特定技能制度では「直接雇用」が基本となります。特定技能は、日本の人手不足を補うために導入された在留資格であり、建設業・外食業・介護業など16分野において、一定の技能と日本語能力を持つ外国人の就労を認めています。
しかし、技能実習制度と異なり、多くの業種で「直接雇用」が原則となっており、企業と外国人が雇用契約を結ぶ形になります。
本記事では、特定技能の外国人を直接雇用する企業側の要件、契約の流れ、注意点、そして外国人の進路について詳しく解説します。特定技能制度の適切な活用方法を理解し、スムーズな採用・雇用管理につなげてください。
目次
特定技能の直接雇用が基本となる理由と背景
特定技能制度において、外国人労働者は基本的に企業と直接雇用契約を結ぶ必要があります。つまり、正社員や契約社員としての雇用が基本です。その理由として、主に以下の3つが挙げられます。
労働条件の適正化と雇用の安定を確保するため
外国人労働者の労働環境を適切に管理するため、企業が直接雇用する形が求められています。給与の未払いや劣悪な労働環境といった問題を防ぐことが可能です。
直接雇用の主なメリットを以下にまとめました。
- 企業が賃金・労働条件を明確に定め、安定した雇用を提供できる
- 外国人労働者が労働基準法や社会保険の適用を受けやすくなる
- 適切な労働管理が行われ、労働者の権利が保護される
技能実習制度との違いを明確にするため
特定技能制度は、技能実習制度とは異なり、即戦力としての外国人労働者を確保するための制度です。そのため、技能実習制度のような「監理団体(組合)を介した間接雇用」は原則認められていません
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比較項目 |
特定技能 |
技能実習 |
|---|---|---|
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雇用形態 |
直接雇用が基本 |
監理団体を通じた間接雇用が可能 |
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目的 |
労働力の確保(即戦力) |
技能習得と母国への技術移転 |
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転職の可否 |
一定の条件下で可能 |
原則不可 |
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労働契約 |
労働基準法に基づく契約 |
技能実習計画に基づく契約 |
技能実習制度のように仲介業者が介在すると、労働条件が不透明になりやすく、外国人労働者の権利が損なわれるリスクがあります。 そのため、特定技能では「企業と外国人が直接契約する形」が基本とされています。
雇用主が責任を持ってサポートするため
特定技能制度では、企業が外国人労働者の生活面や職場適応を支援する「支援計画」の実施が義務付けられています。直接雇用を基本とすることで、雇用主が責任を持ってサポートできるようにするための仕組みです。
企業が行う支援内容の例を以下にまとめました。
- 生活支援:住居の確保、日本の生活ルールの説明
- 職場適応支援:業務に関する研修、相談窓口の設置
- 言語支援:日本語学習の機会提供
こうした支援により外国人労働者がスムーズに職場や地域社会に適応し、長期間安定して働くことができる環境が整えられます。
特定技能の外国人を直接雇用する際の要件
特定技能の外国人を直接雇用する際に押さえておきたい要件をまとめました。
雇用する企業が満たすべき要件
特定技能の外国人を受け入れる企業で満たすべき基本的な要件をピックアップしてまとめました。
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要件 |
詳細 |
|---|---|
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事業の適正性 |
法令を遵守し、安定的に事業を運営していること |
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労働条件の適正化 |
特定技能外国人に対して、日本人と同等以上の報酬を支払うこと |
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社会保険の加入 |
健康保険、厚生年金、雇用保険に加入させること |
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支援体制の整備 |
外国人が円滑に働けるよう、生活・職場環境の支援を行うこと |
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過去の不正行為がない |
技能実習生の不適切な管理や労働基準法違反がないこと |
※上記はあくまでも代表例であり、その他にも要件は存在します。
企業がこれらの要件を満たしていない場合、特定技能外国人を雇用することはできません。 したがって、雇用の前に必ず社内の状況を確認し、必要な準備を整えることが重要です。
特定技能外国人の直接雇用が可能な業種
特定技能外国人を採用できるのは、以下の16業種に限られています。
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業種 |
主な仕事内容 |
|---|---|
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①介護 |
高齢者の介護、生活支援 |
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②ビルクリーニング |
オフィス・商業施設の清掃業務 |
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③工業製品製造業 |
工業製品の加工・製造 |
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④建設業 |
土木・建築工事 |
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⑤造船・舶用工業 |
船舶の製造・修理 |
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⑥自動車整備業 |
自動車の点検・修理 |
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⑦航空業 |
空港グランドハンドリング・整備 |
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⑧宿泊業 |
ホテルのフロント・清掃業務 |
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⑨農業 |
