高度専門職ビザは、日本国内の発展に貢献できる優秀な外国人の人材を積極的に受け入れるために設けられた在留資格です。このビザの対象となるのは、学歴・職歴・年収などをもとに点数化されて、受け入れ判断の基準を満たした「高度人材」です。彼らは高い専門知識や技術を有しており、日本の各業界で重要な役割を果たすことが期待されています。
この記事では、高度専門職ビザの概要や、取得のための条件、そしてこのビザを取得するメリットについて分かりやすく解説します。永住権取得の際の要件緩和や家族の帯同許可など、高度専門職ビザに関連する優遇措置にも焦点を当ててご紹介しますので、ぜひご参考ください。
目次
高度専門職ビザとは
2017年4月26日、高度専門職のポイント制度の新基準と永住要件ガイドラインの改正がスタートしました。
そもそも高度専門職ビザとは、2015年の入管法の改正によって新たに創設された在留資格のことです。従来、高度人材外国人には「特定活動」という在留資格を付与する形で対応が行われてきましたが、それからは在留資格「高度専門職」が付与されることになりました。
在留資格「高度専門職」では、高度人材外国人の活動内容を以下の3つに分類しています(1号)。
- イ「高度学術研究活動」
- ロ「高度専門・技術活動」
- ハ「高度経営・管理活動」
そして、当該外国人の学歴・職歴・年収などあらかじめ示されている項目ごとにポイントを計算し、その合計が70点以上となった場合に、出入国管理上の優遇された在留資格「高度専門職」を付与するという仕組みです。
なお、高度専門職は1号と2号に分かれていますが、最初に取得できるのは1号のみです。
高度人材ポイント制とは
高度人材ポイント制とは、「高度人材に対するポイント制による出入国在留管理上の優遇制度」を通じて「高度外国人材」と認められた外国人に対して、出入国在留管理上の優遇措置を講ずることで、その受入れを促進しようとする制度です。
日本では「専門的・技術的分野の外国人労働者は積極的に受け入れる」という基本方針のもと、日本で就労する外国人に関する在留資格(就労資格)が入管法で定められています。
就労資格は活動内容に応じて類型化されており、それぞれの在留資格について設けられた要件を満たした外国人に対して決定されます。
高度人材ポイント制は、これら就労資格で日本に入国・在留できる外国人の中でも、特に日本の経済成長やイノベーションへの貢献が期待される能力や資質に優れた人材を出入国在留管理制度上の取扱いにおいて様々に優遇し、その受入れを促進しようというものです。
在留期間
高度専門職ビザの在留期間は、以下のとおり定められています。
- 高度専門職外国人(特別高度人材、本人):5年
- 在留資格「特定活動(高度人材)」で在留する外国人(注)の扶養を受ける配偶者及び子:5年・3年・1年のいずれか
- 在留資格「特定活動(高度人材)」で在留する外国人の就労する配偶者:5年・3年・1年のいずれか
- 在留資格「特定活動(高度人材)」で在留する外国人又はその配偶者の親(7歳未満の子を養育する場合、妊娠中の高度人材配偶者又は本人の介助等を行う場合):1年・6ヶ月のいずれか
- 在留資格「特定活動(高度人材)」で在留する外国人が雇用する家事使用人:1年
取得要件
高度専門職ビザを取るためには、主に以下3つの要件を満たす必要があります。高度専門職ポイントが70以上あれば確実にビザを取れると誤解している方も多いので、正確に要件をチェックしておきましょう。
要件 | 補足 |
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高度専門職ポイント計算の結果が70点以上であること | 高度専門職ポイント計算表で70ポイント以上であることが必要です。ポイント計算をする際は、ご自身がイ・ロ・ハのどれに該当するのか、必ずチェックしてください。 |
仕事内容が高度人材としての活動であること |
下記のいずれかの仕事をすることが必要です。これ以外の仕事をしている場合、高度専門職ビザは取得できません。
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年収300万円以上であること |
海外から呼び寄せる場合は、「年収見込証明書」で問題ありません。しかし、もともと日本にいる方が高度専門職ビザに変更する場合、直近数年間の年収を審査されることが多いです。 なお、転職などで年収が上がる可能性がある場合、個別判断がされます。 |
高度専門職ビザの取得メリット
高度専門職ビザ(高度専門職1号、高度専門職2号)を持っていると、入国管理分野で以下7つの優遇措置を受けられます。
優遇措置 | 概要 |
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複数にまたがる在留資格 | 通常、在留資格では1つの特定の活動しか許可されません。しかし、高度外国人材の資格を持つ人は、さまざまな活動を同時に行うことができます。例えば「高度専門職1号(イ)」に該当する人は、大学での研究だけでなく、関連する事業経営も認められます。 |
一律5年の在留期間 | 普通の在留資格では、期間は申請によって5年、3年、1年などと変わります。しかし、高度外国人材は常に最長の5年の在留が認められます。 |
永住許可要件の緩和 | 高度外国人材は永住許可を取得しやすくなっています。通常、10年間の在留が必要ですが、この資格を持つ人は、3年や特別な場合は1年の在留だけで永住許可を受けることができます。 |
