近年、日本では深刻な人手不足を解消する手段の一つとして、「特定技能制度」を活用した外国人労働者の受け入れが注目されています。その中でもバングラデシュ人は、日本で働く意欲が高く、技能実習や特定技能の在留資格を取得して就労するケースが増えているため、多くの企業が関心を寄せています。
バングラデシュ人の特定技能労働者を採用することで、企業は人材不足の解消や業務の効率化を図ることが可能です。
ただし、雇用にあたっては 在留資格の取得手続きや適切な受け入れ体制の整備などが求められます。また、文化や言語の違いを理解し、職場環境を整えることも、スムーズな雇用につながる重要なポイントです。
本記事では、特定技能制度を利用してバングラデシュ人を雇用する流れ、必要な手続き、メリットや注意点について詳しく解説します。バングラデシュ人の採用を検討している企業担当者の方にとって、実践的に役立つ情報を提供していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
特定技能で雇用されるバングラデシュ人の動向
日本に在留するバングラデシュ人の数は 2024年6月末時点で31,536人 と、決して大規模とは言えません。しかし、特定技能の在留資格で滞在するバングラデシュ人は 2021年6月末からの3年間で16人から359人へと急増し、 2,143%という飛躍的な伸びを見せています。
この背景には、日本側の受け入れ体制の整備が進んだことが挙げられます。特定技能制度を活用することで、バングラデシュ人の雇用機会が広がり、日本で働く人が増えつつあります。
バングラデシュは、人口が多い一方で国内の雇用機会が限られているため、世界有数の人材送り出し国として知られています。海外で働くことが一般的な環境で育ったバングラデシュ人は、日本が求める若い労働力として大きな可能性を持っています。今後も、日本で活躍するバングラデシュ人労働者はさらに増えていくでしょう。
参考:出入国在留管理庁「【在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表】」
日本とバングラデシュの関係性
バングラデシュが 1971年にパキスタンから独立した際、西側諸国の中で 最も早く国家承認をしたのが日本でした。それ以来、両国の友好関係は長年にわたって続いており、日本はバングラデシュ政府が進める避難民受け入れの取り組みを、国連機関やNGOと連携しながら支援しています。
このように、日本とバングラデシュは歴史的に良好な関係を築いてきました。2012年に日本貿易振興機構(JETRO)が ダッカ市内の大学生 を対象に実施した意識調査では、「重要な国」「好きな国」「訪れたい国」のいずれにも 日本がランクイン しており、バングラデシュが親日国であることがうかがえます。
日本の法務省は、各国と協力覚書(Memorandum of Cooperation, MOC) を締結し、特定技能制度の推進と協力体制の強化を進めています。バングラデシュとも2022年6月11日に、在バングラデシュ日本国大使館とバングラデシュ外務省が口上書を交換し、「MEWOE(バングラデシュ海外居住者福利厚生・海外雇用省)」との協力に合意しました。
MOCの概要は、以下のとおりです。
日本の法務省・外務省・厚生労働省・警察庁は、バングラデシュ海外居住者福利厚生・海外雇用省と連携し、以下の取り組みを通じて、特定技能制度の適正な運用を目指します。
- 悪質な仲介事業者の排除:仲介業者による違法な保証金徴収や違約金の設定、人権侵害などの問題を防ぐため、適正な送出し・受け入れに関する情報を共有する
- 制度の改善に向けた協議:特定技能制度の適切な運用を確保するため、必要に応じて問題点を協議し、改善策を講じる
参考:ジェトロ(日本貿易振興機構)「高い大学生の親日感情−ジェトロの意識調査で裏付け−(バングラデシュ)」
出入国在留管理庁「バングラデシュに関する情報」
特定技能のバングラデシュ人を採用するメリット
近年、日本では特定技能の在留資格を活用し、バングラデシュ人を採用する企業が増えています。その背景には、彼らの優れた人間性や労働意欲の高さがあります。バングラデシュ人の特性を理解することで、より良い人材採用につなげられるでしょう。
特定技能のバングラデシュ人を採用するメリットは、以下の4つです。
- 真面目で勤勉な国民性
- 親日的で日本文化への関心が高い
- 若くて体力がある人材が多い
- 給与水準の違いによる高いモチベーション
それぞれのメリットについて順番に詳しく解説します。
真面目で勤勉な国民性
バングラデシュ人は、仕事に対して誠実で努力家な性格の人が多いです。日本の労働文化に適応しやすく、特に単純作業や繰り返しの多い業務でも根気よく取り組む姿勢が評価されています。
主な採用メリットは、以下のとおりです。
