日本における国際結婚は、近年ますます増加しており、多様な文化背景を持つ夫婦が増えています。国際結婚は、異なる国籍を持つ二人が結婚することであり、文化的な違いや法律的な手続きが絡むため、理解と準備が重要です。
また、少子高齢化に伴う労働力不足が懸念される中、移民についての様々な議論が進み、政策などに発展することも少なくありません。そうした中で、国際結婚などの動向も政策の変化によって大きく変わってきました。
そこで本記事では、日本における国際結婚の制度とその歴史的な変遷について詳しく解説します。国際結婚を検討しているカップルや、興味を持つ方々にとって、この記事が役に立てば幸いです。
目次
日本における国際結婚の制度にみられる特徴
「国際結婚をすると国籍が変わる」と思っている人は少なくないと思いますが、日本で結婚する限りにおいてはそんなことはありません。
国際結婚をした場合、基本的には、日本人は日本国籍、外国人は出身国の国籍を保持した状態になります。しかし、国によっては例外があり、例えばフランスなどでは、結婚後一定期間以内にその国の国籍を望めば、国籍を変更することができます。その場合、原則として、日本国籍からは離脱します。
また、 イラン・アフガニスタン・サウジアラビア・エチオピアなどの一部の国では、女性は結婚と同時にその国の国籍を付与されるため、結婚後2年以内に国籍選択届を提出する必要があります。万が一この届出を忘れた場合は、日本国籍を失効する可能性もあるので、事前に書類などを確認しておく方が安心でしょう。
ちなみに外国人と国際結婚をして相手方が日本国籍を望む場合は、帰化申請という手続きを通常通りに行う必要があります。
国際結婚において、結婚相手が日本に帰化しない限りは、日本国籍や戸籍は発行されません。では、国際結婚において日本人の戸籍はどうなるのか?法務省の回答を参考に調べてみました。
国際結婚をした場合、まず当事者である日本人の筆頭戸籍が作られます(もともと筆頭戸籍を持っている場合は戸籍は変わりません)。そして、その戸籍に、外国人(氏名・生年月日・国籍)と婚姻した事実が記載されることで、戸籍の手続きは完了します。
日本人同士の結婚では夫婦同姓が義務付けられていますが、国際結婚の場合、夫婦共々元々の姓名を名乗り続けることができることもあります。
一方で、日本人が相手方の苗字に変更したいという場合は、婚姻の日から6か月以内に市区町村の戸籍届出窓口に届け出るだけで相手の姓に変更することができます。
国際結婚の制度の変遷
大政官布告による内外人婚姻条規の発令という、日本で最初に国際結婚に関する国籍法が制定されたのは1873年(明治6年)のことでした。日本人男性の妻となる外国人女性は日本国籍を取得し、外国人男性の妻となる日本人女性は日本国籍を失うというものでした。
1899年(明治32年)には明治憲法による国籍法が公布されましたが、婚姻については夫の国籍に従うという父系優先血統主義の内外人婚姻条規発令の原則は変わりませんでした。その後、1916年(大正5年)改正で、外国人男性の妻となる日本人女性がその外国籍を得られぬ場合のみ日本国籍は失わないということになりました。
現在の法律では、国際結婚をした場合、基本的には、日本人は日本国籍、外国人は出身国の国籍を保持した状態になります。
日本における国際結婚の動向
ここでは、日本における国際結婚の動向について、国際結婚の割合と国際結婚の相手方の国籍という2つの観点から解説していきます。
国際結婚の割合
日本は四方を海に囲まれた島国であるため、ヨーロッパやアメリカのように陸続きで他国と接している地域と比べると、外国人と出会う機会が少ないです。地図で見ると、日本列島の西側には中国や韓国といった大陸が比較的近くにありますが、東側には広大な太平洋が広がっており、海を越えての交流が限られています。
このような地理的な特徴も影響しているのか、過去20年間の国際結婚の割合はあまり高くありません。最近5年間では国際結婚の割合は3%〜5%程度で推移しています。10年前に一時的な増加が見られましたが、再び20年前の割合に戻り、近年ではほぼ3%台に落ち着いていると言えます。
国際結婚の相手方の国籍
下表に、近年の国際結婚における相手方の国籍と、その件数(割合)をまとめました。
夫妻の国籍 | 2022年 | 2021年 | 2020年 | 2019年 |
---|---|---|---|---|
総数 | 504,930(100%) | 501,138(100%) | 525,507(100%) | 599,007(100%) |
夫妻とも日本人 | 487,245(96.5%) | 484,642(96.7%) | 510,055(97.1%) | 577,088(96.3%) |
夫妻の一方が外国人 | 17,685(3.5%) | 16,496(3.3%) | 15,452(2.9%) | 21,919(3.7%) |
夫妻の国籍 | 2022年 | 2021年 | 2020年 | 2019年 |
---|---|---|---|---|
