外国人の方が日本に滞在して活動するためには、「在留資格」の取得が欠かせません。
在留資格は「在留カード」で確認でき、その有効期間内において滞在が認められます。有効期間を過ぎてしまうと不法滞在となり、厳しく罰せられる可能性があるため、在留期間を確実に守ることが大切です。
在留カードを所持している方は、「特例期間」について把握しておきましょう。
特例期間とは、在留期限前に申請(在留期間更新許可申請または在留資格変更許可申請)を行った際に、その申請結果が出るまでの2ヶ月間、法的に在留を続けることが認められる期間のことです。
本記事では、在留カードの特例期間について、把握しておくべき情報をまとめてお伝えします。特例期間中の就労や出国についても解説していますので、在留資格の更新や変更を控えている方はぜひお役立てください。
目次
在留カードの特例期間とは
在留資格とは、日本での滞在資格を示すもので、その種類と有効期間は在留カードで確認できます。有効期間を過ぎてしまえば不法滞在となり、結果として厳しい処罰が科されたり、国外退去を命じられたりすることがあります。
ここで注目すべきなのが、在留カードの「特例期間」です。
特例期間とは、在留期限が過ぎる前に在留期間更新許可申請等(在留期間更新許可申請または在留資格変更許可申請)を行った場合において、その申請結果が出るまでの最大2ヶ月間にわたって引き続き在留を続けることが許されるという制度をさします。
つまり、在留期間更新許可申請等を行っている間に、もとの在留資格の期間が切れてしまった場合でも、特例期間中であれば不法滞在にはなりません。
なお、在留期間更新許可申請等を行った場合、パスポートに申請日と申請番号が記載された「申請受付票」が綴じられ、在留カードの裏面に「在留資格更新(もしくは変更)許可申請中」のスタンプが押されます(オンライン申請を行った場合を除く)。
この記載については、申請に関する処分がされた場合もしくは取下げがあった場合に抹消手続を実施する決まりです。
抹消手続が実施されていない場合、在留期間の満了日が経過した場合も申請中の旨の記載は残るため、在留カードの有効性を正しくチェックするためには、「在留カード等番号失効情報照会」を利用しましょう。
特例期間の考え方
ここでは具体例として、在留期限が4月1日であり、その前日(3月31日)に在留期間更新許可申請等を行ったケースを想定し、いつまで特例期間が続くのか考えてみます。
在留期間更新許可申請等を行った後、出入国在留管理庁から「通知書」と呼ばれるハガキで申請結果が通知されますが、この書類はあくまでも審査が終了したことを示すものです。
厳密にいうと、実際に申請結果が出るのは「出入国在留管理庁に通知書を持参し、新しい在留カードを受け取ったタイミング」だとされています。
そのため、仮に5月15日に「通知書」のハガキを受け取ったとしても、新たな在留カードを受け取るまでは、最大で6月1日まで特例期間が継続します。なお、在留カードの受け取りを最大で6月1日まで遅らせることも可能です。
これと同様に、申請結果が出ない場合のリミットも「在留期間満了の日から2ヶ月が経過する日が終了するとき=6月1日」となります。
つまり、申請結果が出されたかどうかを問わず、「6月1日」が到来するまでは適法に在留することが認められるのです。
申請が許可された場合の取り扱われ方
特例期間中に在留期間更新許可申請等が許可された場合、その許可された資格で引き続き在留できるようになります。
この場合、「新たな在留カードを受け取った日」が起算日となり在留期限が決まります。
例えば、2023年4月1日が在留期限となっている外国人の方が、特例期間に突入し、2023年5月10日に1年間の在留期間が許可された在留カードを受け取った場合、新しい在留期限は2024年5月10日までとなります。
申請が不許可となった場合の取り扱われ方
特例期間中に在留期間更新許可申請等が不許可となった場合、出国準備のための在留資格「特定活動」が付与される決まりです。
この在留資格「特定活動」では、30日あるいは31日の在留期間が与えられます。ここで与えられた在留期間内に出国準備をして出国しなければなりません。
特例期間の適用を受けられる在留資格
特例期間の適用を受けられるのは、30日を超える(31日以上の)在留資格を所持している外国人の方に限られます。
なお、認められている在留期間が30日を超えていれば、短期滞在の在留資格でも特例期間の適用を受けられます。
特例期間中の注意点
本章では、特例期間中の注意しておくべき内容として、2つの項目を解説します。
申請から2ヶ月が過ぎた場合、その後の滞在は不法在留になる
在留期間更新許可申請等を実施してから2ヶ月が過ぎた場合、特例期間の超過を意味するため、「不法在留」にあたります。
不法在留は、3年以下の懲役もしくは禁錮もしくは300万円以下の罰金またはこれらが併科されます(出入国管理及び難民認定法 第70条)。
不法在留にあたると、上記の処罰に加えて退去強制の処分がなされます。
