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育成就労について

2022年12月から始まり、16回にわたって行われた有識者会議で、現在の外国人技能実習制度や特定技能制度の改善を通じて、今後日本が外国人労働者をどのように受け入れるかについて詳しく話し合われました。

その結果、2023年11月30日に政府に最終報告書が提出され、外国人労働者をサポートし育成する新しい制度「育成就労」が提案されました。

2024年2月9日、政府はこの新しい制度について方針を決める「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」を開きました。

この会議では、外国人労働者が日本で働き、生活していくうえで必要な支援について話し合われ、より良い共生を目指す方針が決定されました。

そこで本記事では、育成就労制度の概要や、活用する会社にとって想定されるメリット・デメリットなどをまとめました。

※本記事の情報は、2024年3月時点の内容です。

育成就労とは

「育成就労」とは、日本企業が外国人労働者を雇うための新しい制度で、今までの技能実習制度に変わるものです。この制度は、2024年3月現在、具体的な内容が検討されています。

2024年2月9日に政府が決定した方針によると、将来的に従来の技能実習制度(1号から3号まで)は段階的に廃止されることになります。

そして、その代わりに「育成就労」という新しい制度が導入されることになりました。

育成就労と技能実習の違い

将来的に育成就労の制度を活用していくためにも、受入れ企業側では制度の概要をチェックしておくことが大切です。

ここでは、「育成就労」と「技能実習」の2つの制度にみられる違いについて、有識者会議を踏まえて2023年11月30日に政府に提出された最終報告書の内容をもとに説明します。

制度の目的

従来の技能実習制度は、主に国際的な貢献や人材育成を目指していましたが、新しく提案されている「育成就労」制度は、日本での人手不足を補うと同時に、外国人労働者のスキルアップを図ることを目的としています。

この新制度では、基本的に3年間の研修期間を設け、その間に外国人労働者を特定技能1号のレベルまで育てることが予定されています。

現在の企業単独型の技能実習制度については、新しい「育成就労」制度の目的に合致していれば、今後も続けることが可能です。

さらに、グローバル企業が行っている1年以内の育成プログラムは、社内転勤の一環として正式な制度として取り入れることが検討されています。

なお、特定技能制度については、現行制度を改善し続けることで存続させ、外国人労働者の就労はこの制度を中心に構築されていく方向で進められると考えられています。

受入れ可能な職種

有識者会議の最終案によると、「育成就労」制度では、外国人労働者が働ける職種が、これまでの特定技能制度と同じに設定されています。この理由は外国人を特定技能1号のレベルまで育成するためで、技能実習制度とは大きく異なる点です。

技能実習制度では、職種が一致していれば外国人を受け入れることができますが、「育成就労」ではさらに細かい条件が加わります。具体的には、特定技能と同じように「協議会への加入」と「産業分類」の両方が一致しなければなりません。

例えば、スーパーマーケットで惣菜を作る場合、技能実習生なら食料品製造の職種として受け入れ可能でした。

しかし、「育成就労」や特定技能では、スーパーマーケットが小売業に分類されるため、食品製造業としては認められず、受け入れができなくなるのです。

このように、育成就労制度では、技能実習制度と比べて、どの職種で外国人を受け入れられるかについて、より厳しいルールが適用されます。特に、以下の職種では新制度による受け入れが難しくなる可能性がある点を把握しておきましょう。

  • 繊維や衣服関連の仕事
  • コンクリート製品の製造
  • ゴム製品の製造
  • 印刷関連の仕事
  • スーパーマーケットでの食料品製造
  • 輸送機械や器具の製造
  • 紙器製造
  • 木材加工
  • 1年間のみの実習

特定技能で働ける産業分野が基準となるため、今後これらの職種が特定技能制度で受け入れ可能な分野に追加される可能性もあります。

育成就労制度の活用を検討している企業では、今後の動向をこまめにチェックしておくことが望ましいです。

移行条件

下表に、技能実習と育成就労それぞれの移行条件をまとめました。

技能実習
  • 受入れ前:6ヶ月以上もしくは360時間以上の講習
  • 技能実習2号への移行:技能検定基礎級の合格
  • 技能実習3号への移行:技能検定3級の合格
育成就労
  • 受入れ前:N5レベルの日本語能力
  • 受入れ後1年以内:技能検定基礎級合格
  • 特定技能1号への移行:日本語能力A2(N4)に加えて、技能検定3級もしくは特定技能1号評価試験の合格
  • 特定技能2号への移行:日本語能力B1(N3)に加えて、技能検定1級もしくは特定技能2号評価試験合格