農作物の栽培・収穫 |
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⑩漁業 |
養殖・漁獲作業 |
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⑪飲食料品製造業 |
食品の加工・製造 |
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⑫外食業 |
飲食店での接客・調理 |
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⑬自動車運送業 |
バス、タクシー、トラックを運転し、旅客や貨物を輸送する業務 |
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⑭鉄道 |
軌道整備、電気設備整備、車両整備、車両製造、運輸係員 |
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⑮林業 |
育林、素材生産、林業用種苗の育成(育苗)、原木生産を含む製炭作業 |
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⑯木材産業 |
製材業、合板製造業などに関連する木材の加工 |
特定技能の直接雇用における契約の流れと必要な手続き
本章では、特定技能外国人の直接雇用にあたって必要となる、採用プロセスや提出書類、在留資格申請の手続きを順番に解説します。
特定技能外国人の採用プロセス
特定技能の外国人を直接雇用する場合、大まかに以下の流れで採用を進めるのが一般的です。
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ステップ |
詳細 |
|---|---|
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①求人募集・採用計画の策定 |
特定技能外国人の受け入れ人数・条件を決定し、求人を出す |
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②求職者の選考・面接 |
書類審査・面接を行い、採用候補者を決定 |
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③雇用契約の締結 |
労働条件を明記した契約書を作成・締結 |
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④支援計画の策定 |
支援計画に、支援責任者の氏名や役職、登録支援機関に委託する場合はその機関名を含む10項目を記載する |
|
⑤在留資格の申請 |
出入国在留管理局に「特定技能1号」の在留資格変更申請を行う |
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⑥ビザ取得・入国手続き |
在留資格認定証明書を取得し、入国管理局で手続き |
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⑦就業開始 |
企業が外国人労働者を迎え入れ、業務研修を実施 |
特定技能の在留資格取得に必要な手続き
特定技能の在留資格取得には、大きく分けて以下の3つのケースがあります。
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ケース |
対象者 |
必要な手続き |
|---|---|---|
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①日本国内で在留資格を変更する場合 |
すでに「留学」や「技能実習」の在留資格を持つ外国人 |
在留資格変更許可申請 |
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②海外から新たに入国する場合 |
海外から特定技能で来日する外国人 |
在留資格認定証明書交付申請 |
在留資格取得の申請に必要な書類
外国人の在留資格を取得するためには、本人と受け入れ企業の両方が必要な書類を準備する必要があります。ここでは、それぞれに求められる主な必要書類を分かりやすくまとめました。
外国人本人が準備する書類
外国人本人が提出する書類は、在留資格の種類や雇用形態によって異なります。
- 日本在住の外国人を採用する場合
〇 在留資格変更許可申請書 - 海外在住の外国人を採用する場合
〇 在留資格認定証明書交付申請書 - 共通で必要な書類
〇 顔写真(4cm×3cm)
〇 特定技能外国人の報酬に関する説明書
〇 特定技能雇用契約書の写し
〇 雇用条件を示す書類の写し
〇 賃金の支払いに関する書類
〇 雇用の経緯を説明する書類
〇 徴収費用に関する説明書
〇 健康診断の結果(個人票)
〇 受診者の申告書
〇 1号特定技能外国人支援計画書(該当する場合)
受け入れ企業が準備する書類
受け入れ企業は、事業の健全性や雇用の適正性を証明する書類 を提出する必要があります。
- 企業情報・事業関連の書類
〇 特定技能所属機関概要書
〇 登記事項証明書
〇 営業許可証(必要な業種の場合) - 役員および企業の適正性を証明する書類
〇 業務執行に関わる役員の住民票(写し)
〇 特定技能所属機関の役員に関する誓約書
〇 社会保険料納入状況回答票
〇 税務署発行の納税証明書
〇 市町村発行の納税証明書 - 経営・財務状況に関する書類
〇 確定申告書および決算書の写し
〇 労働保険料等納付証明書 - その他の書類(必要に応じて提出)
〇 協議会入会証(特定技能制度の協議会に加入している場合)
〇 受入計画認定証の写し(建設分野の場合)
特定技能外国人の間接(派遣)雇用は可能か?
特定技能制度では、原則として直接雇用が義務付けられていますが、一部の業種では派遣雇用が認められています。
派遣雇用が可能な業種は、以下のとおりです。
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業種 |
理由 |
|---|---|
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漁業、農業 |
季節や地域によって繁忙期と閑散期があり、正社員として雇ったのに仕事がない期間が発生したなどのデメリットを防ぐため。 農業については同じ地域で同じ作物を育てていたとしても、事業所ごとにより多くの人手を必要とする期間も異なるので、短期派遣での雇用を充実させることが雇用側にとっては望ましい。 |
|
建設 |
工事ごとに異なる現場での作業が必要となるため。 |
|
造船・舶用工業 |
専門性の高い技術が求められ、プロジェクト単位での柔軟な労働力調整が必要とされるため。 |
派遣の場合でも支援や特定技能協議会への入会は必要?