- ルールを守る姿勢が強く、日本の職場環境に適応しやすい
- 一度仕事を覚えると、責任感を持って長く続ける傾向がある
以下に、真面目で勤勉なバングラデシュ人材が活躍しやすい業種の例をまとめました。
- 製造業(工場作業・食品加工)
- 介護業
- 外食業
親日的で日本文化への関心が高い
バングラデシュは日本との友好関係が長く、日本に対して好意を持つ人が多い国です。日本の技術や文化に興味を持つ人が多く、特定技能で働く際も積極的に日本語を学ぶ姿勢が見られます。
主な採用メリットは、以下のとおりです。
- 日本語の習得意欲が高く、コミュニケーションがとりやすい
- 文化や職場ルールを尊重し、協調性がある
以下に、親日的なバングラデシュ人材が活躍しやすい業種の例をまとめました。
- 建設業(チームでの作業が多い)
- 介護業(利用者とのコミュニケーションが重要)
若くて体力がある人材が多い
バングラデシュの人口は1 億6,000万人です。そのうち約30%が10歳から24歳で、毎年新たに約200万人の若い労働人口が増加しています。
特定技能で来日する人材も20代~30代が中心であり、体力を必要とする仕事に適しています。
主な採用メリットは、以下のとおりです。
- 体力があるため、重労働にも対応できる
- 若手人材を確保しやすく、長期雇用の可能性が高い
以下に、若くて体力があるバングラデシュ人材が活躍しやすい業種の例をまとめました。
- 農業(体力仕事が中心)
- 建設業(屋外作業が多い)
- 製造業(長時間のライン作業)
参考:セーブ・ザ・チルドレン「【バングラデシュ】 青少年の起業・就業支援事業を開始しました」
給与水準の違いによる高いモチベーション
バングラデシュの平均月収は日本と比較して低いです。例えば、バングラデシュの製造業の作業員の基本給月額(諸手当を除いた給与)平均値は114ドルとされています。
このように給与水準が違うため、日本での就労は経済的な向上を目指す大きなチャンスと捉えられています。そのため、日本の特定技能の仕事に対して意欲的に取り組む人が多いです。
主な採用メリットは、以下のとおりです。
- 高いモチベーションを維持しながら働く
- 離職率が低く、安定した雇用につながる
以下に、高いモチベーションのあるバングラデシュ人材が活躍しやすい業種の例をまとめました。
- 外食業(長時間勤務が可能な人材が多い)
- 介護業(給与水準の違いにより、意欲的に働く人が多い)
バングラデシュ人は、勤勉で親日的、若くて体力があり、高いモチベーションを持つ人材が多いのが特徴です。特定技能での採用を検討する際は、上記で紹介したメリットを生かし、適切な業種・職種で受け入れることが成功のカギとなるでしょう。
参考:ジェトロ(日本貿易振興機構)「豊富な労働力には優位性も、管理職不足など課題(バングラデシュ)」
特定技能のバングラデシュ人を採用する際の注意点
バングラデシュ人を特定技能で採用する際には、言語や文化の違いを理解し、円滑な職場環境を作ることが重要です。彼らの人間性や価値観を尊重し、適切な対応を行うことで、長期的に活躍してもらえるでしょう。
特定技能のバングラデシュ人を採用する際の注意点は、以下の4つです。
- 宗教・食文化の違いを理解する
- 家族やコミュニティを大切にする価値観を尊重する
- 日本の職場文化に慣れるまで時間がかかる
- 日本語の習得レベルに個人差がある
それぞれの注意点について順番に詳しく解説します。
宗教・食文化の違いを理解する
バングラデシュはイスラム教徒が約90%を占める国であり、宗教的な習慣が日常生活にも深く根付いています。特に、食事や休憩時間の対応について配慮が必要です。
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注意点 |
詳細 |
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食事 |
基本的に豚肉やアルコールは口にしないため、食堂のメニューや飲み会の席での配慮が必要。 |
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礼拝 |
1日数回の礼拝を行う習慣があり、特に金曜日の昼には重要な礼拝(ジュムア)がある。短時間の休憩を認めると良い。 |
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ラマダン(月の断食) |
断食期間中は日中の飲食を控えるため、体調管理や勤務スケジュールの調整を検討する。 |
こうした注意点への対応策を以下にまとめました。
- 社内で礼拝のための短時間の休憩を許可する
- 食事の場面では、食べられない食材を事前に確認する
- ラマダン期間中は、体調を考慮し、勤務時間の調整を検討する
