最近、ビザの申請がオンラインで行えるようになったと聞きました。オンライン手続きにはどんなメリットがあるのでしょうか?
2022年3月から、マイナンバーカードを持つ外国人は、自宅からオンラインで在留資格の申請ができるようになりました。これにより、企業が行う申請手続きの手間も省けます。
外国人本人にとって申請が簡単になるのはもちろんのこと、外国人労働者を雇用する企業にとっても多くの利点があります。しかし、具体的な利点がイメージできない企業担当者も多いかもしれません。
そこで、本記事では、ビザのオンライン申請について、外国人本人と企業側の視点から、メリットや注意点、申請方法を分かりやすく解説します。
目次
ビザのオンライン申請とは
ビザのオンライン申請とは、外国に入国するためのビザをインターネットを通じて申請する方法です。従来の紙ベースの申請と比較して、手続きが簡略化され、申請者にとって時間と手間が大幅に削減されます。
日本は経済大国として多くの外国人観光客やビジネス関係者を迎え入れており、その数は年々増加しています。2019年には訪日外国人数が約3,188万人に達し、国際交流がますます活発になっています。このような状況下で、ビザ申請手続きの効率化と迅速化が求められるようになりました。
インターネットとデジタル技術の進展により、世界各国でオンラインサービスが普及し始めました。日本政府もこの潮流に乗り、行政手続きのデジタル化を推進しました。これにより、ビザのオンライン申請システムの導入が検討されるようになりました。
ここからは、ビザのオンライン申請について詳しく説明します。
ビザのオンライン申請ができる人
ビザのオンライン申請ができる人は、以下のとおり定められています。
- 外国人本人の方
- 法定代理人(親権者、未成年後見人、成年後見人)の方
- 親族(配偶者、子、父又は母)の方(法定代理人を除く)
- 弁護士・行政書士の方
- 所属機関の職員の方
・技能実習(団体監理型)の場合は、監理団体の職員の方
・外国人建設就労者(特定活動告示第32号)及び外国人造船就労者(同告示第35号)の場合は、特定監理団体の職員の方(令和5年3月末まで) - 外国人の円滑な受入れを図ることを目的とする公益法人の職員の方
- 登録支援機関の職員の方
外国人本人や法定代理人、親族のほか、取次者の申請も認められています。
取次者とは、「申請取次の資格」を持つ人のことです。例えば、弁護士や行政書士、地方出入国在留管理局長に申請等取次の申出を行い、適当と認められた「受入機関」「旅行業者」「公益法人」の職員が該当します。
取次者は代理人ではないため、権限は限定されています。基本的には、各種書類や資料の作成、提出、提示、受領などの業務のみが認められており、申請書類を作成した場合は本人または代理人の署名が必要です。
さらに、申請書類に誤りが見つかった場合、取次者はその場で訂正することができません。このような制限があるため、書面での申請を行う場合、申請手続きの代行者には負担が生じることがあります。
オンライン申請の対象となるビザ
2022年3月から、「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」が新たにオンライン申請の対象に追加されました。これにより、「外交」と「短期滞在」を除くすべてのビザがオンラインで申請できるようになりました。
具体的には、以下のビザが対象です。
公用、教授、芸術、宗教、報道、投資・経営、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術、人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、技能実習、文化活動、留学、研修、家族滞在、特定活動
ビザのオンライン申請で行える手続き
ビザのオンライン申請で行える手続きは、以下のとおり定められています。
- 在留資格認定証明書交付申請
- 在留資格変更許可申請
- 在留期間更新許可申請
- 在留資格取得許可申請
- 就労資格証明書交付申請
- 再入国許可申請
- 資格外活動許可申請
6と7の手続きは、2〜4の手続きと同時に行う場合に限られます。ただし、すべての手続きをオンラインで行えるわけではありません。
利用者ごとに申請可能な手続きが異なり、手続きを行うためには所定の条件を満たす必要があります。注意が必要です。
外国人本人の注意点
外国人本人がオンライン申請を行う際には、「マイナンバーカード」を所持している必要があります。
具体的には、以下の申請を行うためにマイナンバーカードが必要であり、申請前に入管への問い合わせも必要です。
- 在留資格認定証明書交付申請
- 在留資格取得許可申請
親族(法定代理人を除く)の注意点
配偶者や子、父母といった親族は、以下の手続きについてオンライン申請ができません。
- 就労資格証明書交付申請
- 資格外活動許可申請
