2025年3月より、新たに「入国前結核スクリーニング」制度が導入されます。この制度は、結核患者数が多い国から日本に中長期滞在を目的に入国する方を対象に、本国で結核に感染していないことを証明する書類の提出を求めるものです。
初期段階では、フィリピン、ネパール、ベトナムの3か国が対象となります。在留資格認定証明書交付申請時、または認定証明書交付後の査証申請時に「結核非発病証明書」を提出する必要があります。
なお、この制度は短期滞在者や特定技能などのビザで来日する方には適用されません。証明書の提出義務化は、フィリピンとベトナムでは2025年6月から、ネパールでは同年9月からの開始が予定されています。
もともと本制度は2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催前に開始予定でしたが、新型コロナウイルス感染症による水際対策で延期されていました。しかし、水際対策の終了後、外国からの入国者増加に伴い外国生まれの結核患者も増加しているため、2025年度中に制度を開始する予定です。
本記事では、入国前結核スクリーニングの制度の意義や対象者、スケジュールや実施の流れなどをわかりやすくまとめました。
目次
どんな制度?
入国前結核スクリーニング制度は、結核の感染率が高い国から日本に3か月以上滞在する予定の外国人を対象とした仕組みです。この制度では、渡航前に指定された医療機関で胸部レントゲン検査などを受け、結核を発病していないことを証明する書類を提出することが義務付けられています。
結核対策として、入国前に健康状態を確認する取り組みは、多くの先進国で実施されています。対象となる条件や方法は国によって異なりますが、特に結核の感染リスクが高い地域からの入国者や長期滞在者に対してスクリーニングを行っています。
入国前結核スクリーニングを実施している主な国は、以下のとおりです。
• アメリカ
• カナダ
• オーストラリア
• イギリス
• ニュージーランド
• 韓国
これらの国々と同様に、日本でも結核対策の一環としてこの制度が導入される予定です。
制度の意義
日本では、結核のり患率(人口10万人あたりの新規患者数)や患者数が年々減少しているものの、依然として年間約10,000人が発症し、約1,500人が命を落としています。
特に、外国生まれの患者が増加しており、令和5年(2023年)には新規登録患者10,096人のうち1,619人が外国出生者でした。また、近年では結核患者の多くを高齢者が占め、2023年における新登録結核患者のうち42.9%が80歳以上という状況です。り患率が高い国からの渡航者が日本滞在中に結核を発病するケースも見られます。
こうした状況を踏まえ、日本は特に結核患者が多い国から中長期間の滞在を予定している渡航者を対象に、入国前結核スクリーニングを導入することを決定しました。この制度では、結核を発病していないことを証明できない渡航者の入国を認めない方針です。
なお、上記の制度と併せて、80歳以上の高齢者に対して、感染症法に基づく定期健康診断の強化として健診の個別勧奨の実施や個別健診の推進等を実施する取り組みも推進しています。
これまでの背景
【導入方針の決定】
2018年2月、厚生科学審議会結核部会で、外国出生の結核患者が増加している現状を受け、結核患者数が多い6カ国(フィリピン、ベトナム、インドネシア、ネパール、ミャンマー、中国)からの長期滞在者を対象とした「入国前結核スクリーニング」を導入する方針が示されました。この6カ国は、日本の外国出生結核患者の約8割を占めています。
【一時的な見送り】
2020年3月、関係各所にスクリーニング実施について通知を行い、同年7月1日から準備が整った対象国で順次開始する予定でした。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で水際対策が実施され、外国からの入国者数が激減したため、導入が一時的に見送られました。
【導入の必要性が高まる】
2023年5月8日、新型コロナウイルス感染症に関する水際対策が終了。その後、外国からの入国者数が増加し、それに伴い外国生まれの結核患者数の増加も顕著となりました。この状況を受け、「入国前結核スクリーニング」の早期導入が求められています。
対象となる外国人は?
