外国人が日本国籍を取得する主要な方法の一つとして、帰化があります。「芸能人やスポーツ選手などが帰化した」というニュースを耳にすることもあるでしょう。帰化すると、日本の法律上、日本国民としての権利や義務を有するようになります。
日本で長期にわたり生活や活動を行っている外国人にとって、帰化は魅力的な制度だといえますが、帰化と「永住ビザ」を混同する人も少なくありません。永住ビザと帰化の主な違いは、国籍の有無にあります。
そこで本記事では、帰化(日本国籍の取得)について、永住ビザの違いや基本的な要件、帰化のメリットやデメリット、申請手続きの流れや必要書類など幅広く解説します。
目次
帰化とは?
帰化とは、外国人が日本の国籍を取得して日本人になることです。帰化した外国人は日本人と同等の権利を取得することができます。いったん帰化すると、再び母国の国籍を取得するのは簡単でないと予想されるため、一生涯、日本に住むという意思がある外国人の方は帰化されることをおすすめします。
日本の国籍法では、帰化を「普通帰化」「簡易帰化」「大帰化」という3つのタイプに分類し、それぞれ異なる条件を設けています。この分類によって、帰化を希望する人が満たすべき要件が異なります。
帰化の申請を行う際には、国籍法に基づく手続きが必要となります。この申請プロセスでは、戸籍法、入国管理法、会社法、民法、税法、年金制度、刑法など、多岐にわたる法律が関わってきます。つまり、帰化申請は単に国籍を変更する手続きではなく、さまざまな法的側面を考慮する必要があるということです。
これらの法律に準拠し、適切な手続きを経ることで、帰化という重要なステップを踏むことが可能になります。
参考:法務省「国籍Q&A」
永住ビザとの違い
帰化とは、外国人が法的手続きを経て日本の国籍を取得することです。帰化することで、その人は日本人としての権利と義務を有するようになります。これには選挙権や被選挙権が含まれ、日本のパスポートを取得することも可能です。
一方で、永住ビザは、外国人が日本に無期限に滞在するための資格を意味します。このビザを取得することで、再入国許可などの手続きが容易になり、日本での長期的な居住や就労が可能になります。しかし、永住ビザを持っていても日本国籍を持つわけではないため、選挙権など一部の国民としての権利は有していません。
帰化と永住ビザの最大の違いは、国籍の有無にあります。帰化によって日本国籍を取得すると、完全な国民としての地位を得られますが、永住ビザでは国籍はそのままで、日本での長期滞在が認められるに留まります。
永住の場合、在留カードを7年に1度更新し続ける必要もある点に注意しましょう。また、永住の申請は、10年間の居住要件を満たす必要がある一方で、帰化申請であれば5年間の居住で足ります。
帰化申請の基本的な要件
帰化申請を行ううえで求められる基本的な要件は、以下のとおりです。これらの要件を満たさない場合、帰化申請が許可されません。
要件 | 補足 |
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住所要件 |
引き続き5年以上日本に住んでいることが必要です。ただし、以下に該当する方は期間が緩和されます。
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能力要件 | 18歳以上で、本国の法制でも成人に達していることが必要です。 |
素行要件 | 素行が善良であることが必要です。素行が善良であるかどうかは、犯罪歴の有無・態様、納税状況、社会への迷惑の有無等を総合的に考慮し、社会通念に照らして判断されます。 |
生計要件 | 収入に困窮することなく、日本で生活していけることが必要です。生計を一にする親族単位で判断されますので、本人が無収入であっても、配偶者その他の親族の資産・技能で生活できれば問題はありません。 |
重国籍防止要件 | 無国籍、もしくは帰化によって本国の国籍を喪失することが必要です。本人の意思によって本国の国籍を喪失できない場合は、この要件を満たしていない場合でも、帰化が許可される可能性はあります。 |
憲法遵守要件 | 日本政府を暴力で破壊することを企て、または主張する者、あるいはそうした団体の結成または加入している外国人には帰化が許可されません。 |
日本語能力要件 | 日常生活に支障のない程度の日本語能力(会話・読み書き)を有している必要があります。なお、帰化申請の手続きにおいて必要な書類等の案内は日本語で行います。 |
なお、上記の要件を満たしていても、必ず帰化が許可されるわけではありません。帰化申請に対する許可は法務大臣の裁量によるものであり、上記の要件はあくまでも日本に帰化するために必要最低限の基準であることを理解しておきましょう。
帰化のメリット
ここでは、外国人の帰化にあたって期待される主なメリットをまとめました。
- 日本の名前を持つことができる
- 日本戸籍を持つことができ、夫婦で同じ戸籍に入ることができる
- 在留手続きが不要になる
- 日本のパスポートを持つことができ海外渡航手続が楽になる(海外で日本人と同様に、日本政府の庇護も受けられる)
- 社会保障面(年金・保険・教育・福祉など)で日本人と同じ権利を持てる
- 参政権(選挙権・被選挙権)を得る、また、公務員の役職に就くことが可能になる
- 住宅・自動車ローン、仕事などの融資を受けられる(銀行との取引きがスムーズになる)
このように、日本人と同様の権利が得られるのが帰化の大きな特徴です。なお、戸籍に帰化したという履歴は残るものの、本籍を移せばその履歴をなくすことも可能です。
帰化にはデメリットもある?
