特定技能外国人を雇用する際、受入れ企業に代わって外国人の支援を行うのが登録支援機関です。
昨今、登録支援機関となっている事業者にとって密接に関係する話題の一つに新制度「育成就労」の創設検討が挙げられます。
2022年12月から始まり、16回にわたって行われた有識者会議で、現在の外国人技能実習制度や特定技能制度の改善を通じて、今後日本が外国人労働者をどのように受け入れるかについて詳しく話し合われました。これに伴い、登録支援機関の基準を厳格化すべきであると指摘する意見もあります。
また、2019年4月に特定技能制度が始まった際に、同時に登録支援機関の登録申請も開始されました。このため、2024年には多くの登録支援機関が登録更新の時期を迎えることになります。
そこで本記事では、外国人労働者のビザ申請に詳しい行政書士が、登録支援機関を取り巻く状況や更新手続きについて解説します。
目次
登録支援機関の役割
登録支援機関は、「特定技能1号」の在留資格を持つ外国人労働者が日本での活動をスムーズに行えるように支援するための機関です。雇用する企業からの委託を受け、外国人労働者の滞在期間中に必要な支援計画を立てて実行します。
外国人を雇用する企業や団体は「特定技能所属機関」と呼ばれ、外国人労働者の職場での適応、日常生活の支援、社会での活動支援など、幅広い面でのサポートを提供する義務があります。
特定技能を持つ外国人労働者のサポートには、書類作成など専門的な知識が求められる場合があります。
そのため、雇用主である特定技能所属機関が直接これらの支援を行うのが難しい場合があります。このような状況で、登録支援機関が企業からの委託を受けて、外国人労働者のための支援計画書の作成や実施などを代行するのです。
登録支援機関による支援は、大きな責任を伴う業務です。支援内容は、外国人労働者に対して義務付けられている「義務的支援」と、任意で提供される「任意的支援」に分けられます。
登録支援機関として活動するには、支援状況を四半期ごとに報告する必要があります。これは、支援が適切に行われているかを行政機関に報告するための義務です。
登録支援機関として活動できるのは、業界団体、社会保険労務士(社労士)、民間法人、行政書士など、さまざまな個人・団体です。特定技能外国人の支援計画書を作成できる能力を持っていれば、原則として登録し、支援業務を行うことが可能です。
技能実習制度廃止に伴う登録支援機関の基準の厳格化
冒頭にお伝えしたとおり、2022年12月から16回にわたって行われている有識者会議において、現在の外国人技能実習制度や特定技能制度の改善を通じて、今後日本が外国人労働者をどのように受け入れるかについて詳しく話し合われました。
これに伴い、新制度「育成就労」の創設が検討されています。
新制度「育成就労」の創設にあたっては、従来の技能実習制度における技能実習の適切な運用の監査を行う「監理団体」や、技能実習生受け入れの認可や監理団体・受け入れ企業の監督処分を行う「外国人技能実習機構」、そして特定技能制度の運用の支援を行う「登録支援機関」などは存続させ、管理・支援能力の向上を図っていく方針が取られています。
つまり、新制度が創設されても、登録支援機関の大きな枠組みは変わらないようです。
ただし、現在設けられている基準をより上げて、支援が確実に行える水準を定めようという動きもみられます。ヒアリング報告では小規模企業では支援ができるか疑問視する内容や、「職業紹介事業者でないと登録支援機関になれないようにすべき」といった過激な意見も出されています。
とはいえ、現状としては厳格化の方向性が明記された以外に、具体的にどのように水準を上げていくかまでは明記されておらず、不透明な面が多く残っています。
将来的に申請基準が厳格化される可能性はゼロではないことから、登録支援機関に登録するのであれば制度が変わる前に実施しておくことが望ましいでしょう。
登録支援機関の登録更新申請について
2019年4月に特定技能制度がスタートした際、登録支援機関のための登録申請も開始されました。その結果、2024年には多くの機関が登録の更新時期を迎えることになります。
当初、出入国在留管理庁の公式Webサイトでは、「登録の有効期間満了日の2カ月前までに更新申請をしてください」と案内されていました。
しかし、2023年8月に特定技能制度開始後で初の更新申請が行われることを踏まえ、更新申請の期間が有効期間満了日の「2カ月前まで」から「4カ月前まで」に変更されました。この変更点には注意が必要です。
あらためて現在定められている「登録更新申請ができる期間」は、「有効期間満了日の6カ月前の初日〜4カ月前の月の月末」までです。
本章では、登録支援機関の登録更新申請について特に知っておくべき大切な情報をお伝えします。
登録支援機関の有効期間
登録支援機関の登録の有効期間は、登録を受けてから5年間です。
支援業務を継続していく場合は更新申請を行い、登録の継続が認められるとまた5年間にわって登録支援機関として業務を行えるようになるしくみです。
なお、すでに支援業務を廃止している場合には、「支援業務の廃止に係る届出」(随時届出)を提出する必要があります。
登録更新申請せずに有効期間が経過してしまった場合どうなるか
更新申請を忘れて有効期間満了日を過ぎてしまった場合、登録が失効してしまいます。
