近年、日本の人手不足解消の手段として特定技能制度を活用した外国人労働者の雇用が注目されています。特に、ベトナム人は日本企業での就労意欲が高く、技能実習や特定技能の在留資格を取得して働くケースが増えていることから、多くの企業がベトナム人の雇用に関心を持っています。
ベトナム人の特定技能労働者を雇用することで、企業は人材不足の解消や業務の効率化を図ることができる一方で、雇用にあたっては在留資格の取得手続きや適切な受け入れ体制の整備が求められます。また、文化や言語の違いを理解し、職場環境を整えることが、円滑な雇用の成功につながります。
本記事では、特定技能制度を利用してベトナム人を雇用する方法、採用の流れ、必要な手続き、雇用のメリットや注意点について詳しく解説します。ベトナム人の雇用を検討している企業担当者の方にとって、実践的で役立つ知識を提供する内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
特定技能で雇用されるベトナム人の動向
日本で働く外国人労働者の数は年々増加しており、平成19年に届出が義務化されて以降、過去最高を更新し続けています。この増加の大きな要因のひとつがベトナム人労働者の増加です。
令和5年10月末時点では、外国人労働者の総数は約205万人に達し、そのうちベトナム人は約52万人(全体の25.3%)を占め、最も多い国籍となっています。
特定技能の在留資格で働くベトナム人労働者の数も急増しています。令和6年6月末時点で、特定技能の在留資格を持つ外国人労働者は約25万人となり、そのうちベトナム人は12.6万人(全体の50%以上)を占めています。
また、近年の特定技能在留ベトナム人労働者の増加数は以下の通りです。
• 令和4年12月末〜令和5年6月末:20,353人
• 令和5年6月末〜令和5年12月末:13,158人
• 令和5年12月末〜令和6年6月末:16,184人
これらのデータからも、日本におけるベトナム人特定技能労働者の需要が高まり続けていることがわかります。
参考:厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」
出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況(令和6年6月末)」
特定技能のベトナム人を雇用する魅力
特定技能制度を利用してベトナム人を雇用することで、企業にとって以下のような利点があります。
①勤勉で真面目な働きぶり
ベトナム人労働者は責任感が強く、与えられた仕事に対して真面目に取り組む傾向があります。特に、ルールや指示をしっかり守りながら作業を進める姿勢が評価されています。
②日本語を学ぶ意欲が高い
多くのベトナム人は、日本での就労に向けて積極的に日本語を学ぶ意欲を持っています。特に、特定技能試験を受ける際には一定の日本語能力が求められるため、日本語のスキル向上に努める人が多いのが特徴です。
③協調性があり、チームワークを重視
ベトナム人は仲間との協力を大切にする文化を持っており、チームワークを重視する傾向があります。日本の職場環境にも馴染みやすく、周囲と協力しながら円滑に業務を進めることができる点も魅力の一つです。
ベトナム人労働者のこうした特性を活かすことで、企業の生産性向上や職場の活性化にもつながるでしょう。
④他の在留資格と比べて就労しやすい
特定技能ビザ全般に言えることとして、他の在留資格と比べて就労しやすいという大きな利点があります。
特定技能1号では最長5年間の滞在が可能で、特定技能2号に移行すればさらに長期間の滞在が認められます。さらに、条件を満たせば家族の帯同も可能になるため、外国人労働者にとってより安定した就労環境を築くことができます。
また、企業側にとっても、未経験者を技能実習生として受け入れ、一定のスキルを身につけた後に特定技能で継続雇用することで、慢性的な人手不足の解消や中長期的な事業の発展につなげることができます。
特定技能のベトナム人を雇用する条件
特定技能のベトナム人を雇用するための条件は、企業側の条件とベトナム人側の条件に分かれます。それぞれの条件を順番に解説します。
企業側の条件
企業側の主な条件は、以下のとおりです。
①日本人と同等以上の給与を支払うこと
外国人労働者に対して、日本人と比べて不当に低い給与を設定したり、特別な費用を差し引いたりすることは認められません。
例えば、ベトナム人だから、日本語が不自由だからといって、基本給を下げる、手当を支給しない、不当な天引きを行うといった行為は違法です。
出入国在留管理局の審査では、給与が日本人と同等以上かどうか厳しくチェックされるため、適正な給与を支給するよう注意しましょう。
②過去1年以内に会社都合での解雇や行方不明者を出していないこと
特定技能ビザでベトナム人労働者を雇用するには、企業側が過去1年以内に会社都合での解雇や退職者を出していないことが条件となります。
