現在、当方はフリーランスとして活動しています。そこで、雇用ではなくフリーランスとして就労ビザを取得したいのですが、可能でしょうか?もし可能であれば、就労ビザをするにあたって注意すべき点を教えてください。
はじめに結論から述べておくと、フリーランス(個人事業主)の方であっても、就労ビザ(日本で働くことができる在留資格)を取得することは可能です。これまでにも、俳優やアニメ作家・作曲家・画家など、さまざまな事業を行っている外国人フリーランスの方が就労ビザを取得しています。
しかし、フリーランスの方が就労ビザを取得するには、特有の要件があります。そこで今回は、フリーランスとして働くための就労ビザの種類や取得の要件、フリーランスとして日本で働く際の注意点などをご紹介します。
目次
フリーランスとして働くための就労ビザ(在留資格)
フリーランス(個人事業主)として日本で働く際は、企業や団体などに雇用される外国人労働者の方と同じように、就労ビザを取得する必要があります。
しかし、外国人フリーランスの方専用の就労ビザが設けられているわけではありません。そのため、「フリーランスビザ」や「セルフ・スポンサービザ」というような名称の就労ビザも存在しません。
実際には、フリーランスとして手がける業務の内容に応じて、取得すべき就労ビザの種類が決まります。一例を下表にまとめましたので、お役立てください。
取得すべき就労ビザの種類(在留期間) | 業務の例 |
---|---|
技術・人文知識・国際業務(5年、3年、1年または3カ月) | 専門的・技術的知識を必要とする業務(例:IT分野や製造業におけるエンジニア・通訳・法務・会計・海外営業などの事務職など) |
芸術(5年、3年、1年または3カ月) | 芸術上の活動に従事する業務(例:作曲家・画家・アニメ作家など) |
興行(3年、1年、6月、3カ月または15日) | 観客を集めることを目的とした催事に携わる業務(例:俳優・歌手・ミュージシャン・ダンサー・プロスポーツ選手など) |
なお、「日本人の配偶者等」「永住者」「永住者の配偶者等」「定住者」などの在留資格を持っている方であれば、仕事や活動の内容に制限が課されていません。これらの在留資格があれば、就労するための在留資格の取得なしに、フリーランスとして日本で活動することが可能です。
外国人がフリーランスとして就労ビザの取得を検討するケース
外国人がフリーランスとして就労ビザの取得を検討するケースとしては、主に以下が挙げられます。
- これまで日本の英会話学校で講師をしていた人が独立し、フリーランスとなって英語の通訳・翻訳者として活動するケース
- これまでIT企業で雇用されていた人が独立し、フリーランスとなってプログラミングやアプリ開発のエンジニアとして活動するケース など
このように、もともと日本の企業で働いていた外国人の方が独立してフリーランスに転身する場合に、新たに就労ビザの取得を目指すというケースが多く見られます。
フリーランスに関する就労ビザを持つ外国人数の推移
内閣府が公開しているデータによると、日本の全就労者に占めるフリーランス人口の割合は5%程度です。その中でも、本業としてフリーランスをしている人は3%程度とされています。
一方、アメリカの全就労者数に占める本業フリーランス人口の割合は6.9%と、日本の本業フリーランスの割合と比べて2倍以上多いことが分かっており、日本以上にフリーランスの働き方が普及しつつあることが示されています。
また、出入国在留管理庁が公開しているデータによると、技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ外国人の数は2018年末には225,724人だったものが、2022年末には300,045人にまで増加しています。これは、全在留資格の10.1%を占める割合です。
もちろん、技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ外国人の方すべてがフリーランスとして活動しているわけではありませんが、日本において雇用ではなくフリーランスとして就労ビザを取得するケースが増加していることを裏付けるデータだといえます。
フリーランスが就労ビザを取得するための要件
フリーランスが就労ビザを取得するためには、企業で雇用される場合とは異なる要件を満たす必要があります。ここでは、主な要件として、以下の3つを紹介します。
収入が安定しているか
外国人のフリーランスの方が就労ビザを取得する場合、目安として1年間以上の安定した収入(最低20万円以上)が確保されていることを証明しなければなりません。
フリーランスの報酬の決め方はさまざまありますが、特に業務委託契約で月額報酬を得ていると安定した収入を得ていることを証明しやすいです。一方、単発やプロジェクトごとでの報酬しか得ていない場合、継続的な報酬を確保できておらず、収入が安定しているとは判断されにくいです。
