外国人労働者を雇用する際は、その人の持っている在留カードが有効なものなのか確認することが大切です。
この確認作業は、出入国在留管理庁が提供しているサービスを利用することで実施できます。
一方、在留カードの確認を怠り、その結果として違法に働いてしまった外国人を雇ってしまうと、雇用主は法律(不法就労助長罪)によって罰せられてしまいます。
予想外のトラブルに巻き込まれないためにも、外国人を雇う際には必ず在留カードの有効性をチェックし、そのうえで雇用するかどうかを決めましょう。
この記事では、在留カードの有効性を確認する方法について、外国人の雇用やビザの申請などに詳しい行政書士が分かりやすく解説します。
目次
在留カードの有効性を確認する方法
外国人の方が持っている在留カードが有効かどうかを確認したい場合、以下2つのサービスの活用をおすすめします。
- 在留カード等読取アプリケーション
- 出入国在留管理庁在留カード等番号失効情報照会
それぞれのサービスで確認できる内容を順番に解説します。
方法①「在留カード等読取アプリケーション」の活用
出入国在留管理庁は「在留カード等読取アプリケーション」を提供しています。
このアプリケーションを活用することで、外国人の持っている在留カードや特別永住者証明書が偽造されたものでないかチェックすることが可能です。
このアプリケーションは、雇用契約や諸取引などのシチュエーションにおいて、身分確認を行う必要がある場合に利用することが想定されています。
利用する際は、外国人本人の同意を得たうえで、在留カード等の提示を受けてください。
在留カード等読取アプリケーションを使用する際はアプリケーションをインストールする端末(例:WindowsPC、iPhoneなど)を用意する必要があります。
端末の種類によってはICカードリーダーの準備も求められますのでご注意ください。
アプリケーションのダウンロードや使用時のマニュアルなどについて、詳しくは出入国在留管理庁のWebサイトをご確認ください。
参考:出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリケーション サポートページ」
方法②「出入国在留管理庁在留カード等番号失効情報照会」の活用
「出入国在留管理庁在留カード等番号失効情報照会」も、出入国在留管理庁が提供しているサービスの一つです。
このサービスを活用すると、すでに失効している在留カードおよび特別永住者証明書の番号と有効期間の確認が行えます。
外国人の方から提示された在留カード等の券面に記載されている「在留カード等番号」および「在留カード等有効期間」を専用サイトに入力するだけで、簡単に問い合わせることが可能です。
在留カードの場合、表面上は有効期間が過ぎていても、在留期間の更新等で「特例期間」に該当する場合には最大で2か月有効期間が延長します。このサービスを活用すると、「特例期間を踏まえて、在留期間はいつまでなのか」を見極めることが可能です。
ただし、このサービスでは在留カードの有効性を確認することはできないため、併せて「在留カード等読取アプリケーション」も活用することをおすすめします。
外国人の雇用にあたって在留カードの有効性のほかにチェックすべき内容
前章で紹介した2つの方法を活用すれば、外国人の雇用にあたって在留カードの有効性を確認できます。ただし、外国人の方を適法に雇用するためには、在留カードの有効性だけでなく、以下のような内容もチェックする必要があります。
- 就労制限の有無
- 在留資格の種類
- 資格外活動許可の有無
それぞれの内容について順番に詳しく解説します。
就労制限の有無
在留カードの有効性を確認したら、続いて就労制限の有無をチェックします。「就労制限の有無」欄には以下のいずれかの記載があるため、その内容に応じて次のステップを確認してください。
- 「在留資格に基づく就労活動のみ可」→「在留資格の種類」をチェックする
- 「就労不可」→「資格外活動許可の有無」をチェックする
- 「指定書により指定された就労活動のみ可」→パスポートに添付されている指定書の内容をチェックする
- 「就労制限なし」→業務内容・時間に制限なく就労できるため問題なし
在留資格の種類
「就労制限の有無」欄に「在留資格に基づく就労活動のみ可」という旨の記載があるケースでは、在留資格の種類をチェックしたうえで、その外国人の方を雇用できるのかどうか判断します。
「在留資格に基づく活動のみ可」との記載があるケースでは、その外国人の方は記載されている在留資格で認められている業務以外には従事できません。
自社にて従事してほしい業務が、記載された在留資格で認められているケースでは、問題なく雇用できます。
一方、自社で従事してほしい業務が、記載された在留資格で認められていないケースでは、「採用を見送る」もしくは「在留資格を変更」してもらわなければなりません。
資格外活動許可の有無