上表を見ると分かるように、「育成就労」制度では、技能実習制度よりも日本語の能力がより重要視されています。

技能実習制度が他国の発展を支える人材を育てる目的であったのに対し、育成就労は日本で働く人材を確保することを目的としているため、日本語をしっかりと話せることが求められるようになっているのだと考えられます。

「育成就労」制度では、基本となる滞在期間は3年です。

この期間内に、外国人労働者は特定技能の資格を得るための試験を受け、合格することで滞在資格を「特定技能」に変更する必要があります。

転職・転籍の可否

技能実習では、外国人労働者の転職・転籍は原則として認められていません。

これに対して、「育成就労」制度では、次の3つの条件を全て満たす必要があるものの、外国人労働者の転籍が可能となっています。

  • 同じ職場で1年以上働いていること
  • 技能検定の基礎レベルや、日本語能力試験N5相当の日本語試験に合格していること。
  • 新しい職場が適切であると認められる条件を満たしていること。これには、新しい職場で転籍してきた労働者の割合が一定以下であることや、転籍の過程での紹介や仲介の状況を適切に確認できることなどが含まれます。

また、「育成就労」で配属された後、2年以内に帰国した場合でも、前回とは異なる分野で再度「育成就労」として日本に来て働くことも可能です。

このような対応が取られることで、外国人労働者の受け入れ範囲が広がることが期待されています。

受入れ可能な人数枠

技能実習では、受入れ可能な人数枠は企業の規模に伴って上限があります。育成就労についても、技能実習に準拠する対応が取られる見込みです。

つまり、育成就労においても、技能実習1号と同様に、企業が外国人労働者を受け入れる際、その企業の社員数に応じて、どれだけの外国人を受け入れることができるかが決まります。

さらに、特定技能の制度と同様に、それぞれの業界で設けられている人数上限があり、育成就労を通じて受け入れられる外国人の総数もあらかじめ定められます。

これにより、各分野での外国人労働者のバランスを保ちながら、適切な人数を管理することが目指されています。

支援・保護のあり方

技能実習では、外国人技能実習機構が外国人労働者の支援・保護を管轄していました。

「育成就労」制度の導入に伴い、外国人技能実習を管理する現在の機構が改組され、新しい体制で運営されることになります。

この新体制では、より厳しい管理と監督が実施される見込みです。

また、新しい機構、出入国在留管理局、労働基準監督署といった各機関の連携が強化されるため、法律を守ることの重要性がこれまで以上に強調されます。

法律を守り、適切に運営していると認められた企業には、申請書類の手続きが簡単になるなどのメリットが与えられる予定です。

これにより、優良な企業が外国人労働者を受け入れやすくなることが期待されています。

受入れ企業が育成就労制度を活用するメリット

これまでに技能実習制度と新しい「育成就労」制度の主な違いについて説明してきました。

現在、この制度はまだ提案段階にあり、今後内容が変更される可能性もあります。しかし、現段階で企業が「育成就労」制度を利用することの利点を2点、ご紹介します。

長期雇用が見込める

新しい制度への移行により、特定技能ビザを持つ外国人労働者は、最大5年間の長期雇用が可能になります。

さらに、「特定技能2号」の資格を取得すれば、ビザを更新し続けることで、実質的に在留期間に上限がなくなり、「永住」への道が開かれるでしょう。

これにより、企業は長期にわたって外国人労働者を雇用できるようになる見込みです。

技能実習制度では、技能実習で働いた職種が特定技能ビザで認められている職種と異なることがあり、技能実習を終えた後も同じ企業で働き続けることができない場合がありました。