配偶者の就労 | 「配偶者」の在留資格を持つ外国人は、「教育」「技術・人文知識・国際業務」などの分野で就労しようとするケースで、一定の学歴や職歴が求められます。しかし、高度外国人材の配偶者の場合、こうした要件を満たさなくても教育や技術・人文知識・国際業務分野の仕事に就けます。 |
親の帯同 | 高度外国人材として年収が800万円以上の場合で、7歳以下の子供の養育や妊娠中の家族のケアが必要ならば、親を日本に招くことが可能です。 |
家事使用人の帯同 | 高度外国人材の家庭で、年収が1000万円以上などの条件を満たす場合、外国人の家事使用人を日本に招くことが認められます。 |
入国・在留手続の優先処理 | 入国の手続き申請は提出から10日以内、滞在の更新申請は提出から5日以内に、優先的に処理される予定です。 |
高度専門職2号の取得メリット
高度専門職2号のビザは、3年以上にわたって「高度専門職1号」の資格で活動している外国人の方が申請できる在留資格です。このビザを取得すると、以下のような優遇措置が受けられます。
- 「高度専門職1号」で許可される仕事に加えて、各種就労ビザで認められる活動のほぼすべてを行えるようになる
- 「高度専門職2号」の滞在期間は、永住者と同じように期限が設定されない
高度専門職ビザ申請の必要書類・手続きの流れ
本章では、高度専門職ビザの申請にあたって必要となる代表的な書類と、大まかな申請手続きの流れについて紹介します。
在留資格認定証明書交付申請
下表に、これから日本に入国される外国人の方が高度専門職ビザを申請する場合の手続きの流れをまとめました。
手順 | 補足 |
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地方出入国在留管理局の窓口での申請 |
「高度専門職1号」(イ・ロ・ハのいずれか)に係る在留資格認定証明書交付申請を行います。 入国予定の外国人の受入れ機関の方等が申請を行うことも可能です。 行おうとする活動に係るポイント計算表と、ポイントを立証する資料を提出し、高度外国人材の認定を申し出ます。 |
出入国在留管理庁における審査 |
当該申請に係る入管法第7条第1項第2号に掲げる「上陸条件への適合性」の審査を行います(このとき、ポイント計算を行います)。 在留資格該当・上陸条件適合の場合、在留資格認定証明書が交付されます。 在留資格非該当・上陸条件不適合の場合、在留資格認定証明書は交付されません。 なお、※就労を目的とするその他の在留資格の上陸条件に適合している場合、申請人が希望すれば当該在留資格に係る在留資格認定証明書が交付されます。 |
在留資格認定証明書交付 |
今回の申請で、上陸条件の適合性の審査は終了しています。在外公館における査証申請の際に在留資格認定証明書を提示し、日本の空海港における上陸審査時に本証明書及び査証を所持することで、スムーズな査証発給と上陸審査手続きが行われます。 |
在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請
次に、すでに日本に在留している外国人の方や、高度外国人材として在留中で、在留期間の更新を行う外国人の方の手続きの流れをまとめました。
手順 | 補足 |
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地方出入国在留管理局の窓口での申請 |
在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請のいずれのケースにおいても、行おうとする活動に係るポイント計算表および、ポイントを立証する資料等を提出します。 |
出入国在留管理庁における審査 |
主に以下のポイントから、高度人材該当性等の審査が行われます。
70点以上であるなど必要な要件を満たしているケースでは、在留資格変更許可・在留期間更新許可が下ります。 70点未満であるなど必要な要件を満たしていないケースでは、在留資格変更許可・在留期間更新許可がされません。 なお、在留資格変更許可申請の場合、現在の在留資格による在留期間があれば、当該在留資格による在留の継続が認められます。 |
申請手続きにあたって、主に必要となる書類は、以下のとおりです。
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 在留資格変更許可申請書
- 在留期間更新許可申請書
これらの書類の詳細や、そのほかの必要書類について、詳しくは出入国在留管理庁の公式Webサイトをご確認ください。
終わりに
高度専門職ビザは、日本国内の発展に貢献できる優秀な外国人の人材を積極的に受け入れるために設けられた在留資格です。高度専門職ビザでは、日本政府が受け入れをより一層促進するために、さまざまな優遇措置が設けられています。
今後も引き続き安定的に日本に住むことを検討し,高度専門職ビザの取得を検討しているならば、どのような職種・活動が高度専門職ビザに該当するのか、ポイント計算により高度専門職ビザ取得の条件をクリアしているかが大きなポイントです。
とはいえ、実際には外国人の方ご自身であるいは企業の担当者様の側では判断がつきにくいことも多いので、行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。
高度専門職ビザの取得を考えている外国人の方、あるいは外国人を「高度専門職ビザ」で日本に呼び寄せたい方で「高度専門職ビザについて、もっと詳しく教えてほしい」「自分のケースでは、高度専門職ビザのどの活動内容に該当するのか分からない」といったお悩みを抱えている場合には、お気軽にしらき行政書士事務所までお問い合わせください。