「就労制限の有無」欄に「就労不可」という旨の記載があるケースでは、在留カードの裏面にある「資格外活動許可」の欄をチェックし、雇用できるかどうか判断します。
資格外活動許可を出入国在留管理局から受けているケースでは、資格外活動許可欄に記載された条件のもとでの雇用が認められます(原則28時間以内で、風俗営業等の従事を除く)。
これに対して、資格外活動許可欄が空欄というケースでは、原則どおり雇用は認められません。
その場合、採用を見送る、もしくは資格外活動許可を取得してもらったうえで採用する必要があります。
就労できない状態の外国人を雇用した場合に会社が被るデメリット
就労できない状態の外国人の方を雇用した場合、不法就労助長罪に問われます。
不法就労助長罪とは、外国人に不法就労をさせたり、不法就労をあっせんしたりした者を処罰するものです。出入国管理及び難民認定法第73条の2に規定されています。
就労できない外国人と知りながら雇用したり、知らなかったとしても身分確認などをしっかりと行わないで雇用していたちした場合に罰せられます。不法就労していた本人はもちろん、企業も処罰の対象です。
就労できない状態の外国人を雇用した場合に企業に科せられる罰則は以下のとおりです。
- 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(場合によってはその両方)
なお、不法就労を行った外国人に対する罰則は以下のとおりです。
- 不法入国の罪:3年以下の懲役もしくは禁錮もしくは300万円以下の罰金
- 無許可資格外活動の罪:1年以下の懲役もしくは禁錮または200万円以下の罰金
不法就労は、外国人本人だけでなく企業側も処罰される可能性があるため、くれぐれもご注意ください。
在留カードの有効性について雇用主側が行うべき対策
ここまでのポイントを踏まえて、在留カードの有効性について雇用主側が行うべき対策として4つの内容をピックアップし、順番に解説します。
偽造カードを発見したら通報する
もしも偽造された在留カードを見つけた場合、直ちに出入国在留管理庁に通報することが大切です。当然ながら偽造された在留カードは違法なものであり、それに対する通報は雇用主の法的義務です。
通報する際は、電子メールまたは最寄りの地方出入国在留管理官署に直接連絡しましょう。なお、偽造カードのコピーなど証拠を確保しておくことも望ましいです。
外国人に在留カードを紛失したと伝えられたら再申請を促す
外国人の方は、もしも在留カードをなくしてしまったら、その事実を発見した日から14日以内に新しいカードの再発行を申請しなければなりません。これは日本の入管法で定められているルールです。
在留カードは、自身が日本に正当に滞在していることを証明する重要な証明書なので、これを持っていないと不法滞在者と誤解されることもあります。そのため、在留カードの所持は必須です。
もし在留カードを紛失したら、まずは警察にその事実を報告し、受領した紛失届を入管局に提出して新しい在留カードの再発行を申請するよう伝えましょう。
外国人に在留カードの原本を携帯するよう促す
会社の担当者として、雇用を検討する(すでに雇用している方も含めて)外国人の方には常に在留カードの原本を持ち歩くよう指導しましょう。
在留カードがないと、警察に声をかけられた際に本人確認ができなくなり、トラブルに発展することがあります。実際、在留カードを持っていなかったために警察に事情を説明する事態になった企業も存在します。
外国人の方の中には、スマートフォンで在留カードの写真を撮り、それを保存している例もありますが、これでは本人確認ができません。写真のみでは、それが本人のものである証拠にならないためです。
トラブルを防ぐためにも、原本の在留カードを常に持ち歩くことが求められます。
外国人の採用時は在留カードのコピーをとる
外国籍の従業員を採用する際には、在留カードの原本を確認し、そのコピーを保管しておくことが重要です。
在留期限もしっかりと把握し、管理を怠らないようにしましょう。
加えて、在留カードだけでなくパスポートのコピーも保管しておくと、より一層の偽造対策になります。これらの情報を収集し、保管することで、安全な雇用環境の確保につながります。
終わりに
外国人の方が持っている在留カードの有効性をチェックしたいときは、以下のサービスを活用しましょう。
- 在留カード等読取アプリケーション
- 出入国在留管理庁在留カード等番号失効情報照会
また、外国人の方を適切に雇用するためには、在留カードの有効性だけでなく、以下の内容のチェックも必要です。
- 就労制限の有無
- 在留資格の種類
- 資格外活動許可の有無
就労できない状態の外国人の方を雇用した場合、不法就労助長罪に問われてしまい、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、場合によってはその両方が科されるためくれぐれもご注意ください。
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