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【相談事例】永住許可の年収は300万未満では絶対にとれないの?

相談者:

現在、当方は就労ビザを有しており、日本で働いています。そこで、永住許可を受けたいのですが、可能でしょうか?現在の年収は、300万円に若干満たない程度です。最低300万円以上の年収がないと取得できないと聞きましたが、年収300万円未満では絶対に永住許可は受けられないのでしょうか?

回答:行政書士

はじめに結論から述べておくと、永住権取得のための収入条件の金額は明確に公表されているわけではなく、年収300万円未満だからといって絶対に永住許可を受けられないということはありません。

ただし、年収300万円未満の方で、実際に永住許可を受けられた事例はほとんど報告されてないのが現状です。

そこで今回は、永住許可を受けるために必要とされる年収や、それに影響を与える要素などについてご紹介します。

在留資格「永住者」とは

はじめに、在留資格「永住者」の概要をおさらいしておきましょう。

永住者とは、外国人が在留期間を制限されることなく日本に永住できる在留資格のことです。永住者の在留資格を与えられる(永住許可を受ける)と、在留資格の更新手続きを行う必要がなくなるほか、就労に関しても制限が無いため、日本人と同様にどのような職業にでも就くことが可能です。

日本国籍を取得する「帰化申請」と似ていますが、永住者の大きな特徴は、外国籍を維持することです。ただし、外国籍を維持するということは、国内活動が自由であっても、外国人登録を行ったり、国外へ出る際には再入国許可を得たりする必要があることを意味します。

また、法律違反などで退去強制の対象となった場合、本国に送還される可能性があるほか、現時点では永住者に参政権が認められていない点も認識しておきましょう。

「永住者」の在留資格を得るための条件の一つに、日本に10年以上続けて滞在していることが挙げられます。そのため、海外から来日したばかりの方がすぐに「永住者」の在留資格を得られることは通常ありません。

永住許可に必要な年収は300万円以上?

永住許可を得るためにはさまざまな条件を満たす必要があり、その中の一つに年収要件があります。年収要件の具体的な金額は公には明示されていませんが、一般的には年収が300万円以上ないと難しいと考えられています。

ただし、永住許可を得るために必要な年収は、申請者の居住地や収入の安定性などにも左右されます。そのため、年収が400万円あったとしても、必ず永住許可を受けられるという保証はありません。

とはいえ、少なくとも「年収が300万円未満」で永住許可が認められたケースは、ほとんど見られないのが実情です。

年収を証明する方法

永住許可の申請を行う際は、住民税の課税証明書を提出して年収を証明します。

住民税の課税証明書とは、住民税の税額を証明するものであり、前年1年間の所得額が記載されている書類のことです。

その年の1月1日までに住んでいた市区町村の役所から、発行してもらえます。毎年6月頃に、昨年度の所得額が記載された最新の課税証明書が発行される仕組みです。

永住許可の申請では、発行から3か月以内の課税証明書が必要です。

証明が求められる年収の期間

永住申請には、原則として5年間の課税証明書の提出が求められます。つまり、過去5年間にわたって300万円以上の年収があったことを証明しなければなりません。

ただし、個々のケースによって、提出しなければならない課税証明書の期間が短くなることがあります。以下に緩和される条件と緩和後の年数をまとめました。

  • 「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の在留資格を持っている:直近3年分
  • 日本人の実子(特別養子縁組を含む)、永住者の実子、特別永住者の実子である:直近1年分
  • 高度人材(※)で70点以上のポイントを持っている:直近3年分
  • 高度人材で80点以上のポイントを持っている:直近1年分

※専門的な技術力や知識を有する外国籍人材のこと。

上記に示した条件を満たしていれば、3年分もしくは1年分の課税証明書の提出で年収要件を満たすことが可能です。そのため、現在の年収が300万円以下の場合でも、1〜3年というわずかな期間で実績を作れば、年収要件を満たせる可能性があります。

「連続300万円以上の収入」における解釈

永住許可の申請では、直近において年収300万円以上の期間がどれだけ続いているかが重要となります。

例えば、3年前に転職活動で一時的に職を失い、その年の収入が300万円を下回ったとします。その後に収入が回復し、3年後の現在は年収900万円以上になっていたとしても、証明が求められる年収の期間において一つの年でも年収が300万円を下回っていれば、年収要件を満たしていないとみなされる可能性が高いです。

