総務職は、外国人を雇用できる就労ビザの要件に該当する職種ではあります。総務職の場合は社内における様々な業務を行いますので、その業務範囲は多岐に渡ります。備品・設備管理、社内規程の作成・管理、社内イベントの企画・運営などが代表的なものです。
また、会社の規模によっては、労務管理業務や会計・経理業務も総務職に含まれることもあり、その業務範囲は実に幅広いものです。
そのため、ビザ申請において担当業務が「総務職」と言っても、具体的にどういった仕事を担当するのか、それがビザの要件に合致しているのかを十分に説明できないと、申請しても不許可となるケースもあります。
総務職で外国人を雇用する際に注意すべき点を十分に把握し、ビザ申請が許可となる可能性を少しでも高くするためのポイントを、ここではご紹介します。
目次
「人文知識」ビザの基本的な要件を確認する
まずは、ビザの基本的な要件を確認してみましょう。総務職で雇用する場合のビザは、就労ビザである「技術・人文知識・国際業務」ビザに該当します。その中で「人文知識」分野に該当します。この場合の要件は、以下の①~③のいずれかの要件+④を満たすことが必要となります。
②関連する科目を履修して、日本の専門学校の専門課程を修了
③10年以上の実務経験(大学、高専、高校、中等教育学校の後期課程又は専門学校の専門課程において当該知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)
④日本人と同等以上の報酬
④については、社内における新卒採用や中途採用での給与基準と同等以上であれば問題ありません。
ポイントは、①もしくは②の学歴要件か、③の実務経験要件のいずれかを満たす必要があるというところです。それぞれの要件に関する具体的なポイントや注意点を見ていきます。
総務職での学歴要件
学歴要件の場合、大学(短大含む)卒業か日本の専門学校卒業かで、ビザ申請における審査基準が異なります。
大学卒業の場合、業務に「関連する科目」の判定が、比較的緩めに判断されます。今回のテーマである総務職に関しては、関連する科目に該当する学部は、経済学、経営学、会計学など、文系の学部が考えられます。
しかし、直接的には関連性が薄い理系の学部や文系のその他の学部であっても、総務職との関連性は厳密なレベルでは求められていません。これは、大学の目的として、専門知識の習得だけでなく、幅広い知識の習得が設定されていることから、ビザ申請においてもそれに沿った審査基準となっています。
一方で、日本の専門学校卒業の場合、この関連性はかなり厳しく判断されます。総務職で雇用する場合では、経営コース、ビジネスコース、会計コースなどの、総務職と関連性のある専攻での学歴が必要となります。
デザイン、音楽、ITや電気工学というように、総務職と関連性の薄い専攻の場合、基本的には総務職でのビザ要件を満たすのは厳しくなります。
専門学校の場合、職業や実生活に必要な能力を育成することがその目的となっています。そのため、より専門に特化した能力を身に着けることが前提ですので、ビザ申請においても学歴と職務内容の関連性をより厳しく判断されることになります。
総務職での実務経験要件
実務経験で要件を満たすには、客観的な資料によって総務職での10年の証明が必要となります。代表的なものが、過去の勤務先からの在職証明書や退職証明書です。就労期間や業務内容が記載されたもので、会社の代表者や所属部門長のサインや会社印が入った証明書です。
会社での業務経験以外にも、高等学校等での学歴も実務経験としてカウントできる場合があります。ただし、単に高等学校を卒業しているだけでなく、取得した単位や科目と担当業務との関連性が求められます。
総務職であれば、商業科を卒業している、取得単位に簿記や人材管理等の総務に関連するものが含まれているといったことが必要になります。そのため、学歴を実務経験に含めるためには、卒業証明書に加えて成績証明書の提出も必要になります。
なお、職務経験を証明する場合、職務内容については必ずしも、就職先で担当する業務と完全に一致している必要はありません。特に総務職という職種の区分が海外の会社ではあまり一般的ではないようなので、総務に関連する業務の、会計、労務管理、営業事務、秘書などの業務であっても実務経験年数として算入できます。
総務職に関する業務内容と業務量
総務職の場合、その業務が幅広いため、総務職の中でも具体的にどのような業務を担当するのかを明確に説明する必要があります。
社内規程の整備や許認可関係の管理といった法務系の業務、外国人従業員の労務管理や新入社員教育などの人事労務系の業務、経理や財務管理などの会計系業務などが考えられます。
なお、担当業務については、あくまでも「主たる業務が何なのか」ということであって、それ以外の業務をしてはいけないというわけではありません。
特に総務職の場合は、業務が多岐に渡るため、メインとなる業務以外も行うケースがあるかと思います。例えば法務系の業務をメインで担当しながら、通訳・翻訳業務などの「人文知識」ではなく「国際業務」の分野に該当する業務についても必要に応じて担当することも可能です。
業務内容が総務職の範囲内であることに加え、実際に担当する業務に関して業務量が十分にあるのかどうかも審査の上で重要なポイントです。
外国人従業員の労務管理を主たる業務としてビザ申請した場合で、実際その会社には外国人従業員が1人しかいない場合、果たしてその労務管理の業務量がどれほどあるのか、専任で労務管理する合理的な理由があるのか、が問われます。それをクリアできなければ不許可となります。
このため、総務職で雇用する場合は、雇用しようとしている人が担当する業務に対して、会社の規模や従業員の数に見合った業務量があるかどうかという点が特に重要となります。
総務職でのビザ申請は意外と面倒
日本人を総務職で雇用する場合、雇用後に様々な業務を経験させたうえで、本人の適性を判断して、どのような専門業務を担当させるのかを決めることが多いと思います。
しかし、外国人雇用においてこのやり方ではビザの許可が下りません。ビザ申請の場合は、まず「どのような仕事をするのか?」ということが決まっていることが大前提となるからです。ビザ申請では、いわゆる「ジョブ型雇用」の考え方でなければなりません。
そのため、日本人の採用と同じ感覚で外国人を採用し、いざビザ申請をしてみたら不許可となってしまった、というケースも多くあります。
外国人雇用の一番のネックは、会社にとって必要な人であっても、ビザの許可が下りなければずっと働けないということです。
ビザの申請に手こずって入社時期が後ろにずれてしまうと、会社にとって大きな損失ですし、本人にとっても日本に来られなくなってまう、日本にいられなくなってしまうという不安な状態が続くことになります。
総務職でのビザ申請に関する相談先
上のようなリスクを避けるためにも、ビザ申請については専門家のサポートを利用するということも一つの方法です。
しらき行政書士事務所では、過去のビザ申請において総務職での雇用に関する手続きをお手伝いしてきました。香川県高松市にある事務所ですので、特に四国のビザ申請については数多くの実績がございます。
外国人雇用に関して、不安な事やお悩みがございましたら、しらき行政書士事務所にお気軽にご相談ください。