ちなみに、収入は複数社と業務委託契約を締結し合算することも認められています。
継続的かつ安定的な契約を締結できているか
就労ビザは、継続的かつ安定的に仕事をする見込みがある場合に取得できます。
フリーランスで就労ビザを申請する場合、請負契約や業務委託契約であっても、在留資格の基準を満たすだけの長期で安定的な契約であることを証明しなければなりません。
このとき、1社と数か月間仕事をする契約を締結しているだけでは継続的かつ安定的な就労とは判断されず、不許可になるおそれがあります。
また、たとえ複数社との間で業務委託契約を締結していても、業務の終了時期と次の業務の開始時期との間隔が空きすぎてしまうと、継続的な就労と判断してもらえない可能性があります。
そのため、年単位で仕事をする業務委託契約を1社以上確保するだけでなく、同時並行で複数社と別途、業務委託契約を締結しておくことが望ましいです。
なお、在留資格の許可基準を満たすだけの長期契約を日本の企業や事業主と締結しており、その契約先が受入先として就労ビザの認定申請の代理人となって申請できる場合、許可される可能性が高まります。
申請代理人なしでの就労ビザの認定申請は許可されにくいため、フリーランスとして認定申請したい場合は、契約先が申請代理人となって申請することが理想です。
適切な業務内容か
フリーランスとして行う業務の内容は、取得した就労ビザによって定められています。原則として、取得した就労ビザでできる業務の範囲外の仕事は行えません。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザで行える業務は、専門的・技術的知識を必要とする業務のみです。そのため、出入国在留管理庁によって、専門性が低い仕事や単純作業の仕事であるとみなされてしまうと、「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザを取得できません。
フリーランスとして日本で働く際の注意点
ここからは、就労ビザを取得した後、フリーランスとして日本で働くうえで、特に注意しておくべき内容を4つ解説します。
1.確定申告の実施
フリーランスとして日本で働く場合、自分で1年間の収入を算出し、そこから納める税金の額を計算して税務署に報告しなければなりません。これを確定申告といいます。確定申告では、毎年1月1日~12月31日までの売上を翌年の決められた日付までに税務署に届け出る必要があります。
当然、税金の支払いも怠らずに実施してください。支払う税金の代表的なものは住民税、所得税です。これらの税額は確定申告により決められ、納付書が届き支払う仕組みです。
在留期間更新時の審査基準に「納税義務を履行していること」があり、税金を滞納・未納すれば審査に悪影響が及びます。
2.社会保険の加入
フリーランスの場合、自分で国民年金・国民健康保険への加入手続きを行い、支払いをしなければなりません。日本では国民皆年金・保険の制度が敷かれており、外国人であることを理由に免除される規定はありません。
加の手続きは、お住まいを管轄する市区町村役場にて実施します。
なお、支払いを滞納すれば、永住者の申請時に悪影響が及びます。そのため、将来的に永住権の取得を検討している場合は特にご注意ください。
3.契約機関との契約終了時の届出
契約機関の名称・所在地に変更が生じた場合や、契約機関の消滅、契約機関との契約の終了・新たな契約の締結があったときには、14日以内に法務省令に定められた手続き(届出)を行う必要があります。
この手続きを怠ると、在留期間更新申請の際の「素行要件」のひとつ「入管法に定める届出等の義務を履行していること」を満たしていないことになり、更新が不許可になったり、更新される在留期間が短くなったりおそれがあるため注意しましょう。
4.人を雇用する際の手続き
フリーランスとして日本で活動していくなかで売上が拡大し、人の雇用を検討する際にも注意が必要です。
人を雇用して事業を進めていく場合、「経営・管理」の就労ビザに切り替えなければならないケースがあります。そのまま就労ビザを切り替えずに活動を続けてしまうと更新時に不許可になってしまう可能性があり、日本国内で事業活動ができなくなってしまうおそれがあるためご注意ください。
終わりに
以上のとおり、フリーランスの方であっても、就労ビザを取得することは可能です。ただし、「収入が安定しているか」「継続的かつ安定的な契約を締結できているか」「適切な業務内容か」といった要件を満たしている必要があります。
また、フリーランスとして日本で活動していく際にはいくつかの注意点もあります。
就労ビザの取得を考えているフリーランスの方で、「在留資格の申請が初めてで、何から初めてよいのかわからない」「就労ビザをスムーズに取得できるよう手続きをサポートしてほしい」といった場合は、お気軽にしらき行政書士事務までお問い合わせください。