つまり、年収要件では、年収300万円以上の期間が一定の程度継続していることが求められます。

世帯の収入で年収が審査されるケースもある

夫婦共に働いている世帯の場合、永住許可の申請では両者の合計年収で審査されることがあります。ただし、それぞれの年収が審査時に評価されるため、申請者の収入が特に低い場合、不利な要素となり得ます。

なお、配偶者や子供が日本に住んでいて扶養しているケースや、海外に住む家族に定期的に生活費を送金しているケースなどでは、家族の人数に応じて求められる年収の基準が上がります。

永住許可の申請には、その他にも以下のような要件を満たさなければなりません。

  • 素行が善良であること(法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること)
  • その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(罰金刑や懲役刑などを受けておらず、納税などの公的義務を適正に履行していること
  • 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと

そのため、仮に扶養控除を悪用し、実際には生活費を送金していない家族・親族を扶養に入れているような場合、その外国人の永住申請は認められません。

永住許可に必要な年収に影響を与える要素

住んでいる地域や、同居(不要)家族の人数以外にも、永住許可に必要な年収に影響を与える要素はあります。代表的な要素を以下に示します。

どのような在留資格を持っているか

持っている在留資格の種類によって、永住許可に必要な年収が変わることがあります。

例えば、配偶者ビザを持っている人は、就労ビザを持っている人に比べて、永住許可の申請が比較的通りやすいです。

日本人の夫が働き、外国人の妻が主婦であるケースを想定すると、夫の年収が300万円であっても、住む地域や家賃などを総合的に考慮して、安定した生活が可能であると判断されれば永住許可の申請が通ることがあります。もしも妻がパートタイムで働いているならば、その収入も評価に反映されるため、さらに申請が通りやすくなるでしょう。

永住権を申請する理由

永住権を取得するためには、その申請理由も重要です。永住権は、文字通り日本に永住する権利であり、その許可を得るのは決して容易なことではありません。

永住権を申請する人は、現在何らかの在留資格を持っています。出入国在留管理庁としては、この在留資格を更新していくことで永住権がなくても日本に留まること自体は可能であるという見解を持ちます。

こうした中で、永住権の取得に相応しい理由としては、主に以下が考えられます。

  • 日本人と結婚しており共に育てる実子がいるため、その子を日本で育てる必要がある
  • 長年日本に住んでおり母国では親戚がすでに亡くなっているため、生活の基盤が日本に移っている
  • 大きなプロジェクトに携わっていてこれからも続けて日本で活動する必要があり、永住して仕事を続けることで企業に大きな利益をもたらす

上記はあくまでも一例です。本来、永住権を取得する理由は人それぞれであり、それに応じて出入国在留管理庁へのアピールポイントも変わってきます。

永住許可の申請を行う際は、まず自身がなぜ永住権を必要とするのかを明確にしましょう。理由を証明できる書類があれば提出することで、永住権を取得できる可能性が上がります。

永住許可の申請を行うタイミング

永住許可の審査には最大で約1年かかると見込まれます。そのため、申請者が現在持っている在留資格の期間が1年以上残っている時点で、永住許可の申請を行うことが望ましいです。

万が一、永住許可申請の結果を待っている間に現在の滞在資格の有効期限が切れてしまう場合でも、在留資格の更新申請を別途行えば問題ありません。

ちなみに、永住許可の申請には回数制限がないため、申請が一度不許可となった場合でも再び申請できます。不許可となった場合、出入国在留管理庁にその理由を問い合わせることが可能ですが、これは一度のみ認められます。

不許可が続くと再申請時の審査はより厳しくなるため、不許可の理由に関する問い合わせや、再申請時に提出する追加資料の準備などには特に注意が必要です。

終わりに

以上のとおり、永住許可を得るためにはさまざまな条件を満たす必要があり、その中の一つに年収要件があります。年収要件の具体的な金額は公には明示されていませんが、年収が300万円以上ないと難しいのが一般的です。

永住許可の審査が完了するまでには最大で約1年かかることが見込まれるため、申請者が現在持っている在留資格の期間が1年以上残っている時点で永住許可の申請を行いましょう。

永住権の取得を考えている方で、「永住許可の申請について、何から初めてよいのかわからない」「永住権をスムーズに取得できるよう手続きをサポートしてほしい」といった場合は、お気軽にしらき行政書士事務までお問い合わせください。

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