夫日本人、妻外国人 | 10,907(100%) | 9,814(100%) | 9,229(100%) | 14,911(100%) |
夫日本人、妻韓国・朝鮮人 | 1,224(11.2%) | 1,284(13.1%) | 1,300(14.1%) | 1,678(11.3%) |
夫日本人、妻中国人 | 2,937(26.9%) | 3,072(31.3%) | 2,393(25.9%) | 4,723(31.7%) |
夫日本人、妻フィリピン人 | 2,355(21.6%) | 1,780(18.1%) | 1,955(21.2%) | 3,666(24.6%) |
夫日本人、妻タイ人 | 737(6.8%) | 639(6.5%) | 637(6.9%) | 986(6.6%) |
夫日本人、妻米国人 | 236(2.2%) | 225(2.3%) | 240(2.6%) | 286(1.9%) |
夫日本人、妻英国人 | 52(0.5%) | 53(0.5%) | 55(0.6%) | 52(0.3%) |
夫日本人、妻ブラジル人 | 255(2.3%) | 244(2.5%) | 247(2.7%) | 318(2.1%) |
夫日本人、妻ペルー人 | 93(0.9%) | 89(0.9%) | 92(1.0%) | 103(0.7%) |
夫日本人、妻その他の国 | 3,018(27.7%) | 2,428(24.7%) | 2,310(25.0%) | 3,099(20.8%) |
夫妻の国籍 | 2022年 | 2021年 | 2020年 | 2019年 |
---|---|---|---|---|
妻日本人、夫外国人 | 6,778(100%) | 6,682(100%) | 6,223(100%) | 7,008(100%) |
妻日本人、夫韓国・朝鮮人 | 1,551(22.9%) | 1,561(23.4%) | 1,575(25.3%) | 1,764(25.2%) |
妻日本人、夫中国人 | 934(13.8%) | 903(13.5%) | 629(10.1%) | 917(13.1%) |
妻日本人、夫フィリピン人 | 234(3.5%) | 228(3.4%) | 188(3.0%) | 265(3.8%) |
妻日本人、夫タイ人 | 34(0.5%) | 34(0.5%) | 19(0.3%) | 37(0.5%) |
妻日本人、夫米国人 | 1,139(16.8%) | 1,049(15.7%) | 1,025(16.5%) | 989(14.1%) |
妻日本人、夫英国人 | 208(3.1%) | 203(3.0%) | 204(3.3%) | 233(3.3%) |
妻日本人、夫ブラジル人 | 280(4.1%) | 212(3.2%) | 255(4.1%) | 332(4.7%) |
妻日本人、夫ペルー人 | 105(1.5%) | 94(1.4%) | 87(1.4%) | 114(1.6%) |
妻日本人、夫その他の国 | 2,293(33.8%) | 2,398(35.9%) | 2,241(36.0%) | 2,357(33.6%) |
上記の表を見ると分かるとおり、夫が日本人・妻が外国人の場合、妻の国籍は「中国」「フィリピン」「韓国・朝鮮」「タイ」「ブラジル」「米国」の順番で多いです。
これに対して、妻が日本人・夫が外国人の場合、夫の国籍は「韓国・朝鮮」「米国」「中国」「ブラジル」「フィリピン」「英国」の順番で多くなっています。
有名人の国際結婚に関するニュース
芸能界には「国際結婚」をしている芸能人が少なくありません。中には、大々的に結婚報道がされていなかったり、結婚してから年月が経っていたりなどで、国際結婚をしたことがあまり知られていない有名人もいるようです。
gooランキングが国際結婚をしていると知って驚いた有名人は誰なのかについてアンケート調査(2022年9月)を行ったところ、以下のようなランキング結果が出ています(敬称略)。
- 広瀬香美
- 水谷豊(離婚済)
- 石井竜也
- 亀田和毅
- 蝶野正洋
- 浜崎あゆみ(離婚済)
- 宇多田ヒカル(離婚済)
- 佐藤江梨子
(同率)ディーン・フジオカ - 小沢健二
国際結婚における結婚詐欺や偽装結婚の事例
国際結婚した日本人女性が外国での生活に馴染めなかったり、文化や人種から違う外国人男性との結婚生活におけるストレスや不満から精神病を患うことが多かったりという報告もあり、そういった事も国際結婚の離婚率が高い原因になっている状況です。
また、日本における婚姻件数が減少している一方、国際結婚の数は増加しており、そのなかでも偽装結婚被害がまだ見受けられるのが日本社会の現状です。
偽装結婚とは夫婦として生活するつもりのない結婚(何かしらの目的はあるが実態のない結婚)をすることですが、明確な定義は今のところありません。
偽装結婚の目的は様々ですが、主に「金銭」「ビザ問題の解決」という2つのパターンがあります。
金銭的な目的