しかし、新制度ではこのような問題が解消され、外国人労働者の長期雇用が容易になります。

これにより、例えばホテルの清掃業務で働く人も、将来的には現場の責任者としてチームを率いるようなキャリアパスを描くことが可能になります。

日本語能力の高い外国人労働者を雇用できる

新しい「育成就労」制度では、ある程度の日本語能力を持つ人材を対象としています。

つまり、採用される外国人労働者は最初から日本語で基本的な意思疎通が可能であることが想定されています。

特に、介護・宿泊・外食業といった人と接するサービスを中心に提供する職種では、日本語を話せる能力が特に重要視されます。

これまで日本語があまり話せない労働者は、キッチンや清掃のような日本語の必要性が比較的低い仕事からスタートし、その後、日本語能力を向上させることで、より多くの機会を得られるようになっていました。

過去の技能実習制度では、日本に来たばかりの時点で日本語をほとんど話せない人が多かったです。

しかし、「育成就労」制度ではこのような問題が改善され、日本語をある程度話せる人材が採用されるため、仕事でのコミュニケーションがスムーズになるというメリットがあります。

受入れ企業が育成就労制度を活用するデメリット

受入れ企業が育成就労制度を活用する場合、メリットだけでなくデメリットを受けることも想定されます。

制度がスタートする前に把握しておくことで、活用の是非をスムーズに判断できるでしょう。

考えられるデメリットとして代表的な内容を3つご紹介します。

受入れ可能な職種が減る

育成就労の対象職種を特定技能の12分野に限定することにより、働ける職種の範囲が狭まる可能性があります。

しかし、政府は現在、このリストに「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4つの新しい分野を追加することを考えています。

さらに、すでに対象となっている「飲食料品製造業」には、スーパーマーケットでの惣菜調理などの仕事を含めること、そして「素形材・産業機械製造・電気・電子情報関連産業」には、繊維や印刷業務を追加することが議論されています。

これらの変更が行われるかどうかはまだ決定していませんが、今後の更新情報に注目が必要です。

なお、ちなみに直近のデータによれば、特定技能の受入れで特に多いのは「飲食料品製造業分野」「素形材・産業機械製造・電気・電子情報関連産業」の2つです。

関連する業界団体との最終調整が続いていると思われますので、関連する事業者は制度の動向に注目しておきましょう。

転籍されてしまうおそれがある

技能実習制度では原則として転籍が許されていないため、企業からすると一度受け入れた外国人労働者が一定期間働き続けることが期待できました。

しかし、新しい「育成就労」制度では、転籍が可能になるため、育成に投じたコストが無駄になるリスクが生じます。

これを防ぐためには、給料の改善や労働環境の整備など、労働者が離れないように配慮することが重要になるでしょう。

また、「育成就労」制度での転籍を可能にするための条件として、「日本語能力検定A1相当以上」という基準が提案されていますが、これを「低すぎる」と考える声もあります。

そのため、政府ではこの条件の見直しも検討しています。

給料水準が高くなる

「育成就労」制度のもとでは、技能実習制度に比べて、外国人労働者に支払われる給料が高くなると想定されています。

技能実習制度では、参加者はあくまでも学ぶための実習生と見なされていたため、給料水準は低めでした。

しかし、新制度では彼らが「労働者」としての扱いを受けることが強調されるため、支払われる給料は日本人労働者と同等の水準を目指す方向で進むことになります。

さらに、新制度では転籍が容易になるため、給料やその他の雇用条件を改善することが企業側の努力としてより重要になってきます。

終わりに

ここまで「育成就労」制度について、最終報告書をベースにした情報をお伝えしてきましたが、現在はまだ計画段階です。

これから制度が正式に決定される過程で、内容が変わる可能性があることを覚えておきましょう。

「育成就労」制度のスタート時期は、国会での審議の進行状況によって変動する可能性がありますが、予想では2025年4月以降、あるいは2026年4月以降になると考えられています。

技能実習制度から「育成就労」制度への移行は徐々に行われるため、今すぐに技能実習生の受け入れを制限する必要はありませんが、新制度の動向に注目しておきましょう。

今後も新しい情報が入り次第、コラム記事の執筆やご相談対応などを通じて皆さまに情報をお届けします。

もし「育成就労」の利用を検討していて質問がございましたら、お気軽に「しらき行政書士事務所」までお問い合わせください。

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