退去強制とは、その名のとおり、強制的に日本から退去させる処分のことで、一般的には「強制送還」や「国外退去処分」などとも言われています。退去強制の手続では収容が行われる可能性もあるため、心理的なストレスが大きいものと考えられます。
法的トラブルを避けるだけでなく、精神的な負担を負わないためにも、不法在留にあたる前に決められた期間内に出国準備をして出国しましょう。
銀行取引が制限される場合がある
日本の金融機関において口座開設後に在留期限を超過した場合には、銀行取引の一部に制限がかかることがあります。特例期間であっても銀行取引の制限を受けるケースがあるため注意しましょう。
在留期間の満了後に取引が制限されるタイミングは、それぞれの金融機関によって異なります。
例えば、SMBC信託銀行では、在留期限の満了後1ヶ月が経過しても新しい在留期限等の登録がない場合、インターネットバンキングやキャッシュカードの利用が制限される場合があるとしています(2023年7月現在)。
在留期間の更新・変更中であるならば、その旨を銀行に報告・相談することで銀行取引の制限が解除される可能性があります。
なお、在留期間内であっても満了日までの残存期間が短い(例:3ヶ月未満)場合、口座開設ができない可能性もあるため、その点にも注意しておきましょう。
在留カードの特例期間についてよくある質問
最後に、在留カードの特例期間についてよくある質問と回答をまとめました。
Q特例期間中の就労は認められる?特例期間中の就労については注意が必要で、就労を継続してよいケースとそうでないケースがあります。
例えば、すでに就労ビザ(例:在留資格「介護」「技能」「興行」など)で就労していて、なおかつ在留期間を更新し継続して同じ会社で就労する場合は、特例期間中も就労できます。
このような外国人従業員の通常の期間更新であれば、問題なく就労できるケースが多いです。
これに対して、「同じ会社で在留資格を変更して就労を継続するケース」や「別の会社でこれまでと業務内容・活動内容が変わらないものの在留資格の変更は求められるケース」などでは、在留資格変更許可申請の許可を受けた後でなければ就労が認められません。
例えば、在留資格「留学」の場合で、卒業・退学した後はもともと資格外活動は認められないことから、特例期間中も同様に資格外活動は認められず、アルバイトはできません。
Q「特定活動(出国準備期間)」の30日と31日の違いは?特例期間中に在留期間更新許可申請等が不許可となった場合、出国準備のための在留資格「特定活動」が付与されます。
この在留資格には、出入国在留管理庁が指定した日数だけ、日本から出国するにあたっての準備期間を与えられますが、一般的には在留期間30日または31日というケースが多いです。
一見すると30日または31日は特に変わりがないように思えますが、この1日には入国管理局の見解が示されていると考えられます。
簡単にいうと、31日には「今回は不許可になったものの、不許可の理由を改善できるのであれば再申請により許可される可能性がある」という見解が示されています。
これに対して、30日では「不許可の理由を改善できる余地は少なく、再申請をしたとしても許可になる可能性が低い」ことが示されているといわれているのです。
外国人本人のこれまでの在留状況も考慮されて具体的な在留期間の日数が決まりますが、1度目の不許可では31日の在留期間を付与されるケースが比較的多いです。
Q更新許可申請等をせずに有効期限切れとなった場合はどうなる?更新許可申請等をせずに在留カードの期限を過ぎてしまった場合は「在留カードの期限=在留期限」であるため、これを1日でも過ぎると不法在留にあたります。罰則は前述のとおりで、退去強制になる可能性も高いです。
特例期間中に一時的に日本を出国しなければならない場合はどうすればいい?
特例期間中、更新許可申請等を行った後で、出張などにより一時的に日本を出国しなければならないという方も少なからずいます。
この場合、特例期間の終了日までに新しい在留カードを受け取れるように帰国すれば特に問題はありません。
とはいえ、更新許可申請等を実施している間は追加資料を求められることもあるため、できるだけ早めに申請し、新しい在留カードを受け取ってから出国することをおすすめします。
おわりに
特例期間とは、在留期限が過ぎる前に在留期間更新許可申請等を行った場合において、その申請結果が出るまでの最大2ヶ月間にわたって引き続き在留を続けることが許されるという制度をさします。
具体的にいうと、「出入国在留管理庁に通知書を持参し、新しい在留カードを受け取ったタイミング」もしくは「在留期間満了の日から2ヶ月が経過する日が終了するまで」は特例期間が認められます。
特例期間中は、申請から2ヶ月が過ぎると不法在留になるほか、銀行取引が制限される場合もあるため注意しましょう。
しらき行政書士事務所では、在留資格の更新や変更の手続きに関するサポートを提供しております。まずは個々の状況を詳細にお伺いし、そのうえで在留資格の更新・変更の申請手続きを手厚くサポートいたします。
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