このスクリーニング制度の対象となるのは、以下の条件を満たす方です。
- 対象国(フィリピン、ベトナム、インドネシア、ネパール、ミャンマー、中国)の国籍を持つ方
- 日本に中長期在留を希望する方(再入国許可を持つ方や特定活動告示第53号・54号(デジタルノマドおよびその配偶者・子)での入国予定者を除く)
ただし、以下に該当する場合はスクリーニングの対象外です。
- 現在の居住地が対象国以外であり、それを滞在許可証などで証明できる場合
- 入国前に結核検査(胸部レントゲンを含む健康診断)が義務付けられている制度※2に該当する場合(当面の間対象外)
2025年度中にスクリーニングを開始するのは、フィリピン、ネパール、ベトナムの3か国です。インドネシア、ミャンマー、中国については実施日が未定です。
また、以下の制度に基づき結核検査が実施される場合、本スクリーニングは適用されません。
- JETプログラム参加者
- JICA研修員(長期・短期)
- JICA人材育成奨学計画(JDS)留学生
- 大使館推薦による国費留学生
- 外国人留学生向け教育訓練受託事業の対象者
- EPA(経済連携協定)に基づく看護師・介護福祉士
- 特定技能外国人
- 家事支援外国人材受入事業(特区法第16条の4)
下表に、対象国生まれの結核患者数(2023年)をまとめました。
|
フィリピン |
ベトナム |
インドネシア |
ネパール |
ミャンマー |
中国 |
|
|---|---|---|---|---|---|---|
|
日本における患者数 |
317人 |
272人 |
231人 |
229人 |
155人 |
148人 |
|
出生国割合 |
19.6% |
16.8% |
14.3% |
14.1% |
9.6% |
9.1% |
いつから始まる?
入国前結核スクリーニングは、準備が整った対象国から順次導入されます。対象者は、指定された健診医療機関で健康診断を受ける必要があり、その結果として発行される「結核非発病証明書」を提出する義務があります。
提出のタイミングは、在留資格認定証明書の申請時または査証申請時となります。なお、証明書の提出が必要となる開始日については、以下のスケジュールで進められます。
|
健診受付開始 |
結核非発病証明書提出義務付け |
|
|---|---|---|
|
フィリピン、ネパール |
2025年3月24日予定 |
2025年6月23日予定 |
|
ベトナム |
2025年5月26日予定 |
2025年9月1日予定 |
|
インドネシア、ミャンマー、中国 |
開始に向け調整中 |
左に同じ |
スクリーニングの実施方法・流れ
スクリーニングの実施手順と流れは、以下のとおりです。
|
ステップ |
補足 |
|---|---|
|
①健康診断の受診 |
申請者は、対象国にある指定された健診医療機関を訪れ、医師の診察と胸部レントゲン検査を受けます。 |
|
②証明書の発行 |
検査の結果、結核を発病していないと診断された場合、医療機関から「結核非発病証明書」が発行されます。 |
|
③証明書の提出 |
在留資格認定証明書を申請する場合、申請時に「結核非発病証明書」を提出します。在外公館で直接査証申請を行う場合、査証申請時に証明書を提出します。 |
スクリーニングを受ける際は、事前に以下のポイントを把握しておきましょう。
- 身元確認:健診時にはパスポートを提示する必要があります。
- 費用負担:健診にかかる費用は申請者自身が負担します。費用や証明書の発行までの所要日数は医療機関ごとに異なります。
- 証明書の有効期間:「結核非発病証明書」の有効期間は、胸部レントゲン検査日から原則として180日間です。
- 証明書の保管:入国後に証明書の提示を求められることがあるため、本人控えを適切に保管してください。
参考:出入国在留管理庁「【重要】入国前結核スクリーニングの開始予定について(フィリピン、ネパール及びベトナムの国籍を有する方)」
結核非発病証明書について
入国前結核スクリーニングにおいて、結核の発病が確認されていないことを証明する書類です。この証明書は、日本政府が指定した医療機関(以下「指定健診医療機関」)が発行します。
指定健診医療機関は、「日本入国前結核健診の手引き」に基づいて健診を実施し、申請者が結核を発病していないと判断した場合に限り、この証明書を発行します。したがって、正確かつ信頼性の高い健診を受けた上で、結核非発病証明書が交付される仕組みとなっています。
終わりに
入国前結核スクリーニング制度の導入により、日本で3か月以上滞在を予定している外国人労働者や留学生は、入国前に「結核非発病証明書」を提出することが義務付けられます。この証明書を提出しない場合、入国が認められません。
証明書発行のための検査は申請者の母国で行われるため、検査の質をどのように確保するかが大きな課題となります。信頼性の高い医療機関での検査実施や基準の統一が、制度の運用において重要なポイントとなります。
本制度について、詳しい情報は、本記事で示した出入国在留管理庁のHPや、厚生労働省の特設サイト(近日公開予定)をご覧ください。
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