は、日本にいる親族に書類の準備を依頼すると手続きがスムーズに進むでしょう。もし親族が書類の準備を行うのが難しい場合は、書類を整えるために一時的に日本に帰国することを考慮しましょう。
② 中国ビザの取得・中国への渡航
以前は最大15日までの滞在であればビザが不要で「査証免除」の対象でしたが、2020年3月10日からこの措置は停止されています。そのため、現在は中国への訪問には必ずビザの取得が必要です。
2024年5月の時点で、「定住」や「交流・訪問・観察」など特定のカテゴリーについてはビザの申請が可能です。しかし、観光目的のビザ申請は許可されていません。ビザを申請する際には、訪問目的を明確にし、適切なカテゴリーを選択することが重要です。
③ 日本人の「婚姻要件具備証明書」の取得
日本人の「婚姻要件具備証明書」を取得します。取得方法は、下記の2パターンです。
- 日本の法務局で取得する
- 中国にある日本国大使館・領事館で取得する
日本の法務局で取得する場合は、「日本で必要な書類を準備する」段階で準備する必要があります。中国語への翻訳も必要になるため、注意しましょう。
④ 日本の外務省で「婚姻要件具備証明書」の認証
日本の法務局で「婚姻要件具備証明書」を取得した後、日本の外務省での公印確認が必要です。この手続きは「認証の申請」と「受領」という二段階に分かれており、外務省には二度訪れる必要があります。手続きには時間がかかることがあるため、余裕を持って認証を受けることをおすすめします。
⑤ 日本の中国大使館・領事館で「婚姻要件具備証明書」の認証
日本での手続きが完了した後、次に中国での手続きが必要です。これには、必要な書類を在中国の日本大使館や領事館に提出することが含まれます。
手続きを行う前に、事前予約が必要かどうかと手数料(現金のみ対応)について確認しておくことが重要です。また、「婚姻要件具備証明書」の認証は、通常、申請当日に交付されます。
⑥ 中国の婚姻登記処で「婚姻の登記申請」を行い「結婚証」を取得
次に、結婚証明書を取得するためには、中国人の配偶者が登録されている常住居民戸口簿に記載されている場所にある指定された婚姻登録所を訪れる必要があります。この手続きは、必要な書類を持参し、両当事者が共に出席して行います。
結婚証明書を取得した後、日本でのさらなる手続きやビザ申請のためには、「結婚公証書」の取得が必要です。これは中国人配偶者の居住地にある婚姻登録所で取り扱います。また、必要に応じて日本語訳された公証書を発行してもらえることがあるので、申請時に確認してみると良いでしょう。
⑦ 日本の市区町村役場または中国の日本国大使館・領事館に「婚姻届」を提出
日本への結婚報告を行うためには、「婚姻届」を日本国内で提出する必要があります。提出方法には以下の2つのパターンがあります。
- 日本国内にいる場合は、最寄りの市区町村役場に直接提出します。
- 中国に居住している場合は、最寄りの日本国大使館または領事館に提出します。
もし中国で一緒に暮らす予定がある場合は、在中国の日本国大使館・領事館での提出が便利です。日本に帰国して生活する予定がある場合は、市区町村役場での提出がスムーズです。
【参考】求められる書類
ここでは、中国側で最初に届出を行うケースにおける中国人との国際結婚の手続きで必要となる代表的な書類についてまとめました。
【婚姻要件具備証明書の申請で求められる書類等】
【 法務局で取得する場合 】
- 戸籍謄本
- 婚約者のパスポートのコピー
- 申請書(窓口での記入も可)
- 身分証明書(運転免許証等)
- 委任状(代理人による申請のみ)
- レターパックなど返送用封筒(返送先要記入)
【 在中国日大使館・領事館で取得する場合 】
- 申請書
- 戸籍謄本
- パスポート
- 居民身分証
- 居民戸口簿(現在,婚姻していないことが確認できるもの)
【日本の外務省で婚姻要件具備証明書の認証を受ける際に求められる書類等】
- 婚姻要件具備証明書
- 身分証明書(パスポート等)
【日本の中国大使館・領事館で婚姻要件具備証明書の認証を受ける際に求められる書類等】