また、失踪者や行方不明者を出した企業も、新たに特定技能外国人を雇用することが制限される可能性があるため、労働環境の整備や適切な管理が求められます。
③過去2年間に外国人支援の経験がある、または登録支援機関に委託すること
企業が特定技能外国人を受け入れるためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 過去2年間に「技術・人文知識・国際業務」や「技能実習」などの在留資格を持つ外国人を支援した実績がある
- 企業の担当者が、過去2年間に外国人労働者の生活相談業務に携わった経験がある
もし上記の経験がない場合は、特定技能外国人の支援を専門とする「登録支援機関」に支援業務を委託する必要があります。
登録支援機関を選定し、毎月の支援委託料を支払う必要がある点にも注意が必要です。
また、支援業務は基本的に外国人の母国語で行うことが求められるため、ベトナム人を雇用する場合は、ベトナム語対応の登録支援機関を選ぶことが重要です。
④該当する分野の協議会に加入すること
特定技能外国人を雇用する企業は、例えば以下のように該当分野ごとの協議会に加入する義務があります。
- 建設分野:「一般社団法人 建設技能人材機構(JAC)」
- 介護分野:「介護分野における特定技能協議会」
- 農業分野:「農業特定技能協議会」
基本的には、雇用後4カ月以内に加入すればよいですが、建設業や製造業など一部の分野では、雇用前の加入が必要となるため、事前に確認しましょう。
ベトナム人側の条件
雇用を希望するベトナム人が、以下の①または②の条件を満たしているか確認する必要があります。
①日本で「技能実習2号」を修了していること
日本で 技能実習2号を良好に修了している場合、特定技能の業務区分に該当すれば、技能試験や日本語試験を受けずに特定技能へ移行できます。
具体例は以下のとおりです。
- 技能実習2号で「とび」作業を修了 → 「建設(とび)」の特定技能へ移行可能
- 技能実習2号で「そう菜加工」作業を修了 → 「飲食料品製造業全般」の特定技能へ移行可能
②技能試験と日本語試験に合格している
技能実習2号を修了していない場合や、他の在留資格から特定技能に変更する場合 は、以下の2つの試験に合格していることが必要です。
- 技能試験(分野別)
a. 介護分野→介護技能評価試験
b. 農業分野→耕種農業全般・畜産農業全般の農業技能測定試験 - 日本語試験(どちらかに合格すればOK)
a. 国際交流基金日本語基礎テスト
b. 日本語能力試験(JLPT)N4以上
介護分野では、通常の日本語試験に加えて「介護日本語評価試験」にも合格する必要があるため注意が必要です。
特定技能のベトナム人を雇用する方法・手段
ベトナム人を特定技能で雇用する申請の流れは「日本に在留しているベトナム人を雇用するのか」「海外に在留しているベトナム人を雇用するのか」によって異なります。
それぞれの申請の流れをお伝えしていきます。
現地のベトナム人を採用するケース
以下に、海外にいるベトナム人を特定技能として採用する際の大まかな手順を示します。
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ステップ |
補足 |
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①受入企業と送出機関の契約締結 |
海外在住のベトナム人を雇用する場合、受入企業とベトナムの送出機関が「労働者提供契約」を締結する必要があります。 この契約では、以下の事項を取り決めます。
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②特定技能の雇用契約締結 |
受入企業はベトナム人労働者と特定技能に関する雇用契約を結びます。この契約は、日本の労働基準法に準拠し、適切な労働条件が設定されている必要があります。 |
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③推薦者表の発行申請 |
契約締結後、受入企業とベトナム人労働者は、送出機関を通じて「推薦者表」の承認および発行手続きを行います。ベトナム人労働者の 技能や職務経験を証明する重要な書類であり、特定技能の在留資格申請に必要となります。 |
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④在留資格認定証明書の申請・交付 |
労働者は地方出入国在留管理局にて「特定技能」の在留資格認定証明書を申請します。交付までの審査期間は約3週間かかります。 |
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⑤ビザの申請 |
在留資格認定証明書が発行されたら、ベトナム人労働者は日本大使館または領事館でビザの申請を行います。ビザ発給には審査期間を含め約3週間かかります。 |