新たな支援業務が行えなくなるだけでなく、現時点で特定技能所属機関から委託を受けている支援業務も行えなくなってしまいます。
このように大きな不利益を被ることにありますので、必ず有効期間満了の前に手続きを行ってください。
登録更新申請の審査基準
登録支援機関の更新手続きを行うと、登録拒否事由に該当する点がないかが審査されます。
登録拒否事由に該当してしまうと更新の許可が下りないため、何に該当した場合登録を拒否されるかを把握しておきましょう。
登録支援機関の更新手続きにおける、主な登録拒否事由は次のとおりです。
- 行為能力や役員の適格性に問題がある者
- 5年以内に登録支援機関の登録の取消し措置を受けた者
- 5年以内に技能実習法、その他入管関係法令又は労働関係法令等に関する不正行為を行った者
- 暴力団排除に関する規定に抵触する者
- 5年以内に健康保険法、雇用保険法により、処罰を受けた者
- 過去2年間に就労目的の中長期在留者の適正な受入れ実績がない者
- 過去2年間に報酬を得る目的で仕事として、日本に滞在する外国人から相談を受けた経験がない者
- 選任された支援責任者、支援担当者が、過去5年間に2年以上就労資格で中長期在留者の生活相談業務に従事した経験を有しない場合
- 特定技能外国人が十分に理解できる言語による情報提供体制を有していない者
- 支援状況に関する帳簿類を作成、保存していない者
- 支援の体制の中立性が担保されていない者
- 支援費用を特定技能外国人に負担させている者
- 支援委託契約の費用や内訳を明示していない者
- 1年以内に責めに帰すべき事由により特定技能外国人又は技能実習生の行方不明者を発生させている者
登録支援機関として最初に登録する際は、提供する支援体制が審査の対象になりますが、登録更新時にはその間の実績が重要視されます。
そのため、更新時期が来るまでに、しっかりと実績を積むこと、そして四半期ごと(3ヶ月ごと)に義務付けられた報告を忘れずに行うことが大切です。
更新時の審査では、特定技能外国人から不当に支援費用を徴収していないか、また、支援に関わる文書の作成や保管が適切に行われているかどうかが特に厳しくチェックされます。これらのポイントを押さえ、適切な運営を心がけましょう。
登録更新申請の方法
更新申請の際に必要な書類や手続きの方法は、新規登録申請時と同じです。時間が経って忘れてしまっているかもしれませんので、もう一度しっかりと確認しておくことが重要です。
更新申請は、申請者の本店または主たる事務所の所在地を管轄する地方出入国在留管理局又は同支局で手続きを行います。
申請書類は窓口に持参もしくは郵送での提出が可能です(オンラインでの申請は不可能)。
登録更新申請に必要な書類
登録更新申請に必要な書類は以下のとおりです。申請者が法人の場合と個人事業主の場合で添付する書類が異なるものもあるためご注意ください。
様式は、出入国在留管理庁の公式Webサイトからダウンロードして使用できます。
【法人・個人事業主で共通に必要な書類】
- 登録支援期間の登録(更新)申請に係る提出書類一覧
- 手数料納付書(省令様式 別記第83号の2様式)
- 登録支援機関登録の更新申請書(省令様式 別記第29号の15様式)
- 登録支援機関概要書(参考様式第2-2号)
- 登録支援機関誓約書(参考様式第2-1号)
- 支援責任者の就任承諾書及び誓約書(参考様式第2-3号)
- 支援責任者の履歴書(参考様式第2-4号)
- 支援担当者の就任承諾書及び誓約書(参考様式第2-5号)
- 支援担当者の履歴書(参考様式第2-6号)
- 支援委託手数料に係る説明書(予定費用)(参考様式第2-8号)
- 法施行規則第19条の21第3号ニに該当することの説明書(あてはまるケースのみ)
- 法施行規則第19条の21第3号ニに該当することの説明書に係る立証資料(あてはまるケースのみ)
- 返信用封筒(440円分の切手を貼付)
【申請者が法人の場合に必要な書類】
- 登記事項証明書
- 定款または寄附行為の写し
- 役員の住民票の写し(マイナンバーの記載なし、本籍地の記載あり)
- 登録支援機関の役員に関する誓約書(参考様式第2-7号)(住民票の写しての提出を省略する役員がいる場合)
【申請者が個人事業主の場合に必要な書類】
- 住民票の写し(マイナンバーの記載なし、本籍地の記載あり)
- 主たる事務所の住所に係る立証資料(申請書に記入した住所が住民票の写しと異なる場合)
終わりに
本記事では、登録支援機関を取り巻く状況や更新手続きについて解説しました。
「育成就労」制度が始まるにあたり、申請の基準が厳しくなる可能性があるため、登録支援機関になろうと考えている場合は、制度が変わる前に登録手続きを済ませておくことが推奨されます。
特定技能制度は2019年4月にスタートし、それと同時に登録支援機関の申請も始まりました。登録は5年間有効で、そのため2024年5月には一部の機関の登録期間が終了します。
更新申請は、有効期間の満了日から6ヶ月前の初日から4ヶ月前の月末までに行う必要があり、この期間が以前より前倒しされました。
登録支援機関としてサポート業務を続けたい場合は、入国管理局から更新通知のハガキが届いたら、すぐに更新の手続きに動き出すと良いでしょう。
登録支援機関の登録および更新の申請について分からないことや不安な点がありましたら、お気軽に「しらき行政書士事務所」までお問い合わせください。