- 婚姻要件具備証明書+コピー
- パスポート
- 公証認証申請表
【婚姻の登記申請で求められる書類等】
- 中国、日本の大使館、領事館から認証済みの婚姻具備証明書(中国語の訳文も必要)
- パスポート
- 居民身分証
- 居民戸口簿
【日本への婚姻届提出で求められる書類等】
- 婚姻届
- 戸籍謄本(本籍地以外で提出する場合)
- パスポート
- 結婚公証書(中国の公証処発行のもの。日本語訳文も必要)
- 国籍公証書(中国の公証処発行のもの。日本語訳文も必要)
なお、個々のケースによって必要な書類は異なるため、詳しく知りたい場合は届け先に問い合わせましょう。
中国人との国際結婚に求められる手続き|日本側で最初に届出を行うケース
続いて、日本側で最初に届出を行うケースにおける中国人との国際結婚に必要な手続きを解説します。
- 中国で手続きに必要な書類を準備
- 在日中国公館で「無配偶声明書」を取得
- 日本の市区町村役場に「婚姻届」を提出
- 日本の外務省・在日中国大使館にて「婚姻受理証明書」の認証
- 中国の戸籍所在地役場で中国人配偶者の婚姻状況欄を変更
なお、それぞれの段階で必要な書類に関しても、各ステップ説明後に取り上げていますのでご確認ください。
① 中国で手続きに必要な書類を準備
配偶者の居住場所に関係なく、中国人配偶者が必要な書類を準備することが重要です。配偶者が中国に居住している場合は、本人が現地で必要な書類を手配します。必要な書類は場所や状況によって異なることがあるので、日本人配偶者は事前にしっかりと確認しておくべきです。
配偶者が日本に居住している場合、中国人の親族に書類を準備してもらえば、中国への帰国なしに手続きを進めることができます。ただし、これは日本国内で全ての書類が準備できる場合に限ります。一部の書類が日本で準備できない場合は、中国での書類準備が必要になります。
② 在日中国公館で「無配偶声明書」を取得
在日中国公館で「無配偶声明書」を取得します。この「無配偶声明書」は、名称が異なるものの、機能としては「婚姻要件具備証明書」と同様です。
③ 日本の市区町村役場に「婚姻届」を提出
日本での結婚報告を行うために、最寄りの市区町村役場に「婚姻届」を提出します。手続きには、以前に取得した「無配偶声明書」も必要となりますので、提出時にはこの書類を忘れずに持参してください。
④ 日本の外務省・在日中国大使館にて「婚姻受理証明書」の認証
「婚姻受理証明書」を正式な書類として認めるためには、日本と中国の両国で認証を受ける必要があります。認証手続きの流れは以下の通りです。
- 日本の外務省で「婚姻受理証明書」に公印確認の手続きを行います
- 認証された証明書を在日中国大使館または領事館に持参し、さらなる認証手続きを行います
日本の外務省での公印確認は郵送でも可能ですが、この方法を選択すると手続きに10日から2週間ほどかかります。急ぎの場合は、直接外務省の窓口に行くことをおすすめします。
⑤ 中国の戸籍所在地役場で中国人配偶者の婚姻状況欄を変更
国際結婚を日本の方式で行った場合、中国でもその結婚は有効と認められますが、中国での公式な婚姻登録はされないため、「結婚証」は発行されません。この結果、中国での居民戸口簿(戸籍に相当)上では婚姻状況が「未婚」のままとなってしまいます。
日本では「既婚」と認識されていても、中国では「未婚」とされてしまうため、中国人配偶者の戸籍がある地域の派出所で居民戸口簿の婚姻状況を「未婚」から「既婚」に更新する手続きが必要です。この手続きを行うことで、中国での公的記録も更新されます。
【参考】求められる書類
ここでは、日本側で最初に届出を行うケースにおける中国人との国際結婚の手続きで必要となる代表的な書類についてまとめました。
【無配偶声明書の申請で求められる書類等】
- 運転免許証(裏表)のコピー:ない場合は住民票
- 無配偶声明書の申請書(大使館で記入)
- パスポート及び写真ページ部分のコピー
- 在留カード及び両面のコピー