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⑥入国・就労開始 |
ビザが発給され次第、ベトナム人労働者は日本に入国し、受入企業での就労を開始します。 |
在留資格認定証明書やビザの発行には時間がかかるため、企業が希望する就労開始日から逆算し、余裕をもって手続きを進めることが大切です。
日本国内のベトナム人を採用するケース
日本国内にいる特定技能の在留資格を持つベトナム人を雇用する場合、以下の手順を踏むのが一般的です。
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ステップ |
補足 |
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①雇用契約の締結 |
まず、雇用企業は採用予定のベトナム人と「特定技能」に関する雇用契約を結びます。契約書には以下の内容を明記する必要があります。
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②推薦者表の承認・発行 |
ベトナム人を特定技能で雇用する場合、現地の送り出し機関を通じて「推薦者表」の承認・発行を受ける必要があります。この書類は、働く外国人の技能や経歴を確認するためのものです。 推薦者表には、以下の情報が記載されます。
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③在留資格変更許可申請 |
雇用予定のベトナム人は、地方出入国在留管理局に「特定技能」への在留資格変更申請を行う必要があります。 ※ 2021年2月15日以降、申請時に「推薦者表」の提出も義務付けられています。 在留資格の変更には約2ヶ月かかるため、余裕をもって申請することが大切です。 |
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④就労開始 |
在留資格の変更が許可されれば、正式に勤務を開始できます。 |
特定技能のベトナム人を雇用するための費用
特定技能のベトナム人を雇用する際に発生する代表的な費用は、以下のとおりです。
登録支援機関への支援委託料
- 費用:毎月 2~3万円程度
- 備考:登録支援機関に業務を委託する場合、具体的な費用は各機関に確認が必要
JAC(建設分野のみ)の受入負担金・加入費
- 費用:数十万円程度
- 備考:詳細な金額は JAC(建設技能人材機構)または関連団体 へ問い合わせが必要
出入国在留管理局への収入印紙代
- 費用:4,000円(申請手続き時に必要)
在留資格変更許可申請の代行手数料(行政書士等に依頼する場合)
- 費用:数万円~
- 備考:具体的な金額は 依頼する行政書士や手続き内容により異なるため、事前に確認が必要
具体的な金額は 登録支援機関やJAC、行政書士などに確認し、準備しておきましょう。
特定技能のベトナム人を雇用する際の注意点
特定技能のベトナム人を雇用する際は、以下の注意点を把握しておきましょう。
DOLAB認定の送出機関を利用する必要がある
ベトナムと日本は 二国間協定 を結んでおり、ベトナムから労働者を受け入れる際はDOLAB(海外労働管理局)の認可を受けた 送出機関 を通じた手続きが必要です。
DOLABとは?
ベトナムの労働・傷病兵・社会問題省(MOLISA)傘下の機関で、海外労働者の管理を担当しています。
手続きの流れ
DOLAB認定の送出機関を通じて 労働者提供契約を締結します。DOLABが契約を承認すると、日本企業はベトナム人労働者と雇用契約を結ぶことが可能です。
駐日ベトナム大使館で「推薦者表」を取得する必要がある
日本の企業がベトナム人と雇用契約を結んだ後、送出機関を通じてDOLABへ申請し「推薦者表」 を取得する必要があります。
推薦者表とは、ベトナム人労働者のスキルや経験を証明し、日本での在留資格認定証明書(COE)申請に必要となる書類です。
推薦者表がないとCOEを申請できず、入国手続きが進められません。申請や発行は基本的にベトナム語で行われるため、ベトナム語に対応できる人材が対応するとスムーズです。
終わりに
特定技能制度を活用してベトナム人を雇用することは、人手不足の解消だけでなく、企業の国際化や業務の効率化にも貢献する有効な手段です。特に、ベトナム人労働者は勤勉で日本の文化にも適応しやすいため、多くの企業が積極的に採用を進めています。
しかし、雇用を成功させるためには、在留資格の取得手続きや適切な受け入れ体制の整備が欠かせません。特定技能の制度を正しく理解し、雇用の流れや必要な手続きを確実に進めることが重要です。不安や疑問がある場合は、行政書士などの専門家に相談し、正確な情報をもとに手続きを進めましょう。
しらき行政書士事務所では、在留資格の申請手続きに関して、初回相談無料で対応しております。
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