参考:外務省 海外安全ホームページ「バングラデシュ|風俗、習慣、健康等」
家族やコミュニティを大切にする価値観を尊重する
バングラデシュ人には、家族を非常に大切にする文化があります。特に親の面倒を見ることが重要視されており、日本で働く目的の多くは母国の家族を支えるためです。そのため、以下の点に注意が必要です。
- 母国の家族に送金するために働く意欲が高いが、給料の支払い遅延などには非常に敏感
- 突然の家族の事情(病気・結婚・葬儀)で長期休暇を希望することがある
- 同じ国の仲間との絆が強いため、職場内でのコミュニケーションを重視する
こうした注意点を踏まえて、以下のような対策を講じると良いでしょう。
- 給与の支払いは確実に行い、遅延しないよう注意する
- 家族の事情での休暇申請があった場合、柔軟に対応できる環境を整える
- 同国出身の同僚がいる場合、チームワークを活かして職場内での協力体制を築く
日本の職場文化に慣れるまで時間がかかる
バングラデシュの労働文化は、日本の「報連相」や時間厳守の習慣とは異なります。特に最初のうちは以下の点に注意しましょう。
- 日本の時間厳守の意識に慣れていない場合がある(柔軟な働き方が一般的なため)
- 上司や同僚に対して、自分から意見を伝える習慣が少ない
- 「わかりました」と言っても、本当には理解していないことがある(文化的にNOと言いづらい)
こうした注意点を踏まえて、以下のような指導・対策を行うのが望ましいです。
- 時間厳守の重要性を具体的なルールとして伝える(例:「〇時までに出勤しないと欠勤扱い」など)
- 指示内容は何度も確認し、本人に口頭で説明させて理解度を確認する
- 「困ったら相談していい」という環境を作り、報告・連絡・相談を習慣化させる
日本語の習得レベルに個人差がある
特定技能の試験では日本語能力が求められますが、日常会話や業務上の細かい指示が伝わりにくいことがあります。以下の点に注意しましょう。
- 日本語が堪能な人もいれば、まだ慣れていない人もいるため、習得レベルに大きな個人差がある
- 専門用語や細かい指示が理解しづらい場合がある
- 「はい」と返事をしても、実際には内容を十分理解していないことがある
こうした注意点を踏まえて、以下のような対策を講じるのが望ましいです。
- 簡単な日本語で指示を出す、または英語の補助を活用する
- マニュアルを作成し、図や写真を使った分かりやすい説明を心がける
- 外国人社員向けの日本語研修を導入し、業務に必要な日本語力を強化する
特定技能のバングラデシュ人を採用する手順
本章では、バングラデシュ人を採用する際の具体的な流れについて説明します。
特定技能のバングラデシュ人を採用するには、在留資格認定証明書の取得、在留資格の変更許可、ビザ発行手続きなど、いくつかのステップが必要です。これは、バングラデシュ人に限らず、他国の人材を雇用する場合と同様の手続きとなります。
また、「バングラデシュから新たに日本へ呼び寄せるケース」 と 「すでに日本に在留しているバングラデシュ人を採用するケース」 では、一部の手続きが異なるため、それぞれの流れを把握しておくことが重要です。
バングラデシュから新たに呼び寄せるケース
バングラデシュ人材の採用では、送り出し機関を利用するかどうかで一部の手続きが異なります。
送り出し機関の利用は必須ではない【前提】
バングラデシュでの特定技能採用において、送り出し機関の利用は任意 です。企業は、現地の候補者と直接コンタクトを取り、雇用契約を結ぶことも可能です。
ただし、送り出し機関を利用する場合は、バングラデシュ海外居住者福利厚生・海外雇用省(MEWOE) の認定を受けた信頼できる機関を選ぶことが重要です。
①駐日バングラデシュ大使館での認証手続き
採用にあたり、要求書(必要書類)を駐日バングラデシュ大使館に提出し、認証を受ける必要 があります。手続きは直接持参・郵送・オンライン申請のいずれかで行え、申請から認証の発行までは約3営業日、費用は無料です。
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ケース |
詳細 |
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送り出し機関を利用しない場合 |
要求書とともに、採用予定のバングラデシュ人に関する詳細情報を提出する。 |
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送り出し機関を利用する場合 |
要求書の認証を受けた後、認証済み書類を送り出し機関に送付する。 送り出し機関は、バングラデシュ人材雇用研修局データベースから選ばれた特定技能候補者リストを添えて、MEWOEへ提出する。 MEWOEの審査を経て「承認レター」が発行される。 |