- 居民身分証(中国で発行されるカードタイプの身分証明書)
- 短期滞在者の場合は,未婚声明公証書(中国の公証役場で今まで1度も結婚した経験がないことを公証してもらった書類)もしくは未再婚声明公証書
- 離婚証(※離婚歴があって離婚を民政局で行っている場合)
- 離婚調解書(※離婚歴があって離婚を裁判所で行っている場合)
【日本への婚姻届提出に求められる書類】
- 婚姻届
- 戸籍謄本 (本籍地以外で提出する場合)
- 本人確認書類(運転免許証等)
- 印鑑
- 無配偶声明書(日本語訳文も必要)
- 申述書
- 出生公証書(日本語訳文も必要)
- 在留カード(日本在住の場合)
- パスポート(日本語訳文も必要)
【婚姻受理証明書の認証手続きで求められる書類】
- 婚姻受理証明書
- 申請書(外務省の窓口または外務省のホームページからダウンロード)
- 本人確認書類(窓口申請の場合のみ):運転免許証・パスポート等
- 返送先を記入した封筒(切手貼付)
- レターパックなど(郵送申請の場合のみ)
【婚姻状況欄の変更に求められる書類】
- 婚姻受理証明書+婚姻受理証明書の中国語訳文
なお、個々のケースによって必要な書類は異なるため、詳しく知りたい場合は届け先に問い合わせましょう。
中国・日本のどちらで先に国際結婚手続きを行うべき?
中国人と日本人が国際結婚をする場合、どちらの国で先に手続きを行うことも許されています。現在の居住状況に応じて、より手続きがスムーズに進む国で始めることをおすすめします。
特に、相手が中国人で既に日本に在留しており、何らかの在留資格を持っている場合は、日本での手続きから始める「日本方式」の方が手続きがスムーズに進むことが多いです。
婚姻成立後に配偶者ビザを申請する場合、通常2~3ヶ月程度の時間が必要です。そのため、在留資格の有効期間を考慮して計画的に申請することが重要です。
もし中国政府発行の「結婚証」を受け取りたい場合は、中国式の結婚手続きを行う必要があります。この「結婚証」は、中国方式での結婚手続きを完了した際にのみ発行されます。
日本人と中国人が婚姻を成立させた後、必要な書類を準備し、中国人配偶者の戸籍所在地にある指定された婚姻登記機関で登記を行うことで、「結婚証」を正式に受領することができます。
中国人との国際結婚手続きに関する注意点
中国人との国際結婚手続きに関する注意点として、以下の4つを取り上げます。
- 婚姻可能な年齢
- 再婚禁止期間
- 独身証明書での代用はできない
- 各書類の中国語・日本語翻訳が必要
それぞれ順番に解説しますので、手続きを進める前に確認しておきましょう。
婚姻可能な年齢
中国では、婚姻可能な年齢は男性が満22歳以上、女性が満20歳以上ですが、日本では男女ともに18歳以上から結婚が可能です。日中の国際結婚を行う場合、日本人も中国の婚姻法の年齢要件を満たす必要があります。
しかし、日本に居住している中国人は、在日中国公館や領事館で「中国法定婚姻年齢に満たない者の婚姻要件具備証明書申請」を行うことができます。
これにより、中国の婚姻可能年齢に達していなくても、日本の市区町村役場での手続きを通じて婚姻が成立する可能性があります。
再婚禁止期間
中国の法律では、再婚に関する禁止期間が設けられていませんが、日本で婚姻手続きを行う場合は日本の民法に基づく再婚禁止期間が適用されます。
日本では、前婚が解消された日から100日経過する必要があります。ただし、中国人女性が妊娠していないことを示す医師の診断書を提出すれば、100日を待たずに再婚することが可能です。この例外を利用することで、規定の期間内でも婚姻手続きを進めることができます。
独身証明書での代用はできない
「婚姻要件具備証明書」とは異なり、「独身証明書」は単に独身であることを示す書類であり、結婚するために必要な条件を満たしていることを証明するものではありません。このため、独身証明書には結婚相手の氏名や国籍、生年月日などの詳細は記載されていません。