金銭的な目的の場合、圧倒的に日本人男性と外国人女性という組み合わせが多く、日本人側は年配のケースが多いです。最近では、お金持ちのおじいさんが、寂しさを紛らわせたり、身の回りの世話をお願いしたりする目的で、外国人女性と結婚することもあるといいます。
しかし外国人女性側は最初にとりあえず結婚をして、家族へ仕送りのお金を要求し、ある程度のお金がたまったら離婚をし、故郷へ帰るといったケースも多く存在するのです。
また、日本で収入を得て母国へ仕送りをする人も多くいます。長い間日本に住んでいる日本人にとって、日本の給料が高いという印象はないかもしれませんが、それでも経済的に発展途上の国と比べるとやはり高いのです。
ビザ目的
ビザ問題の解決の場合、「ビザ婚」とも呼ばれており、非常に悪質で被害者の数が一番多いパターンです。具体的には、以下のような目的で偽装結婚を行います。
- 日本人と結婚をして配偶者ビザを取得したい
- 結婚後3年したら永住ビザを取りたい
配偶者ビザ
日本における全部で27種類ある在留資格(ビザ)のひとつに、結婚(配偶者)ビザと呼ばれる「日本人の配偶者等」という在留資格があります。
「日本人の配偶者等」という在留資格(ビザ)は非常に万能な資格で、日本人と結婚すればこのビザを取得することができ、さらに働き方にも制限がありません。
要するに日本に合法に在留できない外国人にとっては、日本人と結婚さえしてしまえば日本で生活でき、さらに働き方も制限されないというメリットがあります。
永住ビザ
上記で説明した配偶者ビザはメリットもある反面、以下のようなデメリットもあります。
- 日本人と離婚した場合に失効する
- 最長でも5年ごとに更新しなければいけない
このように配偶者ビザを失うと基本的に帰国することになり外国人にとって好ましい状況とはいえません。
そこで、長期的に日本で稼ぐとなると永住ビザが有効になってきます。永住ビザを取得するためには日本に継続して10年以上居住している必要がありますが、日本人と結婚をすれば3年での許可取得が視野に入ります。
日本における国際結婚の手続き
ここからは、日本における国際結婚の手続きを簡単にご紹介します。
必要書類の提出
日本において日本人と外国人が結婚するための手続きとしては、以下の書類をそろえて市区町村役場の戸籍課の窓口へ提出することになります。
- 婚姻届:窓口に備え付けられています
- 戸籍謄本:日本人配偶者が本籍地以外で届け出る場合に必要です
- 結婚要件具備証明書
- 外国人配偶者の国籍を証明する書類
結婚要件具備証明書は、外国人配偶者が独身であること、本国法の結婚要件(年齢など)を満たしていることを証明するものです。在日大使館などで発行してもらいます。提出の際、日本語の訳文も必要です。国によっては発行していないところもありますが、その場合、証明書に代わる書類として宣誓書(本人が本国の領事の前で宣誓することにより、領事が発行する)、本国の公証人証書、戸籍(戸籍制度のある国)などを提出します。
また、外国人配偶者の国籍を証明する書類は、パスポート、場合によっては外国人登録証明書などが該当します、正式のパスポートを所持していない場合、大使館などで再発行してもらうか(紛失など)、これに代わる証明書(トラベル・アフィダビットあるいはトラベル・ドキュメントと呼ばれる)などを発行してもらいます(提出時に日本語訳文も必要)。
届出の受理
役所の窓口で書類が受理されてから戸籍に記載されるまで1週間から1ヶ月ほどかかります。受理時点で「婚姻届受理証明書」を発行してもらいましょう。外国人配偶者の大使館などに届け出る必要があるからです。
もし結婚の事実に疑わしい点があり、役所から法務局の方へ「受理伺い」がなされますと、調査に数ヶ月かかる場合もあります。なお外国人配偶者がオーバーステイだからといって結婚が認められないということはありません。
終わりに
日本における国際結婚は、時代とともに制度や手続きが進化し、多様な文化背景を持つカップルが増えてきました。国際結婚においては、異なる国の法律や文化を理解し、適切な手続きを踏むことが重要です。また、結婚後の生活においても、文化的な違いを尊重し合い、コミュニケーションを大切にすることが求められます。
国際結婚は、文化の違いを超えた素晴らしい経験とともに、特有の課題を伴います。適切な準備とサポートを活用し、お互いの文化を尊重しながら、幸せな結婚生活を築いてください。
なお、外国人と国際結婚をして外国人の相手方が日本国籍を望む場合は、帰化申請という手続きを通常通りに行う必要があります
帰化申請においては、注意しなければならないポイントは多くあります。帰化申請について、不明点や心配な点があれば、専門家に相談することをおすすめします。
しらき行政書士事務所では、日本への帰化を目指す方に対してサポートを提供しております。まずは個々の状況を詳細にお伺いし、そのうえで帰化申請の手続きを手厚くサポートいたします。
帰化申請や在留資格の取得手続きをはじめ幅広くサポートを承っておりますので、「手続きが複雑で良くわからないので、サポートしてほしい」といった場合には、どうぞお気軽にしらき行政書士事務所までご連絡ください。