また、在留資格認定証明書交付申請には一部制限があります。具体的には、以下の在留資格を希望する人の配偶者、子、父母が日本に居住している場合に限り申請が可能です。
ビザのオンライン申請を活用するメリット
ここからは、ビザのオンライン申請を活用する主なメリットについて、外国人本人と外国人労働者を雇用している企業側のそれぞれからお伝えします。
外国人本人のメリット
在留資格の申請を窓口で行う場合、申請と受取のために2回出入国在留管理庁(地方出入国在留管理局)を訪れる必要があり、多忙な人にとって大きな負担でした。
しかし、在留資格オンライン申請が可能になったことで、入管の窓口まで足を運ぶ手間が省けます。オンライン申請を利用すれば、一度も出入国在留管理庁に行くことなく手続きが完了します。
書類は全てデータ(書類はpdf、写真はjpeg)での提出が可能であり、紙の資料を用意する必要がありません。さらに在留カードは郵送で受け取れるため、受取のための時間を設ける必要もありません。オンライン申請システムの利用は無料で、誰でも安心して利用できます。
オンライン申請なら、24時間いつでも自分の都合に合わせて手続きを進められます。平日に入管に行く必要がなく、土日祝日も含めて申請できるのは非常に便利です。
外国人労働者を雇用している企業のメリット
外国人本人によるオンライン申請が認められていなかった時代、企業側(所属機関)が本人に代わってオンライン申請を行うことには、企業担当者にもメリットがありました。
オフィスなどから外国人労働者のためにオンライン申請を行うことで、時間的な拘束を受けずに手続きを進めることができました。ただし、そのためには企業の担当者が取次者として承認を受けているか、または承認要件を満たしている必要がありました。
承認を受けようとする職員は、以下の条件をすべて満たす必要がありました。
- 過去に入管法に違反したことがなく、その他外国人の入国・在留管理に関する問題行為をしていないこと
- 承認を受けようとする職員が所属する機関も信頼できる機関であること
- 出入国在留管理行政に関する研修会等に参加した経験があり、外国人の入国・在留手続きに関する知識を有していること
- 旅行業者の職員については、所属する企業が外国旅行に関する業務を扱えること
2022年3月からは外国人本人による申請が可能になったため、本人に申請方法を教えることで担当職員の手間を大幅に減らすことができます。
自社で所定のマニュアルなどを作成し、外国人材の申請をサポートする体制を整えれば、職員の申請作業の負担を軽減することができます。
ビザのオンライン申請を活用する際の注意点
ビザのオンライン申請を活用する際には、以下をはじめさまざまな注意点が存在します。
- 在留カードの期限の前日までしか申請できない(窓口なら期限当日の申請が可能)
- 申請の種類によってはオンラインで申請できない(永住申請など)
ここからは、上記以外に特に注意しておきたい注意点を4つ順番に詳しくご紹介します。
必要書類は省略不可能
在留資格オンライン申請では、申請書類の記入は必要ありません。申請時の必要事項は画面上で直接入力しますが、必要書類はこれまで通り集めておく必要があります。集めた書類はPDF化してアップロードするため、必要書類そのものを省略できるわけではありません。
また、証明写真については以下の規格が定められています。
- ファイルサイズは50キロバイト以下
- 拡張子は「Jpeg」または「jpg」
- 申請人本人のみが写っている
- 帽子をかぶらず正面を向いている
- 背景がない
- 影がなく鮮明である
- 申請日の前6か月以内に撮影されたものである
そのほか、窓口に提出する写真の規格に準じる必要があります。
常識的に考えにくいことですが、プリクラのような加工写真や、美白処理を施した写真は使用できません。外国人労働者を雇用する企業側としても、この点は外国人本人に伝えておきましょう。
ID取得にあたってマイナンバーカードが必要
オンライン申請を進めるためには、まず「在留管理オンラインシステム」にアクセスし、利用者登録を行う必要があります。そのため、外国人本人がマイナンバーカードを取得する必要があります。外国人労働者を雇用する企業側としては、外国人本人の申請をサポートするのが望ましいでしょう。
日本で住民票が作成されてから2〜3週間後に申請書が届くので、その申請書を使ってマイナンバーカードを申請します。申請書にはQRコードが記載されているので、それをスマホで読み取り申請ページを開き、手続きを進めます。
申請ページで必要事項を入力後、顔写真の登録が必要になります。あらかじめスマホで顔写真を撮っておくとスムーズです。また、パソコンや郵送、一部の証明写真機でも申請が可能です。企業は外国人労働者が取り組みやすい方法をアドバイスすると良いでしょう。
申請後、交付通知書というハガキが自宅に届いたら、そのハガキを持って市区町村の窓口でカードを受け取ります。企業はマイナンバーカード発行と並行して、必要な備品の準備をサポートしましょう。