同様に、戸籍謄本は独身であることを証明できますが、結婚の要件を満たしているかどうかについては記載されていないため、婚姻要件具備証明書の代替としては不十分です。したがって、国際結婚など特定の手続きには、適切な証明書の取得が必要です。
各書類の中国語・日本語翻訳が必要
日本の書類を中国で提出する場合は、中国語に翻訳が必要です。逆に、中国の書類を日本で提出する場合は、日本語の翻訳が求められます。
この翻訳作業は、言語に堪能な場合には自分で行うことができます。翻訳が難しい場合は、翻訳会社を利用したり、言語が理解できる友人や知人に依頼することも一つの方法です。
また、国際結婚の手続きを行政書士に依頼する際には、翻訳も含めてサポートを受けられることが多いです。
国際結婚手続き後のビザ取得について
国際結婚の手続きが完了した後、ビザの取得が次のステップとなります。配偶者ビザを取得することによって、日本で配偶者と共に生活することが可能になります。
もし中国人配偶者が既に異なる在留資格で日本に滞在している場合でも、結婚後には配偶者ビザへの切り替えが必要となります。このビザの取得や更新により、日本での長期滞在が確実になります。
配偶者ビザの申請に必要な書類
中国人がすでに日本に滞在している場合は中国人本人が申請し、日本に滞在していない場合には日本人が代理申請します。申請場所は、居住予定地の地方出入国在留管理局または出張所です。
配偶者ビザの申請に必要な書類は次の通りです。
- 在留資格認定証明書交付申請書:1通
- 中国人の写真(縦4cm×横3cm)※申請前3ヶ月以内に正面から撮影されたもの:1枚
- 日本人の戸籍謄本(全部事項証明書):1通
- 中国人の中国で発行された結婚証明書:1通
- 日本人の住民税の課税(または非課税)証明書及び納税証明書:各1通
- 日本人による身元保証書:1通
- 日本人の世帯連記式の住民票 ※発行から3ヶ月以内のもの:1通
- 質問書:1通
- 夫婦で写っているスナップ写真:2~3枚
- 返信用切手を貼り付けた返信用封筒:1通
必要書類について詳しくは、届出先に問い合わせましょう。
配偶者ビザの取得難易度
配偶者ビザを取得する際は、提出する質問書や補足資料(理由書、交際経歴説明書など)を通じて、関係が正当で真剣であることを証明することが非常に重要です。特に、年齢差が大きい場合や出会いが接待飲食店(パブやスナックなど)であった場合には、これらの書類をもって信頼性を高める必要があります。
配偶者ビザには就労やその他の活動に対する制限がないため、偽装結婚を企てる人もいます。これにより、審査が一層厳格化しており、正当な関係から生まれた結婚であっても、その信ぴょう性をしっかりと主張する必要があるのです。
質問書だけでは交際の全経緯を詳細に説明することが難しいため、理由書で詳細を補足することが必要です。理由書は、知り合った経緯から結婚に至るまでの過程を段階的に説明する文書です。
出会った時期、場所、具体的な状況、関係が深まった具体的なきっかけなどを詳しく記述しましょう。この際、感情的な表現よりも具体的な事実を淡々と書き、審査官が疑問を持たないように明確にすることが重要です。
配偶者ビザの取得は結婚手続きよりも複雑で難易度が高いため、自分一人で手続きを進めるのが困難だと感じる場合は、外国人の在留資格に精通した行政書士に相談することを推奨します。
終わりに
配偶者ビザの申請では、結婚が偽装でなく真実であることと、婚姻が安定しており継続する見込みがあることを証明する必要があります。配偶者ビザの審査は厳格で、不十分な準備が原因で申請が不許可になることも少なくありません。
出入国在留管理庁は、入国管理法や関連通達、内規に基づいて審査を行います。このため、配偶者ビザの申請に精通した行政書士事務所は法令を熟知しており、申請書類を適切に準備することができるため、自分で申請するよりも許可される確率が高くなります。
「必要な書類が分からない」「中国に何度も渡航する余裕もない」「多忙で外務省、出入国在留管理局に出向く暇がない」といったお悩みを抱えている場合には、お気軽に「しらき行政書士事務所」までお問い合わせください。