外国籍のお子さんで、親の仕事の関係で幼い頃から日本で生活している方はたくさんいらっしゃいます。おそらく多くの方は家族滞在ビザで日本に滞在していると思います。高校ぐらいまでは家族滞在ビザで特に不自由を感じないと思いますが、高校卒業後の進路を考えたときに、ビザに関する問題に直面することになります。
というのも、高校卒業後に就職しようと思っても、家族滞在ビザのままでは働くことはできません。また、就労ビザに該当する仕事で就職しようと思っても、高校卒業だけでは学歴要件にも該当しませんし、これまで働いた経験もないので職歴要件にも該当せず、就労ビザも取得できません。そのため、高校卒業後も家族滞在ビザのままだと、資格外活動許可の範囲である週28時間以内のパートやアルバイトでしか働けないことになってしまいます。
長いこと日本で生活してきて、就職して今後も日本で暮らしていこうと思っても、ビザがネックとなってそれが実現できないのは非常に理不尽です。
目次
要件を満たせば高校卒業後に家族滞在ビザからの変更が可能です
さすがにこのビザの問題はあまりにも理不尽なので、国の方でも家族滞在ビザから就職する道を考えてくれています。いくつか条件はありますが、家族滞在ビザのお子さんが就職できるビザに変更することが可能です。
家族滞在ビザのお子さんが、高校卒業後に就職する場合に変更できるビザは以下の2つです。
②特定活動ビザ
それぞれの詳しい要件やできる仕事の範囲などを確認していきます。
①定住者ビザ
まず、家族滞在ビザから変更可能なビザは定住者ビザです。これのビザへの変更できる要件は、以下の5つをすべて満たしている必要があります。
B 日本の小学校卒業
C 日本の中学校卒業
D 日本の高校卒業(見込)
E 就職先が決まっている(就労制限なし)
※A~Eの5つ全ての要件を満たしていること
定住者ビザ変更への大きなポイントが、小・中・高すべてにおいて日本の学校を卒業しているということです。定住者ビザは就労制限がないため、他のビザよりもメリットが大きいビザです。そのため取得の要件が比較的厳しくなります。
義務教育をすべて日本で受けてその上の高校を卒業するということで、日本での定着性を評価されて、定住者ビザが与えられることになります。
Aの年齢については、そもそも小学校を卒業している時点で17歳より前に入国していることになりますので、問題ないでしょう。B~Dの学歴要件は、全てを満たす必要があります。そのため、小学校は母国で卒業し、中学校から日本で勉強している場合は、子の定住者ビザの要件には該当しません。
あと、意外と見落としがちなのがEです。定住者ビザに変更できる条件として、申請時点で既に就職先から内定をもらっているということです。高校卒業後に就職先を探す場合では申請できません。就職することが確実に見込まれる状態になって定住者ビザの変更が申請できるのです。
ちなみに、定住者ビザの場合、すでに述べたとおり、就労制限がありませんので、「技術・人文知識・国際業務」ビザなどとは異なり、できる業務内容は限定されていません。そのため、入管で言うところの単純作業とされる、清掃業務や製造業務でも可能です。
ただし、資格外活動許可の範囲(週28時間)を超える時間働くことが条件です。資格外活動許可の範囲でおさまるのであれば、そもそも家族滞在ビザのままで働くことができますので、それ以上の時間働く、つまりフルタイム勤務での雇用が前提となります。
②特定活動ビザ
最初に見た定住者ビザでは小学校からずっと日本の学校を卒業していないと該当しないということで、かなり要件が厳しくなります。そのため、その要件から外れる人も多いと思います。
2つめに紹介する特定活動ビザの場合、定住者ビザよりも条件が緩和されているため、比較的多くの方が該当すると思います。そのかわり、定住者ビザよりも制限があるため注意が必要です。
まずは特定活動ビザへの変更要件を確認してみましょう。以下のa、c、dと、b-1かb-2のいずれかの合計4つの要件を満たす必要があります。
b-1 日本の高校入学・卒業(見込)
b-2 日本の高校編入・卒業(見込)+日本語能力試験N2
c 就職先が決まっている(就労制限あり)
d 日本にいる扶養者が身元保証人になること
aとcについては、定住者ビザと同条件ですので、詳細は省略します。
学歴要件に関して、特定活動ビザの大きな特徴が高校卒業のみという点です。
ですので、定住者ビザの要件に該当しなかった、中学校から日本の学校に通うようになった方や、高校から日本で勉強している方も対象となります。さらに、高校に編入した場合でも日本語能力試験N2に合格していれば要件を満たすことになり、定住者ビザよりも幅広く認められる余地があります。
一方で、dの要件は定住者ビザにはないものです。特定活動ビザの場合、身元保証人として日本にいる扶養者(一般的には親)が身元保証人になる必要があります。
つまり、扶養者である親が途中で母国に戻ってしまうと、特定活動ビザの更新ができなくなる可能性もあります。定住者ビザにも身元保証人は必要ですが、必ずしも扶養者である必要はなく、職場の上司、親せきや知人でも可能な点で、特定活動ビザの身元保証人とは大きく異なります。
また、cの就職先が決まっていることというのは定住者ビザと同じですが、特定活動ビザの場合は就労制限があります。
それは、風営法の規制対象となる店舗で働くことができないという点です。風営法の規制対象となる店舗とは、パチンコ店、ゲームセンター、バー、クラブなどです。これに該当する場合、職種が問題なのではなく、その店舗での就労が禁止されています。
永住ビザが取得できる場合もあります
これまで説明した、定住者ビザと特定活動ビザへの変更とは別に、永住ビザの取得が可能な場合もあります。家族滞在ビザの場合、就労ビザなどで日本に滞在している人(本体者)の家族として日本に来ていることになります。そして、本体者が永住申請できる条件が揃っていれば、家族滞在ビザのご家族も永住申請できる場合がほとんどです。
ちなみに、本体者の子として家族滞在ビザで日本にいる方は、本体者の方が永住申請の要件を満たしていることに加えて、「家族滞在ビザで日本に1年以上滞在している」という条件をクリアできれば、本体者と一緒に永住申請ができます。
この条件を見落としていて、永住申請ができるのにしていないという方も多いと思います。永住ビザを取得できれば就労制限もビザの期間もなくなりますので、高校卒業後に就職するにあたってもビザに関する問題はクリアできます。
家族滞在ビザのお子様の就職で困った場合の相談
家族滞在ビザの場合、本体者である親と一緒に住んでいる間はビザに関して特に不自由を感じることはありません。しかし、高校を卒業して就職を考えたときに大きな問題に直面することになります。
これまで紹介した、定住者ビザ、特定活動ビザ、永住ビザなど、高校卒業後に働くためのビザに関する情報を事前に知っておけば、いざ就職するときでもビザの心配事が少なくなると思います。
ただ、ここで紹介した条件に該当せず、ビザに関する問題で就職できないというケースもあるでしょう。また、自分自身で「どのビザに変更できるのか?」「どのビザに変更するのがベストなのか?」といった判断をするもの容易ではありません。
ビザの変更や取得に関してより確実にされたい場合は、専門家を頼るのも一つの選択肢です。
しらき行政書士事務所では、家族滞在ビザからの変更手続きに関するご相談にも対応しております。今回ご紹介したようなケースで、ご相談で詳細を確認したところ、永住ビザの申請が可能であったため、ご家族全員で永住ビザを取得し、無事に就職できたというケースもありました。
ビザ申請は申請要件や許可となる条件がとても複雑な手続きです。面倒なことをご自身だけで抱え込まずに、お気軽にしらき行政書士事務所までご相談ください。