備品を準備する必要
在留資格オンライン申請を行うには、マイナンバーカードに加えて以下の備品が必要です。
- 在留カード
- パソコン(スマホでは申請できません)
- ICカードリーダライタ(マイナンバーカードに対応したものなら自由に選べます)
- JPKIクライアントソフト
JPKIクライアントソフトは、公的個人認証サービスを利用して電子申請を行う際に、マイナンバーカードの電子証明書を使用して署名を付与するためのソフトウェアです。ダウンロードは無料で、公的個人認証サービスのポータルサイトから入手できます。
これらを準備して、スムーズにオンライン申請を進めましょう。
不安がつきまとう中で手続きを進める必要
自分で申請する際、一番心配なのは許可が下りるかどうかです。ビザ申請は他の申請手続きと違い、許可が下りないことが前提です。様々な書類や資料を提出し、日本での活動の必要性を立証して初めて許可が下りるのです。
そのため、確実に許可が下りると思われるケースでも、結果を受け取るまでは安心できません。ビザ申請の経験が少ない方にとっては、毎回「これで許可が下りるのか?」という不安がつきまといます。
何度も申請している場合でも、入管が気になる点を見つけると追加の説明や資料を求められることがあります。このような場合、本人は申請時に特に問題がないと思っているため、どう対応すればよいか分からないことがあります。
自分で申請しても、結果が出るまでずっと不安な状態が続くのは避けたいところです。
ビザのオンライン申請までの流れ
外国人が自身でオンライン申請を利用するためには、以下の5つが必要です。
- マイナンバーカード(署名用電子証明書と利用者証明用電子証明書が必要)
- 在留カード
- パソコン(スマートフォンでは申請できません)
- ICカードリーダライタ(マイナンバーに対応したもの)
- JPKIクライアントソフト(公的個人認証サービスのポータルサイトからダウンロード可能)
もしマイナンバーカードを持っていない場合は、お近くの市役所や区役所で申請し、交付を受ける必要があります。また、オンライン申請はスマートフォンではできないため、パソコンを用意してください。
次に、利用者登録を行います。カードリーダを使ってマイナンバーカードを読み込み、署名用パスワードと利用者証明用パスワードを入力します。
最後に、利用者の名前や生年月日などを入力して利用者登録を完了させると、オンラインシステムが利用できるようになります。
マイナンバーカードの取得方法
マイナンバーカードは、日本で生活する上で必要なICチップ付きのカードです。マイナンバーカードがあれば、「住民票の写し」やビザの更新に必要な「住民税の課税証明書・納税証明書」をコンビニで取得できるようになります。
日本で初めて住民票が作成されてから2〜3週間程度で、マイナンバーカード交付のための申請書が届きます。もし申請書を紛失してしまった場合は、住所を管轄する市区町村役所にお問い合わせください。
交付申請書が届いたら、以下の方法で申請手続きを行います。
- スマートフォンで申請: スマートフォンで顔写真を撮影し、交付申請書のQRコードから申請用ウェブサイトにアクセスして申請します。
- パソコンで申請:デジタルカメラで顔写真を撮影し、申請用ウェブサイトにアクセスして申請します。
- 郵便で申請:交付申請書に顔写真を貼り、必要事項を記入して、送付用封筒に入れてポストに投函します。
- 証明用写真の撮影機で申請(対応機種のみ):タッチパネルを操作し、交付申請書のQRコードをバーコードリーダーにかざし、必要事項を入力して写真を撮影し、送信します。
- 市区町村の窓口で申請(一部除く): 交付申請書に必要事項を記入し、住んでいる市区町村の窓口に提出します。
ビザのオンライン申請に手間を感じる場合の対応策
オンライン申請に手間を感じたら、行政書士に依頼することをおすすめします。行政書士は依頼者に代わってビザのオンライン申請が可能で、申請手続きに慣れているため、書類のやり取りもスムーズに進みます。
多くの行政書士は書類のデータ化にも対応しているので、オンライン申請の手続きが煩雑に感じる場合は、ぜひ行政書士に依頼してください。
終わりに
ビザのオンライン申請を利用することで、出入国在留管理庁の窓口に行く必要がなくなりました。この在留資格オンラインシステムはほとんどの在留資格に対応しています。
ただし、オンライン申請にはマイナンバーカード、在留カード、パソコン、ICカードリーダライタが必要です。また、会社や代理人がオンライン申請を行う場合には、別途必要な情報や書類がありますので、オンライン申請システムの公式サイトを確認してください。
ビザ申請は原則として自分で行いますが、行政書士や弁護士などの専門家に依頼することもできます。手続きが難しい場合は、専門家に任せるのも一つの選択肢です。
自分でビザ申請をすることに不安がある方は、しらき行政書士事務所までお気軽にご相談ください。