②雇用契約の締結
駐日バングラデシュ大使館での認証手続きが完了すると、バングラデシュ人材との雇用契約を正式に結ぶことが可能になります。
③在留資格認定証明書の申請
雇用契約を締結した後、地方出入国在留管理官署 に対して 特定技能に関する在留資格認定証明書の交付申請を行います。証明書が発行されたら、雇用契約を結んだバングラデシュ人に原本を郵送しましょう。
④査証(ビザ)の申請
バングラデシュ人労働者は、日本の在留資格認定証明書を日本国大使館に提出し、特定技能ビザの発給申請を行います。
⑤エミグレーション・クリアランス・カードの取得
特定技能ビザが発給された後、バングラデシュ人労働者(または送り出し機関の担当者)は、発行されたビザと関連書類をバングラデシュ人材雇用研修局に提出します。
審査を経て、エミグレーション・クリアランス・カードが発行され、これを取得することで正式に出国が可能になります。なお、一度バングラデシュへ 一時帰国した後に日本へ再入国する場合、再取得の必要はありません。
日本国内にいるバングラデシュ人を雇用するケース
すでに日本に滞在しているバングラデシュ人を採用する場合、手続きが比較的シンプル になります。
①雇用契約の締結
まず、採用予定のバングラデシュ人と 正式な雇用契約を結びます。
②在留資格の変更申請
雇用契約を締結した後、在留資格を「特定技能」に変更する手続きを行う必要があります。
対象者本人が 地方出入国在留管理官署 に申請し、許可を受けることで、特定技能外国人としての就労が可能になります。
参考:出入国在留管理庁「~特定技能外国人の受入機関の方々へ~バングラデシュ国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ」
よくある質問
最後に、特定技能のバングラデシュ人の採用を検討している企業担当者の方からよくある質問と回答をまとめました。
バングラデシュ人が日本で働くには?
バングラデシュ人が日本で働くには、「就労ビザ」と呼ばれる働くためのビザが必要になります。 就労ビザは、約19種類に分かれており、その中でもオフィスワーカーやホワイトカラーと呼ばれる知的ないし技術・開発的労働や事務系、企画・営業・販売系の職種の外国人を雇用するためのビザが「技術・人文知識・国際業務ビザ」になります。
特定技能外国人は転職できますか?
特定技能外国人の転職は可能ですが、ハードルが高いのが現状です。これには転職のために在留資格変更許可申請等の手続きが必要であったり、変更許可申請中は働くことができないため収入がなくなってしまったりなど、さまざまな理由があります。
バングラデシュ人の給料はいくらですか?
日本貿易振興機構(JETRO)の調査によると、2022年のバングラデシュの世帯あたりの平均月収は3万2,422タカとなっており、日本円にすると約41,000〜42,000円(1タカ=1.28円で計算)です。 年収にすると約50万円になります。
参考:ジェトロ(日本貿易振興機構)「世帯収支調査の結果を発表、貧困率減少も格差は拡大(バングラデシュ)」
特定技能を持つ外国人の平均給料はいくらですか?
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査の概況」によると、令和3年における特定技能を持つ外国人の平均賃金は19.8万円となっています。
この期間中、外国人労働者全体の平均賃金は23.26万円で、特定技能よりも高い年収であることが分かります。この要因として、特定技能を除く専門的・技術的分野の平均賃金が29.67万円と高く、外国人全体の平均賃金を引き上げていることが考えられます。
参考:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
終わりに
現在、日本で特定技能の在留資格を持つバングラデシュ人はまだ少数ですが、親日家が多く、人間関係を大切にする国民性 を持つ優秀な人材が多くいます。
バングラデシュでは 20代〜30代の若年層が労働の中心ですが、国内の雇用機会が限られているため、海外での就労を希望する若者が増えています。そのため、今後、日本における特定技能労働者としての活躍が期待されます。
バングラデシュ人を特定技能外国人として雇用するには、在留資格の取得手続き や 適切な受け入れ体制の整備 が不可欠です。制度を正しく理解し、必要な手続きを確実に進めることが、スムーズな雇用につながります。
もし手続きに関する不安や疑問がある場合は、行政書士などの専門家に相談し、正確な情報をもとに進めることが重要です。
しらき行政書士事務所では、在留資格の申請手続きに関する初回相談を無料で対応しております。
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