特定技能外国人を雇用する際、支援業務や特定技能協議会への加入義務は雇用主(派遣元企業)にあります。
派遣元企業の義務
特定技能外国人を派遣する場合、雇用契約を結ぶのは派遣元企業 となるため、以下の義務が発生します。
- 特定技能外国人への支援業務(生活支援や職業サポートなど)
- 特定技能協議会への加入(特定技能制度の適正運用のため)
派遣先企業(受け入れ企業)の立場
派遣された特定技能外国人を受け入れる派遣先企業には、支援業務や特定技能協議会への加入義務はありません。そのため、派遣制度を活用することで、受け入れ企業の負担を軽減することが可能です。
特定技能外国人を派遣で雇用する際の要件
特定技能外国人を派遣契約で雇用する場合、派遣先企業と派遣元企業の両方が一定の要件を満たす必要があります。ここでは、それぞれの必須要件を詳しく解説します。
派遣先企業が満たすべき要件
特定技能外国人を受け入れる派遣先企業 は、以下の4つの要件をすべてクリアしなければなりません。
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要件 |
詳細 |
|---|---|
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法令を遵守していること |
労働基準法・社会保険関連法・税法などの規定を守っていること |
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直近1年以内に同業務の労働者を解雇していないこと |
特定技能外国人が従事する予定の業務と同じ仕事をしていた労働者を過去1年間に解雇していないこと |
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過去1年以内に行方不明者を発生させていないこと |
企業の責任による管理不足で、行方不明になった外国人を出していないこと |
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刑罰法令違反などの欠格事由に該当しないこと |
過去に刑罰を受けていないこと、または企業が重大な法令違反を起こしていないこと |
派遣元企業が満たすべき要件
特定技能外国人を派遣する 派遣元企業 は、以下の条件を満たす必要があります。
- 特定技能外国人を派遣できる資格を持った事業者であること
- 該当分野に関連のある事業者であること
業種ごとに追加の要件が定められている場合があるため、事前に確認することが重要です。
特定技能外国人の直接雇用にまつわるトラブルと解決策
特定技能外国人の直接雇用にあたって、企業側・外国人側で注意すべき点も少なからずあります。雇用に際して生じる代表的なトラブルと解決策をまとめました。
直接雇用の注意点とトラブル防止策
特定技能外国人を直接雇用することには多くのメリットがある一方で、注意すべきポイントもあります。適切な準備と対策を行うことで、スムーズな雇用関係を築くことができます。
直接雇用における主な課題を以下にまとめました。
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課題 |
詳細 |
|---|---|
|
言語や文化の違いによる意思疎通の困難 |
労働者の日本語能力や文化的な適応が不十分な場合、企業側との意思疎通が難しくなる可能性があります。 |
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企業側のサポート負担 |
住居の確保や生活支援の負担 が発生し、これを放置すると労働者の定着率が低下するリスクがあります。 |
|
契約内容の不明確さがトラブルを引き起こす |
賃金・労働時間・福利厚生などの契約内容が不明確だと、後々トラブルの原因に なる可能性があります。 |
こうした課題を防ぐには、以下のような対策を講じることが大切です。
|
対策 |
詳細 |
|---|---|
|
労働契約の明確化 |
契約書の内容(賃金、労働時間、福利厚生など)を明確に記載し、双方が理解したうえで締結する。労働者が内容を正しく理解できるよう、必要に応じて母国語での説明を行う。 |
|
言語・文化の壁を乗り越えるサポート |
日本語が不自由な労働者に対して、通訳や翻訳サポートを用意する。異文化理解を深める研修を実施し、企業側と労働者双方の理解を促進する。 |
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相談窓口の設置と定期的な面談の実施 |
労働者が困ったときに気軽に相談できる窓口を設置する。定期的な面談を行い、労働環境や生活状況の確認をすることで、問題を早期に発見し解決する。 |
|
法規制の理解と適切な運用 |
企業側は特定技能制度の法規やガイドラインを正しく理解し、適切な対応を行うことが重要。適正な雇用管理を行い、労働者が安心して働ける環境を整える。 |
安心できる受け入れ企業の選び方
特定技能外国人として日本で働く方からすると、信頼できる受け入れ企業を選ぶことが、安心した就労環境を確保するための重要なポイントです。以下の点を意識しながら、慎重に企業を選びましょう。
企業の評判や実績を確認する
まず、その企業が過去に特定技能労働者を受け入れた実績があるかどうかを調べましょう。
- 企業の公式サイトや求人情報をチェック
- 過去の労働者の評判や口コミを調査
- 特定技能制度に関する適正な手続きを行っているかを確認
過去に特定技能労働者を受け入れ、良好な雇用環境を提供している企業は、安心して働ける可能性が高いです。