注意すべきことに、帰化にはデメリットもあります。以下に、問題となりやすいデメリットをまとめました。
- 日本は二重国籍を認めていないので、元の国籍を失うことになる
- 日本人として扱われるようになるため、元の国籍によっては母国へ帰省する際にビザが必要となることがある
- 相続の際に適用される法律に注意する必要がある(日本の法律と母国の法律との違い)
一旦帰化すると、元の国籍に戻ることが難しい国もあります。永住と帰化のどちらを選ぶのかは、慎重に判断することが大切です。
そのほか、手続きが煩雑である点も注意しておきましょう。帰化の手続きは、住んでいる地域を管轄する法務局に出向いて行う必要があります。さまざまな書類を母国と日本の役所からそれぞれ取り寄せる必要があるので、母国での手続きや書類の郵送方法もチェックしておきましょう。
また、正式に届出として提出するまでに複数回の事前相談や確認を行うため、複数回法務局に出向く必要があります。帰化が完了するまでに早いケースでも1年以上の期間かかるため、ご自身の仕事が忙しい時期は避けるなど、タイミングを見ながら手続きを進めることが大切です。
帰化申請の流れ
本章では、帰化申請の大まかな流れを紹介します。ここで紹介するのは、あくまでも基本的な流れであり、個々のケースによって手続きの流れは変化することを把握しておきましょう。
手順 | 補足 |
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法務局または地方法務局への相談 | 本人の居住地を管轄する法務局もしくは地方法務局を訪問し必要な書類を確認します(要予約)。 相談時、日本に来日した経緯、在留資格、家族構成、犯罪歴の有無などが確認されます。 |
帰化申請に必要な書類の準備 | 法務局もしくは地方法務局での相談で確認した必要書類を収集します。 自力で集めるのが困難な場合、行政書士などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。 |
帰化申請書類の作成 | 申請先の法務局で書類を入手し必要事項を記入します。 法務局で渡される申請書はすべて手書き用となります。 |
帰化申請書類の点検と受理 | 再び法務局に行き、書類点検をしてもらいます(こちらも必ず予約が必要)。 収集した書類と記載した申請書を法務局の担当官にチェックしてもらいます。 この点検で内容を確認後に必要書類が追加となることがあります。 |
法務局での面接 | 受理から2~3ヵ月程度経過すると、法務局から連絡が来て調査や提出した書類における疑問点や過去のこと、現在の状況などを質問されます。 なお、日本に住む配偶者等の家族がいる場合は、一緒に面接されます(帰化申請人とその配偶者の面接は別々の部屋で実施されます)。 |
近隣調査・家庭訪問・職場訪問・職場調査 | その後、法務局の職員から申請者の勤務先や学校に在籍確認の電話が入ることがあります。 実際に自宅等に訪問してくるケースもありますが、訪問される場合は事前に日付を指定されます。 |
法務省への書類送付 | 法務局の担当者から条件を満たしていると判断されれば、書類が法務局から法務省に送られます。 |
許可または不許可の決定 | 最終的には法務大臣によって許可不許可の決定がなされます。 許可の場合は、官報に名前が掲載されて、法務局の担当者から電話が来ます。 不許可の場合は、不許可の通知が届きます。 |
法務局への出頭 | 電話で指定された日時に法務局に出頭して、手続きが終了します。 このとき、法務局から帰化に係る書類を受け取りますので、市区町村役場に持参すると戸籍が編製されます。 在留カードは、住所地を管轄する入国管理局に返却しなければなりません。 |
帰化申請の必要書類
帰化許可申請に必要となる主な書類は、以下のとおりです。
- 帰化許可申請書(申請者の写真が必要となります。)
- 親族の概要を記載した書類
- 帰化の動機書
- 履歴書
- 生計の概要を記載した書類
- 事業の概要を記載した書類
- 住民票の写し
- 国籍を証明する書類
- 親族関係を証明する書類
- 納税を証明する書類
- 収入を証明する書類
国籍を証する書面および身分関係を証する書面については、原則として本国官憲(印鑑証明書を必要とする方の国籍のある国の大使館や領事館や本土の公証人)が発給したものを提出する必要があります。
なお、申請者の国籍・身分関係・職業など個々のケースによって必要な書類が異なりますので、申請にあたっては法務局や地方法務局にご相談ください。
参考:法務局「帰化許可申請」
帰化の申請先
外国人の在留資格に関わる手続きであると勘違いしている方も多いですが、帰化申請の管轄は出入国在留管理庁(元:入国管理局)ではありません。
帰化の申請先は、法務局および地方法務局です。そして法務大臣が「許可」もしくは「不許可」の最終決定を下すことになっています。
終わりに
帰化の申請・手続きを行い日本国籍を取得することは、日本で生活していくうえでのメリットを多くもたらします。
一方で、一度帰化してしまうと元の国籍を再取得することは難しいので、慎重に検討したうえで、不安な点は法務局やその他専門機関に確認するのがベストです。また、手続きや申請には数ヶ月単位の長い時間がかかる点にも注意しましょう。
帰化申請においては、注意しなければならないポイントは多くあります。帰化申請について、不明点や心配な点があれば、専門家に相談することをおすすめします。
しらき行政書士事務所では、日本への帰化を目指す方に対してサポートを提供しております。まずは個々の状況を詳細にお伺いし、そのうえで帰化申請の手続きを手厚くサポートいたします。
帰化申請や在留資格の取得手続きをはじめ幅広くサポートを承っておりますので、「手続きが複雑で良くわからないので、サポートしてほしい」といった場合には、どうぞお気軽にしらき行政書士事務所までご連絡ください。