面接時に労働条件とサポート体制を確認する
面接の際には、以下のポイントについて具体的に質問し、企業のサポート体制を確認しましょう。
- 給与や労働時間、福利厚生の詳細
- 住宅の提供や生活支援があるか
- トラブルが発生した際の相談窓口の有無
面接時にこうした質問をすることで、企業が労働者のサポートにどれだけ力を入れているかを判断できます。
日本語学習や生活支援の充実度を確認する
日本での生活にスムーズに適応するためには、日本語学習や生活支援のサポートが充実している企業を選ぶことが重要です。こうした支援が整っている企業は、労働者の定着率が高く、働きやすい環境が整っている可能性が高いです。
最終的には、企業の公式情報や実績をもとに、自分の希望に合った企業を慎重に選ぶことが大切です。
特定技能外国人のキャリアと進路の選択肢
特定技能の在留資格を取得して日本で働く外国人にとって、将来のキャリア設計は重要な課題です。 特定技能1号の在留資格は最長5年間の滞在が可能ですが、永住権や高度な職種へのキャリアアップを目指す場合、適切な進路選択が必要になります。
本章では、特定技能外国人が将来的に選べるキャリアパスや進路の選択肢について詳しく解説します。
特定技能から他の在留資格へ変更できるか?
特定技能からの変更が可能な在留資格には、主に以下のようなものがあります。
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在留資格 |
主な職種・活動内容 |
変更の要件 |
|---|---|---|
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特定技能2号 |
介護分野以外 |
特定技能1号での業務経験+試験合格 |
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技術・人文知識・国際業務 |
ITエンジニア、通訳、マーケティング |
大学卒業または実務経験 |
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高度専門職 |
研究者、コンサルタント、医師 |
高い専門性と高収入 |
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経営・管理 |
会社経営者、起業家 |
事業計画書の提出、資本金500万円以上 |
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永住者 |
すべての職種 |
10年以上の在留、日本社会への適応 |
特に、以下の点に注意しておきましょう。
- 技術・人文知識・国際業務へ変更するには、学歴や専門的な職務経験が必要
- 経営・管理の在留資格に変更すれば、日本で起業することも可能
- 特定技能1号のままでは永住申請できないため、長期的に日本に住みたい場合は変更が必要
特定技能の在留期間の上限とその後の選択肢(スキルアップ、転職)
特定技能の在留資格には上限があり、特定技能1号の場合は最長5年間です。 特定技能1号の在留期間が終了する前に、以下のいずれかの選択肢を検討する必要があります。
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選択肢 |
概要 |
メリット |
デメリット |
|---|---|---|---|
|
①特定技能2号への移行 |
より高度な技能を生かし、無期限の在留資格を取得 |
無期限の在留・家族帯同可能 |
所定の試験に合格する必要 |
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②他の在留資格への変更 |
「技術・人文知識・国際業務」「高度専門職」などへの変更 |
高収入の職種へキャリアアップが可能 |
学歴・職歴が必要 |
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③転職(特定技能の別業種へ移行) |
他の特定技能の業種に転職し、新たに5年間の在留資格を取得 |
経験を活かして新たな業界に挑戦可能 |
特定技能試験を再受験する必要あり |
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④帰国 |
在留期間満了後に母国へ帰国 |
再申請すれば日本での再就労も可能 |
日本でのキャリアを継続できない |
日本での就労を継続したい場合、計画的な準備が重要です。
参考:出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック~特定技能外国人の雇用を考えている事業者の方へ~」
終わりに
特定技能の制度を活用し、外国人を直接雇用することは、日本の企業と労働者の双方にとって大きなメリットがあります。 しかし、適正な雇用契約の締結、労働環境の整備、在留資格の管理など、慎重に対応すべきポイントも多くあります。
お互いにとって最適な雇用環境を実現するために、企業と外国人労働者が共に成長し、持続可能な雇用関係を築いていきましょう。
その中でも在留資格の申請手続きに不安がある場合は、行政書士などの専門家に相談し、正確な情報をもとに進めることが重要です。
しらき行政書士事務所では、在留資格申請に関する初回相談を無料で対応しております。
- 対面での相談が難しい方
- 遠方にお住まいの方
- 忙しくて受付時間内に相談できない方
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